とらドラ6!

とらドラ! (6) (電撃文庫 た 20-9)

とらドラ! (6) (電撃文庫 た 20-9)

「馬鹿のリレー」


モデルの川嶋亜美が教室で
おっきいのを受け入れざるを得なかった話をしていた時
北村祐作が王大人によって「死亡確認!」されている
高須竜児が学校の廊下で
その吊り上がった直死の魔眼で生徒達を威嚇しているその時
逢坂大河はリップクリームを竜児の鼻に容赦なく突っ込んでいる


この地球では
いつもどこかで「とらドラ!」がはじまっている


ぼくらは馬鹿をリレーするのだ
脳内から脳内へと
そうしていわば交替で「とらドラ!」で悶絶する                 
読了前のひととき耳をすますと
どこか遠くでキーを叩く音が鳴っている
それはあなたの読了を察知した独身が
次の締め切りを思い出した証拠なのだ

とにかく読了後に興奮した奴はいいから輸血しに行け。そして5リットルくらい抜いてもらえ
なーに、この6巻を再読すれば、血の10や20リットルくらいすぐに製造されるさ! ただ、片っ端から鼻血で出ちゃうけどな!

正座している。

ああ、正座しているともさ!
俺はこの感想を書くにあたって正座を自らに課そうじゃないか!

とにかく

凄まじい輝きを放ちまくっているこのシリーズ・・・5巻で一つの頂点を迎えたかと思えた「とらドラ!」シリーズ・・・。

「さしものゆの字もこれ以上のパトスを体内から噴出させる事は不可能なのではないか・・・!?」

と、業界関係者の声が囁かれる中、ゆの字、予想を遥かに上回るハイジャンプ!
見事な助走から、完全な体勢でのジャンプはバーを超えるどころか、自らの肉体がスタンドを直撃する弾丸と化した!
結果、スタジアム大破!
読者、死傷者多数!
死因、全員鼻血!
これぞ極まりに極まった青春力と言わずして何を青春力と言えばいいのか!
もはや日本の最終兵器だぜゆの字! これで次の戦争ではアメリカに勝てるぜ!?

諸君!

そもそもニキビは何のために出来ると思っている!?
・・・聞き間違いじゃねえ! ニキビだ! ニキビ!
・・・あぁ!? ナニ!? ・・・そう、そうだ、分かってんじゃねえか!!!
ままならぬラヴに向かって突進するためのエネルギー噴射口として出来るに決まってんじゃねえかよ!!
そら潰したら血も出るがよ! しかしそれが凄まじい突進力を生み出すんだよチクショウ!
頑張ってるぞ竜児!
ナイス噴火だ北村!
良いキレっぷりだ大河!
意外と怖いぞみのりん
純情だけど頑張れ亜美!
仕事頑張ってるな独身!

総合

星はあっちだ! 目指せポーラスター!
他に何を書けってんだああああああああ!
肉だ肉! 今晩は焼き肉だああああ! 肉もってこい! ニンニク山盛りで!

ところで

  • 登場人物(30)の名前が「独身」で統一された件について。ついに本名が不明な存在に。
  • インコちゃんの舌使いは見事らしい。
  • ゆの字がまだ20代だという話は証拠が出るまで認めない方向で。

感想リンク


あと、以下はネタバレなので注意してねん♪
念のため「続きをよむ」にしておくよ〜!

さて、妄想だ。

・・・興奮した部分はもう文章にしたので良いとして、今後の予想というか、その辺りをまとめておこうと思う。
幾つか順番に考えてみる。

大河の「二枚目の写真」は一体誰のものだったのか。

これはもう可能性からいって「竜児の『ブサイク面』で写っている写真」でおおよそ間違いないのではないかと思われる。
もちろん日常的に写真を入手する可能性が無い訳ではないから他の可能性も捨てきれないが、展開から言ってそのように想像するのが正しかろうと思う。問題のシーン(P.33〜34)にかけて、竜児が指し示した写真(大河&北村ツーショット)を見た際の大河の反応は

大河は、答えなかった。
なにも言わないまま、その一枚の写真をみつめる。やがて唇に、ふ、と微かな笑みが浮かぶ。髪が香るほどの距離にいながら、竜児には傍らの大河が考えている事はわからない。わかるのは、写真が切り取った瞬間を見つめる眼差しの穏やかさと、確かめるようにそっと伸ばした指先の白さ。

この後は爆笑反応シーンになってしまうので、何とも言えないのだけど、大河が見ていたのは実は竜児の写真。ここにあった竜児の写真を購入したのが当たりではなかろうか。
問題は、大河が「竜児へのある種複雑な気持ち」を自覚した瞬間なのだけど、恐らくは4巻のラストシーン付近。

そうか。
——こういうこと、なのか、と。

大河が自覚したのは「竜児を失うという事」では無かろうか*1。大河はこの瞬間に「自分のもう一つの想い」を封じる決心をしたのでは無かろうか。それこそ実乃梨が好きな竜児のために。
それまで大河は3巻にある通り、

「竜児は、私のだぁぁぁぁ————————っっっ! 誰も触るんじゃ、なぁぁぁぁぁ————————いっっっ!」

と思っていたはずなのだ。ただこれはある種無自覚なもの。しかしそれはホンネでの確定事項なのだ。
しかし時は移ろい、そうは言っていられなくなる。竜児と実乃梨が近づいたとなれば。そして竜児の気持ちが実乃梨にあると知っている以上は。
そのため大河は5巻で繰り返す「私はひとりで、生きていけるから」と。北村が好きだという気持ちに嘘は無いのであろうが・・・しかし大河は今作のラスト付近で「北村のそばにいてあげる」ことを選ばない。
あくまで「一人で大丈夫なの」と繰り返し、竜児を北村の傍にいるように促す。北村の本心を知り、その上であくまで殴り込みをかける大河ではあるが・・・それは果たして「恋心だけ」の作用によるものだろうか?
彼女が狩野すみれに対して爆発したのは「傲慢かつ馬鹿になりきれないもう一つの自分の姿」に対して感覚的に近親憎悪に近い感情を持ったからでは無いかと思ったりする。
大河がしようとした覚悟は「独りでも平気だ」という覚悟、大河の怒りは「竜児も北村も、自分の勇気の無さ、はっきりしなさから失いそうな自分」に対する怒りなのではないか。

——罪悪感は、無くなった?

おそらく続編が出るまで確実な火種となって残り続けるであろうこの問題発言。
これは亜美から実乃梨に対して行われたものなのだけど・・・。どうやら実乃梨はこの発言に大層なショックを受けたようだ(図星を突かれたからだと思われる)。
で、ラストシーン付近まで実乃梨が感じていた「罪悪感」は可能性としてそう多くはない。

  1. 実は北村が気になっていて、親友である大河を裏切っていたという罪悪感
  2. 実は竜児が気になっていて、親友である大河を裏切っていたという罪悪感

しかし、大河が爆発し、その思いの対象が「北村である」という事が白日の下に晒される事によって「無くなる」罪悪感とは一体何か?
・・・やはり実乃梨は今まで「親友である大河の好きな相手は竜児だ」だと思っていたのだろう。
つまり、勝手に推測すると、

  • 親友の大河の好きな竜児を好きになってしまったという罪悪感

が妥当ではないかと考えられる。
また、実乃梨が竜児を気にしている/好きだという証拠としては既刊本でも幾つか挙げられるが、この巻では44〜45ページあたりで確認できるのではないかと思われる。
それに加えて大河に対して罪悪感を感じている証拠として追加しておきたいのは99ページ。

そうだそうだと頷いて、実乃梨はおもむろに、やたらせかせかと早足になる。

彼女は学校から——ひいては大河から離れたかったのではないだろうか。
北村家に行く際に実乃梨は大河を誘っているが、大河はこれを「『少人数で行った方が〜』と表向きの理由」で断っている。これ幸いと実乃梨は行動したのだけど、いつ大河の気持ちが翻るかわからない。だから大河に追いつかれたりしないように・・・罪悪感を振り払うように、早足になったのではないか。

「違うよ、違う! 私はただ底なしに傲慢で、そして——」
実乃梨は笑うとも、怒るともつかない顔で、絞り出すように小さく呟いた。
「——ずるい、ん、だよ」

本編で実乃梨は自分の事をこのように表現する。
それは大河の大事な人を知っているのに、竜児の気持ちをいい事(恐らく・・・というか十中八九気づいている)に、奪い取ってしまおうという気持ちがあるからではないだろうか。

亜美の本音はどこにあるのか。

本編において実乃梨は、

「私も、言っちゃ悪いけど高須くんにも、わからないこといっぱいあるじゃん。わかりたい相手なのにわからないこと。そういうの、あーみんは、あーみんだけは、全部ちゃんと分かってくれてるって思いたいの。……なんつーか、私らが未熟ゆえにわかってあげられない奴らの、アンド、わかってもらえない私らの、それが最後の救い、みたいなさ……あーなに言ってんだかもー」

なんて事も言っている。
恐らく登場人物の心境を一番正確に把握しているのは亜美で間違いない。その上で我慢して付き合っている所がある。
しかし、この6巻のラストでそれは一種堤防が決壊するように噴出してしまう。まず間違いなく、亜美は竜児が最初の時から——おそらく2巻の時のストーカー事件以来から——好きなのだろう。

同情だけじゃない。彼女に対する、嫉妬もあった。

同情は——実乃梨が親友の大切な人を好きになってしまっているという「同じ境遇」にいるという同情。
嫉妬は——実乃梨が竜児に想いを寄せられているという嫉妬。
基本的に彼女のホンネは「自動販売機のすき間」・・・というか「竜児と二人だけの時」とともにあったりするのだけど、それが実乃梨の前で出てしまうというのは・・・そろそろ我慢できなくなってきた兆候ではなかろうか。

  • 3巻、183ページ「夏休みをどうやって過ごすか」の話の時。
  • 4巻、215ページ「高須くんには誰が似合うか」を話した時。
  • 5巻、169ページ「竜児と実乃梨の喧嘩について」を話した時。

そして6巻・・・彼女は、5巻の、

「あたしはね、前から大人なのよ。でもまあ、変わったところもあるかもね。……少し、考えたの。考えて、変わりたい——変えたい、って思ったところもあるのよ。……自分の、いろんな部分を」

を裏切る述懐をする。

全然うまくなんかやれていない。変われない。なりたいようになんか、なれない。

さらに、亜美は6巻で竜児に対してこんな言葉も残している。

「高須くんさあ、その肝心なところにばっかりニブすぎなところ、あたしは嫌いじゃないよ。実はね。でもねえ、そこがいつか、君の命とりになると思うなあ?」

亜美は冷酷非情なように振る舞いながらも、基本的に相手の気持ちを読み取る能力に優れている。
そして自分の感情より周囲の調和を優先し、誰よりも友人達に気を使い、さらには「気を使っている」という事実すら気づかれないように上手に気を使ってしまうという・・・ある意味もの凄く損な性格をしているのだろう。彼女は5巻で「もっと大人になって冷静でいたい」と思ったに違いない。しかし、そうはなれないどころか、さらにメルトダウンが近づいている。
この竜児に対する「警告」とも取れる言葉は・・・恐らく亜美の心の堤防が決壊寸前であるという事を暗喩した、一種の洪水警報なのではなかろうか。

*1:コメント欄で「カータン」さんがより生々しい分析をしてくれていますので、必見です!