嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(3)死の礎は生

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 3 死の礎は生 (電撃文庫 い 9-3)
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 3 死の礎は生 (電撃文庫 い 9-3)入間 人間

メディアワークス 2007-12-10
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おすすめ平均 star
starそろそろ苦しくなってきたかな・・・
star死のカタルシスの先にあるものとは、、、
starこれも一つの青春

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ストーリー

みーくんはとにかく嘘つきで、
まーちゃんは壊れてる。
激しく常識と乖離した物語である。

2巻での療養生活の上で

みーくんとまーちゃんは病院から退院、そして元の澱の溜まったような二人の暮らしに舞い戻る。そしてそれと同時に街に帰ってくる異常事態。

「現在、この街では動物が無益に殺傷される事件が頻発しています。被害を受けた人間の中には我が校の生徒も含まれており、黙視していられないと生徒会が提案をしました」

と、美化委員会では副委員長が宣い、

生徒会長の菅原は、殺人癖以外は至極真っ当な部類に属していた。

と、みーくんは述懐する。

私は

2巻を「蛇足」と切り捨てたのだけど、こういう展開が用意できるのであれば、2巻を「準備期間」として読みなおす事が出来そうではある。
まあ普通の読者からすれば、冷蔵庫に死体が入っている準備期間なんて用意されても困る訳ですが・・・。
狂気と正気の境目は、登場人物の思考を追いかける読者にとっても曖昧なものとなり、登場する人間のそれぞれが全て異様である事に気がつくに違いない。それは語り部であるみーくんが嘘つきだからか?
それは、違う。この物語においてある意味恐るべき所は、

全ての自分と異なる人間は何かしら狂っている

という前提で書かれているからではなかろうか。

みーくん

彼の中の深淵から見渡す世界は、どこも狂気に満ちあふれている。
しかし、彼の乾いた人格が何かしらの人間性を取り戻す時、彼は正気と狂気の境目を目撃して、自分を狂わせずにはおけない。彼が目にして来た狂気の源泉が一体どこにあったのか? ここまで読んで来た読者なら自明の事だろう。

暗闇の中、願っている事は。
「たまには、たまには、たまには……」
痛くなれ。
心が、痛くなれ。

正気と狂気の狭間で生き残るために、彼は嘘を吐く事を覚えた。これが悲しい適応でなくて、何を適応と言えばいいのだろう・・・。

まーちゃん

「まーちゃんの浮気の定義は?」
「話したら」それは難易度が「触れ合ったら。笑ったら。優しくしたら。みーくんはわたしのだもん。みーくんの心とか優しさとか全部、わたしのだから。人にあげるのなんておかしいよ」

そのためには殺人未遂は当たり前。

「#”%」(=((&’)(’&%$#$)((〜)(〜)=!」
マユがざわめく、絶叫する、吠える。
四肢を切り飛ばすように暴れ、僕の腕を振りほどいて地面へ落下する。

・・・模写する側としては、まーちゃんのセリフが全部全角文字で良かったと安堵するべきだろうか?

『はい、これでかんぺきー。ふぉーえばーらぶー』と僕が看病の途中で眠っていたら、目覚めたマユに、互いの小指の端にシャープペンで穴を空けられて糸を通して繋げられたり。糸は当初白かったけど、お互いの血液に染まって奇しくも赤くなった。

キーワード

「発狂」「赤いケチャップ」「撲殺魔」「妹」「動物を食う」「行方知れず」「筆談」「包丁」「かえかえし返して臓物を」「ええ、小腸が発見されてません」「違う。自殺するやつの方が悪い」「小腸」「何の?」「人間の。欲しいの?」「ゆゆゆゆゆゆゆゆ」「なんで助けてくれないの? そいつを殺してよ! お母さんを殺した奴! 早く! はーやーくー!」

総合

星4つ。
2巻なくしても良かったんじゃ? という気持ちはあまり変化がないのだけど、この3巻は××かった。
個人的にはヤンデレという存在は実在の人物としては遠慮したい気持ちなんだけど、フィクション的には最近の人気なのだそうだ。それは一体なんでだ。
視野狭窄に陥った挙げ句壊れた人形のような少女の存在はフィクションでなら心地よいからか。それともそれを受け入れがたい私が既に発狂しているからか。あるいは世の中は発狂しているので、かなりマズい状態だから率先して掃除してやらないといけないような状況にあるのか。
どうせみんな正気のフリをした狂人ばかりなのだから赤いケチャップ事件がニュースで報道される事が絶えないんだろうな。嘘だけど。
イラストは相変わらずの左氏です。カバー裏の隠し技は相変わらず健在。ただし、ちょっとだけ趣向を変えて予想外の展開です。

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