ヒトカケラ

- 作者: 星家なこ,藤原々々
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2007/11
- メディア: 文庫
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もう全く褒めてないので、この作品が少しでも気に入った人は読まない方が良いと思う。
読む人によってはここより下は『心の安寧を損なう酷評』になっている可能性が高くなっております。 ファンの人は要注意! この感想が地雷です!
地雷と知りつつ、それでも読まれる場合には、以下の「続きを読む」をクリックして下さい(直接このエントリに来られた場合には「続きを読む」は表示されませんのでご注意下さい)。
ちなみにこちらのお二方は比較的高い評価をしていますね。私は全然だめでしたのでぜひ参考にして下さい。
つーかリクリップス経由で色んな人の感想を読んで「良くできていた」とか「切ない物語」とか書かれていて正直もの凄く驚いた。俺の感覚が摩耗してんのかねえ・・・。
というか、気になって調べてみたらMF文庫の<佳作>って、あの「地を駆ける虹」も同じ時の佳作なのね。なんとなくどういう位置にいる作品なのか分ったような気がする。
なにこれ?
ライトノベルでもなんでも、まあ普通の作品は「作者がどんな事を書きたくてこの本を書いたのか」と言ったものを感じるのが普通ですが、この本はそう言ったものを一切感じませんでした。
例えば「ハラハラドキドキと楽しませたい!」とか。
例えば「なんかえっちくて悶々とした気分にさせたい!」とか。
例えば「今感じている不満/歓喜を作品として吐きだしたい!」とか。
まあ普通色々ありそうですが、それが一切ない本です。どうやったらこんな本が書けるのかいっそ不思議な位の気分です。読了後だから言える。ええ、言ってしまいます。
「で、結局何が書きたかったの?」
あとがきで作者の人は、
この作品を書いたのは、伏線について悩んでいるときでした。
とか書いてますが・・・正直こう言いたい。
「伏線がどうこうとかってレベルじゃねーぞ!」
ひょっとして切ない話とか書きたかったのかなあ・・・。
キャラクター?
こんなに人間味を感じさせない作品も珍しいです。
いや、正確に言えば主立った登場人物のうち、ちゃんとした人間は二人しかいない訳ですが・・・。それにしてもその二人のうち、一人の少女はなかなか良いキャラクターとも言えそうですが、その程度ですかね。
全体的に無味無臭というか・・・文字にはそれだけで意味があるはずなのに、読んだ瞬間片っ端からただの2バイトのデータになって後頭部から抜けていく感じとでも言えばいいのかな? 砂漠の方がまだ生き物の匂いがあると思う。冗談みたいに感情移入できなかった。
設定
唐突という印象が全くと言っていい程ぬぐえません。
- 少女に「私の欠片」を探して欲しいと頼まれる。
- 少女が言うには、少女は異星人によって地球に送り込まれた、必要に応じて人類を破滅させる端末だという。
- それを判断するのはその少女。実行するのもその少女。人類が危険だと判断したら滅亡させる。
- 人類を滅ぼさないようにするためには、キスをその少女とする必要があるらしい。
- ちなみにその審判の日(このままいくと人類滅ぶ)まで、あと四日らしい。
まあ、その「自称絶滅端末」の少女によればの話ですが・・・。
正直にいって
ここまで読んで「・・・はい?」という感じでしたね。この辺りが非常に情感なく淡々と描かれます。
少女が宇宙人というか・・・宇宙人の人類絶滅端末という設定を納得させるだけの説明も足りなければ、主人公がその少女の「完全電波」とも言える——いわゆる邪気眼?——をそのまま受け入れる下りも納得するに足りません。普通ドン引きすると思う。
もう笑うしかないレベルですね。一体どこまで本気なのか疑いたくなる出来です。この展開で読者がどこまで納得できると思ったんでしょうか?
「涼宮ハルヒの憂鬱」に憧れまくってなんか書いたら、「ハルヒの劣化劣化劣化コピー失敗作品」が出来上がったとか説明したらなんとなく伝わるかも・・・?
ちなみに
ストーリーは大きく前半と後半で分かれまして、同じ出来事が二人の別の主人公の視点で語られます。
それによって前半での特定キャラクターの謎の行動の理由が明らかになったりするのですが、意外という感じも特に無く、作者の人が伏線と言う風に表現した部分は「物語を面白くするために注意深く配置された伏線」ではなく「ただ物語を二つに分けたかったから書かなかった部分」と感じましたね。
後半を読むと
さらに謎展開が進むのですが・・・。
- 前半のメインキャラの電波少女を監視していた宇宙人が同級生にいたり(人間の事を全く判っていない・・・というか描写が甘すぎてただの変な人)。
こいつがまた・・・人間に恋をしている割には人間の事を全く知らなかったりして・・・なんだそりゃ?
- さらにはそれとは別に人に乗り移るタイプの別の宇宙生命体が出て来たり(外見は完全に人間で女の子・・・自称宇宙人?)。
行動に初々しさと言ったものが欠落しているので可愛らしさに欠けます。
- その女の子のお兄さんが訳知り顔(こいつも自称宇宙人?)で出て来たりします。
特に何をするでも無いので何のためにいるのか分かりません。・・・何しに出て来たの?
ちなみに
こんな風に感じるのは・・・どのキャラクターについても描写が弱く、動機が弱く、心の動きに説得力が無いからですね。物語的には「本当に宇宙人」のようなのですが、どうしても自称宇宙人の電波な変な人に見えます。
設定が唐突と言いましたが、とにかくキャラクターの心情描写が足りない。ほとんどのキャラクターに魅力と言ったものが無いです。全くと言っていい程味わいがないので、喋っているだけのアンドロイドが動き回っている話と言いたい。彼らの喜怒哀楽は全て嘘くさく、偽物臭く、誰がいつどこで死んで消えようが良いんじゃないかと思える程です。
総合
星1つ。正直星無しでもいいや。他の星1つ作品に申し訳ない。
正直に言うと、この出来で佳作ならワナビな人はMF文庫狙いでいくべきだと思う。もうね、笑っちゃうよ正直。「アストロノト!」は楽しかったけど、佳作がこれって・・・。差がありすぎる。
選考して、これに佳作を付けた人は一体何を楽しいと感じて佳作にしたのか説明して欲しい。それともこの作品以上の投稿がなかったのかな? はっきり言ってもしこれ以上の作品がなかったから「佳作」にしたとかだったらもう金輪際止めて欲しいと願いたいです。完全に「金返せ」ですね。
イラストは藤原々々氏です。イラストが無かったらこの本どんな本になっていたのか・・・想像するだに恐ろしいです。キャラクターに命を吹き込んでいるのは文章ではなくイラストです。