人類は衰退しました(2)
- 作者: 田中ロミオ,山崎透
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/12/19
- メディア: 文庫
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ストーリー:1巻から大きく変更無し
とにかく人類が衰退した未来。
人口も減り、技術も失われた未来世界。人類は緩やかに滅びの時を迎えつつありました。いまや地球は人間の物ではなく、妖精さんたちの住む世界で、元の人類は「旧人類」とでもいう位置となっていました。
主人公はそんな世界で最後の学校教育を収めた「かなり対人関係能力に問題のある」少女が故郷に「調停官」となって帰ってきます。「調停官」のお仕事は、妖精さん(身長約10センチ、三角帽子、ちっこい手足)と人間の間を取り持つ仕事なのですが、はて、帰ってきた故郷では「調停官」の仕事などただの閑職に成り下がってしまっていたのです。
それでも日々妖精さん達による変な出来事が起こったり、起こらなかったり、小さくなったりやたら繰り返すハメになったりと忙しいような・・・呑気なような・・・変な日々が続いて行くファンタジー作品。
1巻に続いての
ゆるゆる/へろへろな感じが全編を覆いつくしているのは相変わらずですが、作者の人は一種の異能を持っている人じゃないかな〜と思いました。
もちろん想像の域を出ない話ですが、こんな話を書ける人がこの世に複数存在するとも思えないので、やはり一種の特殊能力の持ち主でしょう。ただ、天才かどうかは私には分かりません。正直この田中ロミオって人は「私にとっての不可知領域のような所」で物語を作っているなあ・・・と感じました。
もっと単純に言ってみると私に取ってこの本は一種の異星人の作品ですね。この奇怪さ、得体の知れなさ・・・読めば読む程「私という読者」と「作品」の距離が広がっていくような・・・不安感? とでも言えば良いのでしょうか?
ただ
相変わらず妖精さんたちのやらかす事は緊張感に欠けていて、そしてまた主人公の行動も緊張感の無いこと著しいのですが、そこで起こっている出来事は驚天動地というか・・・いっぺん脳みそ開いて見てもらえや? と言いたくなる出来事ばかりです。
2巻では1巻を超えてさらに作品全体の正体不明さが向上(?)しておりまして、小さくなるやら、頭も悪くなるやら、ハムスターは直ぐに死ぬやら、ノロイは出てくるやら・・・
しかもよく聞くと、ブツブツと呟いているのです。このダンゴムシ。
「食物。食物。食物。暗い所。湿った所。暗い所。食物。食物。暗い所……」
・・・凄いとか凄くないとか以前の問題として、小説の中でダンゴムシの思考を書いた作家は空前絶後なんではないでしょうか?
「むしけらー」
土手っ腹、蹴っ飛ばしちゃいました。
いや、体が勝手にですね……。
可哀想にダンゴムシさん、くるりと丸まってしまいました。
「防御。防御。防御。防御……」
いや、確かにそんな感じだダンゴムシ。と納得出来てしまう感じが怖いです。
他にも過去が消滅している時空間だったりとか、とにかくバナナのおかげで大変な事になったりしますが、人間の認識とか自我に関する考察なんかも織り交ぜられていたりして、なんというかやはり異次元空間ですね。
「わたしがたくさんいたら良かったんですけどね」
妖精さんのひとりが顔をあげました。
「それー。ふかのーではないです?」
「なんですって?」
「どりょくすれば」「ゆめはかなうです?」「しなくてもかなうです」「あえてかなわないというてもあるです」「のぞみ、かなえ、たまえ、ますか?」
「ど、どのような方法で?」
五つの声が重なります。
『クローン』
「ダメ」
「あー……」「そくとー……」「だめか」
しかしそこは斜め上の発想が必殺技の妖精さん達。個人の認識の限界の向こうでやらかしてくれます。