アキカン! 4缶めっ

アキカン! (4缶めっ) (集英社スーパーダッシュ文庫 (ら1-5))
アキカン! (4缶めっ) (集英社スーパーダッシュ文庫 (ら1-5))藍上 陸

集英社 2007-12
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いきなりシリアスになった3巻を引き取る形での4巻ですね。

ストーリー

大地カケルの元に身を寄せていたアキカンのメロンが姿を消した。メロンはこの世界で繰り広げられるスチール缶とアルミ缶の選択を迫る「アキカン・エレクト」と呼ばれる戦いに参加する一人で、カケルを自らのオーナーとしていたのだが、戦いに対する姿勢の違いと、過去の因縁が二人の心に距離を作ってしまう。
そしてメロン含む他のアキカン抜きで行われる事になったオーナー同士の直接対決・・・二人の心の離れたままで行われる戦いは、どのような結末を用意しているのか? 解決編となる4巻です。

前巻のラストが

緊張感バリバリだったのでどうなる事やらと思っていたのですが、意外に全体的にリズム良く進んでいったなあ・・・という感じでしたね。
カケルもメロンもお互いの事を気にしながらも、お互いが何を感じているか分からない。だから自分の信じる事をやるしか無い、という感じで話が作られますので、キャラクター達の脳内で起こる妙な懊悩で本編が埋まらず、とりあえず「目標に向かって行動する二人の行方」って感じで読めたのが良かったですね。
どうしても悩みなんかの描写が続くと印象が暗いし、なんかテンポも悪くなる印象を私個人は持っているんですけど、そうならなかったのが良かったです。悩んでても始まらない事は沢山あるものね。

それに意外と王道で来た

まさしく男同士のガチバトルという感じで話が作られてく所はなんだかとっても王道だったんですが、よかったですね。
個人的にはボクシングジムのトレーナーの行動がイマイチピンと来なかったですが、まあ後悔やら失望やら色々入り交じっているんでしょうからその辺りは本人も混乱しているのかな〜なんて思ったりもしました。まあ、大人も人間だからね。
特に印象が変わったのは3巻でもの凄く悪い書かれ方をしていた塔堂拳介と彼のアキカンである「」ですね。やっぱりなんだかんだ言っても若いってイイナア・・・とか思ったとか思わなかったとか。

リングの中ではだれだって孤独だ。味方などいない。ひとりきりだ。
だから、なにも問題はなかった。一人では生きられない奴は——ひとりきりで死ぬ覚悟がない奴は、弱い。臆病者だ。しかし俺は違う。
違うんだ。

強さと弱さは表裏一体・・・なんですけどね。

やるなあ天空寺なじみ

私は3巻で空恐ろしい印象をもった天空寺なじみですが、いやー良くできた娘でした。
カケルをフォローし、エールを陰から支え、メロンに力を与える・・・伊達に金持ちじゃねえなあ! とか思いましたよ。余裕が違うとでも言えば良いですかね。メロンを鼓舞する所も上手いです。

「カケルちゃんが、カケルちゃんのことを信じられないんだったら、なじみもカケルちゃんのことを信じられないよ」

・・・言えそうで言えないほどの厳しい言葉ですね。しかしそれを言えるなじみは見事です。

「メロンちゃんに謝ろうと思って」
「は……なにが? なんであんたが謝るのよ」
「だって——」可愛く微笑む。「なじみのカケルちゃんが迷惑ばかりかけるから」
「!」メロンのお下げが飛び跳ねる。
「そのまんまの意味。しってるでしょ? なじみ、カケルちゃんのこと好き。そのうちぜったいに彼女さんになるから、だからいまのうちに彼氏さんの不始末を謝っておこうと思って」
「っ……」

見事なまでの敵への塩の送りっぷり。良い女だ・・・。このまま良い女でいてくれる事を願うなあ・・・。

総合

星4つ。
ちょっと無駄を感じた部分もあるのだけど、上手くまとめたかなという印象ですね。
よくも悪くも王道的な展開を一歩も出ないのですが、それでも面白く読みました。予定調和的でもちゃんと登場人物が「生きて」いれば物語は幾らでも面白く出来るという典型とも言える作りだったような気がしますね。
ラストシーンでは笑いも戻ってきますし、物語は新しい局面に入りそうですし、次の話も色々な方面で期待しちゃいますね。次はどうもコメディが戻ってくるようですが、新しい関係に足を踏み出した登場人物達が織りなすドタバタはさらに楽しそうです。
イラストは鈴平ひろ氏です。今回はまあ無難な出来だったかな・・・。

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