ライタークロイス(2)

ライタークロイス〈2〉 (富士見ファンタジア文庫)

ライタークロイス〈2〉 (富士見ファンタジア文庫)

よっし、安定して面白いぞー。

ストーリー

騎士登用試験での不正を暴く事に協力したために、自分は騎士になるのが先送りになってしまったカイン。しかし、皇女であるファリアの従衛になることによって、一緒にチャンスを棒にふったレイクと共に帝都に留まり来年の騎士登用試験に備える事になった。
彼らが従衛として務める最中も国は色々な動きを見せており、隣国のインフェリアとの関係も新しい局面に入りつつあり、ファリアもその関係の中である役目を担う事になり、従衛のカインとレイクもファリアに付き添う形で国を離れることになるのだが・・・。
キャラクターの魅力と安定した語り口で楽しませてくれるシリーズの2作目です。

へえ〜

カインは落選してしまいましたが、騎士登用試験に合格した者達もいる訳で、その者達が「ライタークロイス(騎士勲章)」を授かるシーンなども出てきますが、結構意外な感じでした。
確かに特殊なものであるという描写はありましたが、それにしても不思議なシロモノであるという感じですね。なんと言うか、幻想水滸伝に出てくる27の真の紋章みたいな感じで授与されるんですねー、って、例えが悪すぎるか・・・。
簡単に言えば形として存在するのと同時に精神的にも存在して、騎士とその騎士の猟る聖獣との繋がりを表すものなんですね。

それに

キャラクターの魅力は1巻に引き続き健在です。

カイン

主人公の彼は一言で表現出来るような「これだっ!」って特徴はありませんが、ちゃんと体の芯に一本曲がらない鋼が通っている感じがして実に良いです。1巻でも引用しましたが、

「……なんとかするよ」

が口癖の、純朴だけど強く、意外に頑固だけど良い奴、熱心で実直という感じですね。それと同時に、

「君のつくってくれる料理は、好きだな」

とかなんとかイングリドに向かって自然と口に出していたりして、乙女心を知らずにくすぐるのだったりします。

イングリド

最高。やっぱり時代はメイドじゃなくて侍女だ。
よーし、おじさんイングリド雇っちゃうぞー。そしていつか愛人にしてくれるわー!
・・・まあともかく、イングリドは間違っても派手に動き回るような事は無いのですが、最高にいい味を出しています。健気で純情でありながら強い・・・まさしく最高の侍女ですね。愛されたが最後もう大統領くらいにはしてもらえそうです。

「出過ぎた真似かと思いましたが……綻びがあったので繕っておきました」

気は利くし、真面目だし、仕事もできるという最高の侍女ですね。
しかし・・・!!! イングリドとファリアが顔をあわせた瞬間に話は変わってきます。

ファリア

皇女ですね〜。つまりはアルファですが。
イングリドも良いですが、彼女も十分に良いです。特に後半あたりですが、カインの日記経由で姿を姿を見せるファリアは実に良いですね。ファリアは持ち前の行動力をもっていつも脱走というかお忍びの行動をしようとするのですが・・・。

追いつめたファリアが急に上目遣いになって「……通してくださらないかしら」と言ってきたので、笑ったら殴られた。そのあと「可愛かったと言え」と強制され「このことは誰にも言うな」と口止めされた。

・・・なんだかな〜。でも可愛いですね。

激 突

もちろんイングリドとファリアです。ここは長文の引用でいきましょう。

——元々気に入らない、こいつは。
あの人の人生を歪めておきながら、それを反省しているようには見えない。
その意固地さが、そもそもあの男を窮地に立たせたことをわかっているのか。
あの人を解放せず、地位でつりあげて、手元に置こうとしている。
あの男は、私が用意した住まいではなく、こいつがいる家を選んだ。
顔は、笑ったり、怒ったり、喜んだり、拗ねたりするのに。
無関心を決めこむかのような無表情をしておきながら。
心は決して笑うことなく、目の奥が凍りついている。本心を明かそうとしない。
目には、露骨に感情を出している。言葉がもったいないとでも言いたげに。
皇族だからなんだというのか。
ひとの好意を無にしておいて。
だから。
そうだ。
この皇女は。
この侍女は。
——こいつは、敵だ。

ひいいいいいいいいっ!?

まあ

これ以外にも見所は沢山ありまして・・・

  • カインとレイクを鍛えるクローディアがなかなかの女騎士だったりとか。
  • レイクの結婚したい相手の女性が実にヤンデレであるという事が示唆されたりとか(爆笑です)。
  • カインの「自称ライバル」アヴァルの騎士一年目生活とか。
  • アヴァルがイングリドに言い寄ったりとか。
  • そのアヴァルの仲間となる騎士が出てきたり(ネル、ラウニー、オルドリッチ)とか。
  • 帝国を脅かす魔獣の存在が一定ではないという事実とか。
  • 悪役っぽい連中が人間味の溢れる書かれ方をしたりとか。
  • ファリアの兄ちゃんはリアリストで、ファリアが良い男連れてきたらそいつを次の皇帝にしちゃってもいいやとか言ったりとか。

とにかく色々ですね。

総合

十分に面白いので星4つです〜。もうちょっとで星5つにしてもいいなあ・・・。
正直に言って、一つ一つのエピソードは地味で薄味なんですが、その薄味が素材(キャラクター)の魅力を逆にばっちりと引き出すことになっていて、作品全体で見た場合には実に良い味になっています。
本編内で書かれる「変人皇帝列伝」とかも最高におかしいです。帝国の皇帝が意外にも堅苦しくないという事が語られたりするのと同時に、皇帝達がかなりアレな人だったという事が分かって面白いですね。特に帝国における二人目の女皇帝のリラのエピソードは必見です。
本編ラストでは物語が風雲急を告げる情報も出てきますし、3巻が今から待ち遠しいですね。

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