”文学少女”シリーズ6 “文学少女”と月花を孕く水妖

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

ストーリー

物語本編の時間軸から少しだけ遡った夏のある日。井上心葉は突然の電報で呼び出された。

『悪い人にさらわれました。
一週間分の着替えと宿題を持って、今すぐ助けに来てください
                          遠子』

そして何故か姫倉麻貴の手のものによってなし崩し的に姫倉の別荘へ連れ出されてしまう心葉は、そこに”文学少女”の遠子先輩の姿を発見したのだった。
姫倉麻貴曰く、溜まりに溜まった遠子先輩への「貸し」を一気に回収するべく遠子を「捕獲」したらしいのだが、おやつが無いと嫌だとダダを捏ねる遠子先輩のために心葉も連れ出したというのだが・・・このメンバーで何事も起こらない訳もなく・・・。
外伝かと思いきや、とんでもない程の正伝と言えそうな”文学少女”シリーズの6巻です。

もうね、ムカつくんですよ

何がって、このシリーズがですよ。
大体ね、読み始める前に気合いが必要なライトノベルなんて最早ライトノベルじゃねーじゃねーか! とか思ったりするのが私という生き物なんですけど、この”文学少女”シリーズは私にとってのそれにドンピシャで当てはまる訳です。
しかも大抵は重苦しくて碌でもない読了感が待っていたりするもんだから、余計に気合いがいる訳ですよ。マーブル模様の読了感とでも言いましょうか。喜怒哀楽がごちゃ混ぜになってどこかにひり出さないとなんだか悶々としてしまってストレスになったりする訳です。
結果として何故かヤケ食いとかに走ってしまって胃が痛い。チクショウこの野郎! 野村美月め! 胃腸薬代を本の値段からさっ引け! とか言いたくなる訳です。
しかし理不尽にも程がある主張ですねこりゃ。

でも

それでも読みたくなるんですよなこのシリーズ。それがまたムカつくんですよ。
特に今回はあんまり今までメインで扱われて来なかった「姫倉麻貴」がメインで登場する話なんですよ。そうするとこりゃあやっぱり読まないとならんだろう・・・でもまあ外伝っぽいから読んでもきっとそれ程ダメージはでかくなる事はなかろうさ〜と思ったりした訳です。
しかししかしところがどっこい! 実はもっとメインで扱われて来なかった「某”文学少女”の悩めるココロ」がメインの話なんですよね。人の心の探偵を続けて来た”文学少女”の内面に鋭く迫る一冊とでもいいますか。
はぁ・・・そら読んだら大変な事になりますわな。

「今回の”文学少女”シリーズは過去編らしいし、緊迫感も3割減かな? てーことは今日読んでも今日感想書かなくても良さそうじゃない〜?」

とか思って読み出したら、読了後には

「・・・即座に書かないと、もう、死ぬる」

とかになっている訳ですよ。
やっぱり野村美月許すまじ! と怒りの拳を私が振り上げたとしても、一体誰が責められようか? いや責められはすまい。

しかも

美味しい所は実に美味しくしあがっているんですよ。
今回は遠子先輩の魅力が200%位アップしておりまして、遠子先輩のファンなら涎で本が汚れる事を覚悟せねばならんのですよ。

「ほら、ここが令嬢の日記に書いてあった本の部屋よ。まさに夢の世界よ。ごちそうだらけだわ! 素晴らしいわ! あぁ、紙が古くなりすぎて、賞味期限切れで食べられないのが残念でたまらないわ」

・・・本にも賞味期限があるそうです。

「? なに、心葉くん」
「……愛してる」
「!」
遠子先輩がとたんに、ずざっと後ろに引き、首から耳まで真っ赤になる。
「な、なななななな……」
「結婚して」
「こっ、心葉くん」
「幸せにするから」
「〜〜〜〜〜〜!」
ぼくと目をあわせたまま、口をぱくぱくさせる。

・・・何があったのかは本編でご確認を。

「こ、心葉くん、一人じゃ怖いでしょう? 大丈夫よ。わわわわたしが、幽霊も妖怪も入って来ないように、見張っていてあげるから」

・・・可愛い。

さらに

本筋の読了感も今回はそれ程えぐみがないのに加え、本作は青春的な甘酸っぱさが5割増状態です。つまり青春なのですね。ライトノベル的に実に美味しい。
それでいながら今回も新たに伏線を張りまくってくれて、その上でどう考えてもタイトルはあの人の事を指しているのであって、そうするとあの人はそういうあれを抱え持っているのであって、しかも本編でそれを否定するような材料は無く、そして推測通りだと微妙に物悲しくて一体全体読者としてはどうしたらいいのやら、という事になって、チクショウ超絶おあずけ状態の犬になって涎がとまらないので早く次の話を書いてくれよ先生! 明日続編を脱稿しないとぶっ殺すぞー! という「ミザリー」ばりの読者になってしまうのです。くそう。
つまりは野村美月がムカつくんですよ。グウの音も出んぞ! これなんて放置プレイ? マゾっ気は私は無いんですぅ!

総合

いやだから星5つだってばさ。他にどないせーっちゅうねん!
レモンパイってなんだよとか、幽霊じゃなくってどう考えても野外でアレしちゃってんだろそれとか、本当に蚊に食われたんじゃないかと思ったりするとちょっと笑えるねえとか思ったりとか、それよりなにより、

僕の指を噛んだのは何故? Oh Why? Oh No〜♪

青春て1、2、3ジャンプなのは分かりますが、しかしそれじゃあんまりだぜベイベー!
という訳で、早く次の話を書いてくれないと悶絶死してしまう読者がココにいるよ? という悲痛な叫びをブログにアップする事になるのでした。作者に届け! この怨念! 待てて半年! それ以上は絶対に待てん! それ以上待たせると地球が滅ぶからな! いーから何も言わずに脳内イスカンダルまで行って「俺の懊悩除去装置」を取って来てくれ・・・頼むゥ・・・。

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