生徒会の一存
生徒会の一存―碧陽学園生徒会議事録〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 葵せきな,狗神煌
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2008/01/19
- メディア: 文庫
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ストーリー
私立碧陽学園の生徒会は一風変わった選出をされる。それは校内人気投票で単純に決められるシステムだった。
結果として生徒会選挙は普通にミスコン状態となり、生徒会とは名ばかりの美少女軍団が形成されるに至るのだが・・・そこに一人だけ異分子とも言える少年が所属している。
少年はつまるところ、生徒会を舞台にしたギャルゲ的ハーレムルートという大きすぎる野望を実現すべく、一点だけ残されたこのシステムの妥協点——<優良枠>に食い込んで生徒会員となっていたのだった。
<優良枠>は年度末の試験の成績トップの者に与えられる特権で、本人が希望すれば生徒会に所属する事ができるというもの。その特権を「ハーレム達成のためだけ」に獲得した少年・杉崎鍵(すぎさきけん)は、今日も今日とて美少女ばかりの生徒会で変な活動を続行する・・・というか彼含めて生徒会所属の美少女は総じて変人ばかりだったのだが・・・。
まあその変な生徒会の議事録という形で出版された本がこれ——「生徒会の一存」である。
いや〜!
「マテゴ」の相性が最悪だったのでどうなるもんかと思いつつも発売日に買い、今の今まで積んでいた訳ですが、面白い面白い。
とにかく形式としてはアホロリ美少女の生徒会長である桜野くりむの鶴の一声の——大抵はなんか適当な本に感化されたり、昨日見たドラマで同じ事を言っていたとかが原因——で始まり、そしてそれを元にしたムチャクチャが始まって混沌のまま終るという形式。
例えば出だしはこんな感じ。
「世の中がつまらないんじゃないの。貴方がつまらない人間になったのよっ!」
こう宣ったのは桜野くりむ。そしてそれを受けて主人公の杉崎鍵は・・・。
世の中、なんだかんだ言って「初めて」ほど楽しいことはない。
初めての恋愛。
初めての親友。
初めての非行。
初めての成功。
初めての……エロゲ?
・・・ここを定期的に監視している読者諸氏であればおおよそもう想像がついたかと思うが、このページをもってしてhobo_kingは陥落した。
だってだって・・・まさしく今その状態なんだもん! エロゲ乱舞でラノベがちょっと疎かになる様はまるでオナニー覚えたての中学生みたいじゃないか!? こんな風に書かれたら全く反論の余地無いよ!
そして続けて彼はこのように言う。
「じゃ、童貞もそんなに悪くないってことですか?」
・・・敢えてその・・・反感を買うかもしれないけど・・・言ってみる。
男は童貞でいるうちが華。
仮に80歳まで生きたとしよう。で、20歳で童貞を卒業したとしよう。そうするとつまり人生における童貞期間は全人生の「たった1/4」しかないのだ! その貴重な時間を大切に思わず、何を大切だと思えというのか!? 既に童貞を止めてしまった私からすると童貞だった時間がなんと輝いて見えることか・・・!!
- 女性のちょっとした仕草が下半身に直撃したりとか!
- なんか見えない所まで想像逞しくした挙げ句の果てに電車を乗り過ごしたりとか!
- ○○○が○○○に包まれるって一体どんな感触なんだろうかとか想像したりとか!
- ○○○○の柔らかさはプリンとどれだけ離れているのかしかも温かいんだぜ!?
とか沢山考えられるのはコレ全て童貞の特権です。もちろん今でも10h/1day位の時間の妄想は出来ますが・・・その妄想に「ロマン」という意味において一点の翳りが発生してしまうことは間違いないのです・・・!
あ、どうでもいい話だった。
とにかく
この本は実験的で面白いですね。他の出版社の出版物をネタに使ったりとかもそうですが・・・この新しさは最近だと神坂一の「ドアーズ」以来かなあ・・・ラノベ未体験の人が読んでも面白いかもね?
とにかく空気を掴んでもらう為に、キャラクターの簡単な紹介をしてみます。
杉崎鍵(すぎさきけん):副会長で多分主人公
上記のストーリー紹介の通り、ギャルゲー的ハーレムルート目指して生徒会に吶喊したスパイラルバカ。
「俺は、《自分以外全員美少女のコミュニティ》に入るためなら、なんだってしますよ。ええ。入学当初殆ど最下位だった成績でも、一年でトップに上り詰めるぐらい、朝飯前です」
「ふふふ……これから次々と、生徒会メンバーは俺の魔の手に落ちていくのさ……」
「魔の手とか自分で言い始めちゃいましたね……」
真冬ちゃんが苦笑していた。
「ま、あんまりにデレないと、速やかに学園陵辱モノに早変わりするプランも——」
「清々しいほど外道だな、てめぇ」
大きな野望が人間を育てるという典型のキャラクターです。その野望が若者の姿として正しいかどうかは・・・別として・・・。
桜野くりむ(さくらのくりむ):生徒会長
取りあえず適当に感化されて適当な発言を繰り返した挙げ句自分では何も回収出来ないようなジャンピングバカ。
「可愛い声でキャピキャピ喋りあっていれば、男性リスナーなんてコロリと騙されるはずよ」
何故か発作的に生徒会主導のラジオをおっ始めようとした挙げ句の発言がコレです。ま、結果として放送されるラジオ番組はそれはもう——恐ろしい呪いのラジオとなった訳ですが。
紅葉知弦(あかはちづる):書記
クール&Sのちょっと変態美少女。二言めにはなんか呪われそうで怖い。
「あ、それは正解。激しいわよ、私。小学校で、初恋の子に一日三百通『好きです』だけを羅列した手紙渡して、果ては精神崩壊まで追い込んだから。意外と脆かったからそこで恋は冷めちゃったけどね。……貴方はどうかしら」
・・・何を基準に恋愛の正否を決めているのかちっとも分かりません。というか分かりたくもない。
椎名深夏(しいなみなつ):副会長
なんだか「とある魔術の禁書目録」とか読んだ直後だと彼女が本領発揮するページでなんか腹筋とか括約筋とか切れます。
「ふ……。覚えておけ。杉崎鍵。我は、『残響死滅(エコー・オブ・デス)』お前の……兄だ」
「な、なんだってぇ——————————————」
どういうオチが付くのかは本書を読んで確認されたし。
総合
おー、期待値込みで星5つ付けちゃうな〜。
まあ多少シリアス成分とかが入っちゃってるんで、笑い飛ばしてハイおしまい! みたいな感じになりきらない辺りが個人的には残念なんですけど、それでも十分に面白かったですね。あっちこっちからネタを持って来て変な方向に料理していて、実に楽しませてくれます。
まああれです。
- 作者が夜のうちに酔っぱらって書き始めて
- 朝になって読みなおして恥ずかしくなってリライトして
- そしてその日の夜にさらに倍する量の酒を飲んじゃった状態でまたリライトして
- 次の日は結局二日酔いになってやっぱりそのままリライトして
- あまりの頭痛の酷さに耐えかねて迎え酒してやっぱりリライトして
- いつしか酒が入ってないと書けない所まで追い詰められたら出来上がった
・・・というような感じの奇跡の作品です。
次の話も面白いと良いけどなあ・・・どうなるんだろ?