Chaos Kaoz Discaos

Chaos Kaoz Discaos (ファミ通文庫)

Chaos Kaoz Discaos (ファミ通文庫)

ストーリー

「境界理論」というものがあった。
人間の肉体と精神の関係を元にして物理と非物理の関係を解き明かし、不可能を可能にしようとする「神に挑戦する」理論である。それを用いて幾つもの研究がなされた。しかし凄まじい可能性を秘めているが故に境界理論の研究には深い影がつきまとった。
人体実験。
人間の肉体と精神をベースとした研究のためにその実験には常に人間が用いられた。結果として生み出された「人間以上/人間未満」の能力を持った若者達。彼らは地獄のような研究施設の中でモルモットとして使い殺された。
その危険性故に「境界理論」に基づいた研究は封じられた研究となった。しかし・・・いつでも逸脱者達は存在する。そして研究自体はアンダーグラウンドで続けられていた。
そんな過酷な実験環境で被験者として扱われながらも、超常の力を持ったまま生還した被験者達もいる。そしてその若者達は保護され、その植えつけられた「力」と「憎しみ」をもって研究者達を逆に「猟る」存在となった。それを公安零課と呼ぶ。
この物語は「無かったもの」とされた「境界理論」の存在を「さらに無かったもの」にするべく殺戮を続ける若者達の物語。

うーん

なんだか凄く真面目に作られているんだけど、それが妙にういている感じがする。
一言で言えば「濃く練られた設定に筆が振り回されている」かなあ? まあそれでも全体的に面白いのだけど、どこか没入しきれないシーンがしばしば出てきますね。

「俺を人が何と呼ぶか知ってるか? ――ディアブロ(悪魔)、だよ」

うーん、真剣なのは分かるんだけど、ちょっと笑ってしまいそうになってしまった。別に笑うようなシーンじゃ無いんだけど、なんというか余りにストレートな感じの少年誌的悪ぶった主人公とでも言いましょうか。
あと、主人公の標準装備がデザートイーグルというのもちょっと笑えた。ゾウを殺しに行くんじゃないんだから。

でも

全体で見れば結構読めるんだよね。
主人公の雨草芙弓(あまくさふゆみ)も――まあ上に書いたような発言も多いのでちょっとアレですが――そんなに悪くないし、ヒロイン役の稲木エミルもロリだけどキュートに書かれてます。彼らを含め公安零課に所属する人間は全体で見たら魅力的に書かれていますね。
個人的には主人公以外は結構良かったというのが読んでいる最中の印象ですね。

ただし!

念のため読み始めた人は投げ出さずに最後まで読まれる事をお薦めします。
つまり最後の方に色々とどんでん返しが用意されているからですね。これを楽しめるか興ざめと感じるかでこの本に関する評価は結構上下しそうですね。私は・・・まあなんというか、そういうのもアリかな〜なんて思ったような感じです。

総合

星3つ? かな?
悪くはないけど良くもないかな。主人公があまり気に入らなかったというのが大きいですね。
基本的に主人公視点で物語が綴られるので、主人公がセーフなら物語もセーフでしょう。個人的には次の話が出たら読んでみようかなとは思います。
とにかく悪ぶったまま淡々と人を殺して殺して殺す話なので、その辺りは好きですがもうちょっと熱血で殺す方が好み(ってなんか怖いですな)かな。あと、ラストまで読むとなんとも変な気分になる作品なので、この後に正統に続く続編ならそこそこ楽しめそうな気もします。まあ、多分・・・ですけど。

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