さよならピアノソナタ(2)

さよならピアノソナタ〈2〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈2〉 (電撃文庫)

ストーリー

桧川ナオはいつの間にやら自分が音楽を奏でる事に取り憑かれていた。
音楽評論家の父を持った彼は今までは聞くだけだったが、一人の少女との出会い——元(現?)ピアニストかつ天才的なギタリスト——同級生の蛯沢真冬との出会い・・・そして幾つかの偶然と協力があって、ナオは先輩である神楽坂響子の作ろうとしたバンドにベーシストとして所属する事になった。そこには彼とは腐れ縁の少女である原千晶の姿もあった。
そして彼らはバンドとして活動を開始したのだが・・・まだバンド名も決まらないバンドはあっちに傾き、こっちに揺らぎ・・・と色々と難しい状況を抱えていた。そんな中行われる合宿と、予定されたライブ。でも彼らの音はなかなか一つにならず・・・。
恋と音楽が分ちがたく流れる青春ストーリーです。

相変わらず

音楽ネタは分からないですなあ。やっぱりクラシック方面については本当に訳が分かんねえ。
でもその辺についてはもう魔法の呪文かなにかという事で納得したので特に気にはならなかったです。そうなると際立つのがキャラクター造形と描写の巧みさでして・・・この2巻でやっと神楽坂響子が好きになれました。
私の場合、神楽坂響子というキャラクターに対しては1巻では単にムカついたんですけど、この2巻で彼女の内面に渦巻く十代特有の希望と不安が描かれ、バンド結成を強引に進めた理由が明らかになった時に印象がかなり変わりました。うんうん、学生・・・というか若いって恥ずかしい。でもその恥ずかしさが堪らない所だよな〜とか思ったりしました。

「今度は、たぶん大丈夫。いなくなったりしないです。だって、先輩が自分で集めたバンドじゃないですか」
先輩の顔はくしゃりと崩れた。目尻をこすりながら言う。
「そう、だね。うまくいきすぎて、怖かったんだ。この仲間がいなくなって、またひとりになったときのことを考えると、不安だった。そんなこと考えなければいいのに。でも、私はもう知っちゃったんだ。人間は簡単に、ほんとに簡単に、ある日ふっといなくなる。そして二度と戻ってこない。ずっと、その繰り返しだった。だから」
「先……輩……?」

この後に続く彼女の独り言のような言葉は、必見です。

そして

神楽坂響子が本音を覗かせる時、このバンドがもの凄く難しいバランスの上に乗っかっているというのが分かります。力はあっても実はその使い方を誰も知らない。使い方を知っていても、一人では上手く使えない。でもみんなでいるのは難しい。そんな堂々巡りが彼らを待っています。
その一番大きな理由が・・・。

「あのね? あたしが民音にいる理由は、半分は先輩のためだけど」
千晶は真冬の手を握ったまま言う。
「もう半分は、真冬と同じなの。わかる、よね?」

残り半分の理由。それはたった一つしか無いもの。ある意味において純粋に音楽と対面しようとするためには不要で、不純なもの。でも分ちがたいもの。そんな些細な事が理由です。

結局のところ

この話はやっぱり恋と青春の話であって、そこに難しい理屈は全く存在しません。

「あなたは、なんでバンドにいるの」
「なんで、って。千晶と先輩に誘われて」
「そういうことじゃなくて」

じゃあ一体どういうことなのか。その答えを探すためにナオはベースを弾き、ヨタヨタとしながら五線譜の上を辿り続ける事になります。
彼がこの2巻の最後に出す答えを見守ってみてください。

総合

星4つ。王道的に面白い。
何の変哲も無い・・・というと語弊がありますが、つまりは不器用な集団の青春物語ですね。この現実の延長で語られる彼らの青春は、きっと誰もが一度は通った事があるか、通りたいと思った事がある道では無いでしょうか。
そうですねえ・・・文化祭で自分がメインのバンドでライブをやる妄想をした事がある人なら読む素養があるんじゃないでしょうか? ま、そういうのって大抵は恥ずかしい記憶ですけどね!
あ、ちなみに合宿は海です。水着少女たちのあられもない姿も楽しめますよ〜。

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