SH@PPLE

SH@PPLE〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)

SH@PPLE〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)

ストーリー

淡谷雪国(♂)(あわやゆきぐに)は一目惚れをした。
市内の図書館の片隅で見かけた相手の名前は駿河(いするがみつ)。一目見た瞬間から打ちのめされてしまって、もうそれで一杯になってしまった。しかしその後雪国と蜜の関係はずっと他人のまま。通学途中に蜜の姿を遠くから眺めてはため息をつく毎日が続いていた。
そんな折り、雪国の双子の片割れで、別の女子校に通う淡谷舞姫(♀)が、突然奇妙な事を言い出した。

「ボクと雪国で、学校交換」

・・・聞けば舞姫は学校で今のところ色々と苦労しているらしく、疲れたらしい。
とにかく余りのケッタイな申し出に「ムリだ!」と思った雪国だったが、舞姫の通う学校に蜜がいる事を理由になんとなく利害が一致し、あれよあれよという間に入れ替わりの準備が整ってしまった。
双子で性別と性格以外は瓜二つの二人は、他の人に気がつかれないまま入れ替わり学校生活を開始する・・・。しかし、入れ替わった先で待ち受けていたのは予想*1を超えた出来事だった。
性別変換系(?)としてはちょっと珍しい感じのシリーズの1巻です。

いや、

私ね、この手の♂⇔♀交換系の話が苦手なんですけど、「うーん、誰だったっけか??」という作者が何を書いた人だか思い出したので購入を決定した次第です。アレですね、ファミ通文庫で「マイフェアSISTER」書いていた人です。
あの作品は全2巻で終ってしまいましたけど、キャラクターが印象に残っていたので、これなら買ってみるのもアリかな〜と思った訳です。で、買った結果、成功しました。

この話は

ダブル主人公で話が進みます。
話の一般的な売り・・・というか宣伝文句は「美少年が恥じらいつつ女装して女子校に!?」という腐女子的なアレなような気がしますが、実際の所は雪国側が特にクローズアップされて語られる訳ではなく、女子校(青美女学院)に通う事になった雪国と、共学(空舟五中)に通う事になった舞姫の両方の話が交互に語られます。で、そのどちらも展開的に面白い所があってですね・・・。

  • 雪国(青美女学院)は、お嬢様達の集う閉塞感のある学園に新風を送り込む事になり。
  • 舞姫(空舟五中)は、無気力な生徒の集うつまらない学校に活力を送り込む事になり。

とまあ・・・それぞれの特徴を生かして物語を動かしてくれる事になります。

そして

後半になってこの二つの流れが一つに纏まっていこうとする辺りになると、話は俄然面白さを増していく事になりまして、単なる♂⇔♀交換系という話の枠を超えて、学園熱血系とも、ラブコメとも、青春ものとも言える展開になって行きます。
この話、結構な数のキャラクターが用意されているのですが、そのそれぞれのキャラクターに上手い事特徴をつけていますので、読んでいて「こいつ、誰だっけ?」という事も無く楽しませてくれました。
個人的には主人公二人が気に入りましたし、ヒロイン(?)である蜜のキャラクター性も好きですね。あとは・・・ザ・お嬢様という感じの蝶間林典子ですか。いやあ、楽しい人です。

総合

星4つ。うんうん、次も楽しめそう。
性別(学校も)を入れ替わっている割には、そこを前面に押し出す事より別の楽しさを追加してくれた所がとても良かったです。雪国も舞姫も見所のある少年少女ですしね。読んでいて楽しいです。
ただ、ちょっと分かりにくかったのが「あれ、今は雪国サイドの話だっけ? それとも舞姫サイドの話だった?」というところでしょうか。いや、別にそんな複雑な書き方をしている訳ではないので、混乱したらちょっと読みなおせば直ぐに分かるんですけど・・・2〜3回は混乱したかな? これについては本のせいというよりは、私がもうちょっと集中して読めって事かもしれませんが。
ちなみにイラストですが、巻頭カラーのおよそ半分が本編と一切関係がないというところが面白かったですね。思い切ったなあ! でも楽しかったですよ。

感想リンク

*1:もっぱら読者の。