鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(4)

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 4 (4) (電撃文庫 か 10-14)
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 4 (4) (電撃文庫 か 10-14)壁井 ユカコ

アスキー・メディアワークス 2008-04
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おすすめ平均 star
star皆子の残像

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ストーリー・・・代わりの引用

繁華街の場末、ヨーロピアンからアジアンテイストからニューヨークスタイルまで無秩序無国籍な建物が窮屈そうに立ち並ぶごみごみとした界隈の一角にアンティーク調の時代がかった趣を漂わせて佇む、七階建ての西洋建築、ホテル・ウィリアムチャイルドバード。建物の正面に鳥籠のように切り立つ飾り格子の印象から通称<鳥籠荘>とも呼ばれるこのホテルの住人は近隣で悪名高い”変人”揃い。通常の社会に溶け込んで生活を営むには少しばかり難がありの、一癖も二癖もある連中ばかり。建物自体に意思があるかのようにおかしな連中を呼び寄せるのだ。

主人公の衛藤キズナは、そんな<鳥籠荘>に住居を構える「変人の自覚のない変人(?)」少女。彼女を中心に鳥籠荘の不思議な日常を描き出した作品です。

うむむむむ・・・

実は数日前に読了していたのだけど、感想を書くのに時間がかかった。
なんでかはよく分からないのだけど、巣立っていってしまった・・・という感じがしたというかなんというか、えー、これは殆ど正統派の少女向け小説のような気がします。
もちろん基本の作品構成は短編が幾つか纏まって一冊になっているという所に変わりはないのだけど・・・なんと言えば良いんだろうか、衛藤キズナを中心とした男性二人による「フクザツな三角関係」がシリアスの度合いを増した結果、他の短編との重みの違いを露骨に感じる様になってしまったという事じゃなかろうかと結論した。

面白さに差があるというよりは

本編と挿話の差が見える様になってきてしまったという感じ。
着ぐるみ父ちゃんと健気な娘の話も、へれんの話もとても良いのだけど、本全体で眺めるとどうしても弱い・・・メインディッシュの添え物的な作品に感じてしまいました。
そういう風に思えるのは、逆に言えば本編とも言えるキズナの話がとっても濃くて、なおかつ良く書けていると思えるからですけど。

絶対に言わない。

このセリフに至る過程は要注目です。この「男にとっての都合の悪さ(容易に精神的優位に立たせてくれない)」というのは男性作家の書く話には無いものですね。
また別のタイミングでは、

ひどいことをしたのは自分の方だ。

という感じで「ちょっと凹む」事になる彼女ですが、その姿に対して私が感じるのはしなやかな若木のような粘り強さです。本当に難しくて、弱くて、強くて、愛しくて、腹立たしい程に良く書けていますね、衛藤キズナは。

反面

メインの男性陣二人は少女漫画的になってきました。
有生は少女がしばしば憧れるちょい冷たくて謎めいた青年に。由起は見守り包む優しく父性的な青年に。これ程ストレートにキャラクターを押し出してくるとは思いませんでしたね。で、そうなるとちょっと色々と匂いがきつく感じ始めるんだよな・・・。
自分が男である故に、男性キャラクターに対しての採点は女性キャラクターに対してのそれよりも厳しめにならざるを得ない所があって、段々と有生と由起が好ましく思えなくなってきました。
あちらこちらに気に入らない所が増えてきて、面白いけどちょっと辛いとでも言えば良いでしょうかね。

総合

うーむ、星3つ。
個人的に好みのゾーンから半歩踏み出した感じ。
正直に言って私は普通の少女向けの恋愛小説が読みたい訳ではないので(そういうの読みたければ女性向けのレーベルの作品買うわ!)、もうちょっと奇人変人テイストを強く押し出して欲しいというか・・・以前の「鳥籠荘」の匂いを取り戻して欲しいという感じがしてしまいました。なんというんですかね、えー「もうちょっと俺は夢が見たい」ですかね。
でも、作品としてつまらないかと言えばそうでもなくて、女性の人にはお薦めしたい本ではあります。相変わらず猫父ちゃんはいい味出してますし・・・こういう短編ばかりだったらとても楽しいのになあ・・・。

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