カッティング 〜Case of Mio Entanglement〜
カッティング3~Case of Mio Entanglement~ (HJ文庫 は 1-1-3) | |
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ストーリー
相坂カズヤ(あいさかかずや)は高校で出会った一人の少女と現在付き合っている。少女の名前は西周ミオ(にしあまねみお)。彼女は心と身体に幾つもの切り傷をもった少女だった。
しかしカズヤと付き合い出したミオは自らを傷つける行為を止めることになり、現在ではクラスメイトにも冷やかされる熱々ぶりを周囲に(ひっそりと)まき散らす毎日だった。
そんな彼らの落ち着いて静かな暮らしに割り込むように現れた一組の姉弟。彼らの名前は葛峰聖(くずみねせい)と葛峰昴(くずみねこう)。彼らもまたミオと同じ過去を背負って現れ、カズヤ達が辿り着いた静謐を試そうとする。自分たちも救われるために・・・。
1巻で登場した二人が再度主役となって、その絆を試されることになる3巻です。ちなみにタイトルに追加された「Entanglement」というのは「(痴情の)もつれ」とか「からむもの」という意味です。
いきなりの
死亡予告で物語が始まることに少し面食らいましたが、それ以外は非常に落ち着いた感じの恋愛小説という印象ですね。
惜しむらくは登場人物達の年齢設定をどう考えても間違ってるなあ・・・と思うところでしょうか。基本の文体が落ち着いているのはまあ良いとして、どいつもこいつももの凄〜く大人びた・・・というか賢者めいた発言をするところが変だったりします。個人的に違和感を感じた文章を抜き出しますと・・・。
「西周は、いいやつだと思うよ。手首切ってたことなんて、ぜんぜん関係なくな。はじめはお前が西周と付き合うのに違和感ばっかだったが、いまじゃ似合ってると思う……けどな、そんな本人の善し悪しとは関係ないトコロで巡るモンがある。否応なく背負わされるモンがある。西周は、明らかに背負ってるタイプだ。でかくて暗いモンをな。普通に生きてたら、背負う必要もないモンだ」
カズヤの同級生の明が口にしたセリフですが・・・お前何歳だよ。人生酸いも甘いも味わった挙げ句、物寂しい酒場で働いているバーテンダーか何かか。
主人公が気障なセリフを連発するのはまあキャラクター性ということで慣れたんですが・・・唐突とも言えるサブキャラクターの人間談義はちょっとどうかなあと思いましたね、流石に。
ここを除けば
概ね楽しんで読めましたね。上でも言った通り主人公のカズヤは相当な気障ですが・・・。
『けど、あなたの付き合うという概念は、いったいどんなものなのかしら?』
『一緒に居る、ということだ。なんだったら手を繋いで映画に行ってもいいが、どちらかと言えば君がニーチェを読んでる横で、僕は静かにヘミングウェイでも読んでいる。そんな空間がつくれたらいいね』
・・・まあその、お前も何歳だよという気持はムクムクと沸き上がる訳ですが、まあ主人公に関してはそういう変な奴、ということでとりあえず納得することにしたかな・・・。
それと
本編内で「結構人によって感じ方が違うものだなあ・・・」と思った部分というのがありまして、
「こういう、適度に手入れがされてて、なおかつ人気の無いところ——とても良いです。非常に好みです」
「手っ取り早く、”孤独”を実感できるから?」
こんな対話があったりするんですが、僕とは違うなあ・・・。
話の中には上記と同じ流れで「祭の終ったあとの雰囲気が好き」というシーンが出てくるんですが、この時の感じ方も僕とはやっぱり違いました。
私も好んで寂しい場所に出かける口ですし、祭のあとの空気が大好きなのですが、それは・・・うーん、なんというか「その空気そのものが寂しいので、そこに入り込むことで自分の寂しさが救われるような気がする」からです。
決して改めて孤独を感じに行ったりする場所じゃありませんね・・・。一番強く孤独を感じる時って、人の間にいる時ではないでしょうか・・・。
総合
星4つですね。面白い。
今回もトリックスター的な活躍をする沙姫部みさきを挟んで、カズヤとミオが試される事になります。
というか裏設定を無くして年齢設定をもっと上にして、普通の恋愛小説として書いてもちゃんと楽しめる作品になったような気がしますね。
まあミオという少女はちょっと男性には都合の良いキャラクターですが・・・その・・・自分が引っ掛かっているところを理性的にちゃんと説明してくれる辺りが、ですけどね。ラストの方ですが普通は、
「…………違う。あなた、何も分かってない……」
の一言で終了してしまって、あとは口聞いてくれないという方が多分リアリティはあるとは思います。
まあともかく、とんでもないところで続いているので、早くこの先が読みたいですね。カズヤがどうなってしまうのが、ミオはどうなってしまうのか、気になります。
ところでやっぱり「も氏」のイラストが作品にマッチしていて良いですね。カラーイラストも悪くありませんが、本編内の白黒イラストのイメージがとても良いです。カラーばっかり良くても、白黒イラストが良くないともの凄く興ざめだものね・・・。