世界平和は一家団欒のあとに（４）
| 世界平和は一家団欒のあとに 4 (4) (電撃文庫 は 9-4) | |
 | 橋本 和也 アスキー・メディアワークス 2008-04 売り上げランキング : 19254 おすすめ平均  家族小説は時に青春小説たりえるか 今巻は長女彩美のお話･･･弟は不器用な姉の背中を見て育つAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ストーリー
星弓一家はそろいもそろって超常的な能力を持った一家で、父ちゃん勇者、母ちゃん魔法使い、長女魔法使い、次女は超人、三女は回復役、次男は剛力・・・などとかなりの感じで普通の人間を超越している。とにかくこの世界からは「正義の一家」という役割を与えられているらしい。
主人公は星弓軋人（ほしゆみきしと）は、星弓一家の長男。なんとなくパッとしない能力を持っている、パッとしない少年だ。それでも時には家族と協力し、時には喧嘩なんかもしながら毎日を正義の味方っぽく過ごしている。
とりあえずここのところは平穏な生活を送っていたのだけど、長女の彩美の様子が最近おかしい。妙に泥酔を繰り返したりとか・・・と思って心配していたら、ある朝彩美の姿が小さな子供になってしまった！
家族中心ので語られるちょっと異能なライトノベル作品の４巻です。おお〜、順調な刊行ですな〜。
でも
この４巻は結構複雑な心境で読んでしまったよ・・・。
過去の彩美と現在の彩美が可愛ければ可愛い程、読んでいてなんとも言えない嫉妬心がメラメラとわき起こるのが困ったものです。
今回の中心人物は長女の彩美で、彼女の年齢は２５歳（だったかな？）な訳ですが、その彩美の過去の人間関係——というか恋愛関係——と平行して現在の物語が綴られる訳です。
・・・が、２５歳って私より一回り近く年下な訳ですよ。リアル２５歳の女性は私からすると眩しい少女のようなものでして、普通にカワイイとか思ってしまうんですね。
で、なんとなくこの彩美に元々好印象を持っていた訳ですが・・・その過去と現在の恋の話なんて二重の苦しみじゃねえかこの野郎！ うわーん！ という感じですね。
主人公の軋人くんからすればただの姉ですが、読者の私からすれば素敵な女性の一人なんよ！ そういう女性は世界の財産なので特定の男と恋に落ちていたりしてはイカンのです〜！ ・・・でも面白いんですけどね。
まあとにかく
今回は彩美が小ちゃくなってしまう事から大事になる訳ですが・・・こんな感じです。
「……彩姉ぇ？」
ようやく出てきたその名前に、女の子が、ようやくか、といった感じで不機嫌そうに、ふん、と鼻を鳴らす。
「そうよ。よくわかんないけどそういう——」
「……の、隠し子？」
百五十キロ近いスピードでウイスキー瓶が俺の頭めがけて飛んできた。
何故か１０歳位の姿になってしまった彩美です。
可愛いものに目がない母の志乃や、実は可愛いものが大好きの次女の七美のあれやこれやの暴虐（猫可愛がりされたり、可愛い服に強制的に着替えさせられたり）の仕打ちに耐えつつなんとかかんとか原因を探ろうとする彩美が健気で可愛いのです。
個人的に
お気に入りだったのは過去の彩美と軋人のエピソードですね。
「き……嫌われているんじゃないかなあって思って……」
姉ちゃん不器用過ぎ！ けど姉ちゃんカッコいい！ でもそれが可愛い！
「どうしてくれんだよ。あのときの背中追いかけたらこんなふうになっちまった。不良とか目つきが悪いとか、俺がこんな乱暴になったのは彩姉ぇのせいなんだぜ。きっと」
弟もいいヤツに育ったよな！ 姉と同じように不器用だけど。
総合
星３つ。
星が一つ下がっているのは私の嫉妬心によるものです。でもその嫉妬心による痛みが心地よいような気もするから不思議です。とにかく内容的には楽しませてもらいました。
それから１〜４巻まで毎回毎回ちゃんと登場しているヒロイン（？）の柚島香奈子ちゃんですが、今回は軋人くん絡みでなんともニヤニヤしてしまう行動をいくつかとってくれます。でも口絵カラー紹介イラストは一人だけ２色刷りなのがちょっと悲しいぜ！
あと、主人公の軋人くんがとにかく頼りにならないのがなんとも不安な感じです。もうちょっと彼に見せ場を作ってくれないと個人的にはストレスですね。普通の人にのされかかるというのは正義の一家の一員としては致命的では！？
