嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(5)欲望の支柱は絆

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 5 (5) (電撃文庫 い 9-5)
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 5 (5) (電撃文庫 い 9-5)入間 人間

アスキー・メディアワークス 2008-05-10
売り上げランキング : 24270

おすすめ平均 star
star著者らしい文章と内容
star壊れたまーちゃんはみーくんの夢を見るか
starおいおい。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ストーリー

みーくんは嘘を吐き続けて、
まーちゃんを騙してる。
でもちょっとだけ騙し損なって、まーちゃんが大破しちゃった。
みーくんはまーちゃんの修理のために、その材料を探して里帰りをするけど、あらあら、死体です。ついでに自分も殴られて意識を失ったみたいだ・・・。

かいけつ編

という事になるのだろうけど、読みやすさという意味では4巻に比べてアップしたかな。
それはなんといっても語尾につく「嘘だけど」が減ったせいなんだけど・・・この言葉があるお陰で私ゃまともに本編内で何が起こっているのか非常に把握し辛い状態になってまして・・・正直3巻ではかなり辟易としたものです。
ある種のキメ台詞である、

「嘘だけど」

ですが、それでも勝手に脳みそが反応してしまいます。結果として前の文章を否定すると、真実などなんだかどうでも良くなってきます。
登場人物が嘘を吐けば、作者も嘘を吐く、読者の脳みそも嘘を吐く、そもそもみーくんには嘘しか無いとなれば、一体何が真実なのか検討するだけ無駄という感じですね。叙述トリック・・・ではないですね。なんですかねコレ。
そんな塩梅だから「犯人はこの中にいる!」という状況であってもそれを楽しむ人も多くいると思うんだけど、個人的には楽しめなかった。
でもまあ4巻よりはマシですね。

でもねえ〜

正直最近このシリーズをどう評価したものか困ってるんだよね・・・。
つまらないという訳ではないんだけど、読んでいて楽しくない。強いて言えば「興味深い」になるのかな? 針が刺さった昆虫が死んでいくのゆっくりと眺めているような気分。
この話の登場人物は多かれ少なかれ壊れまくっているんだけど、なんだろ? この「壊れ方」に違和感があるのね。
例えば、人間100人がいたら100人全員が違う方向に壊れるのが当たり前なのだけど(台風が通り過ぎたあとの稲穂を思い出すと分かりやすいか?)、このシリーズの登場人物は全員程度の差こそあれ「みんな同じ方向に向かって壊れてる」のね。それがもの凄く違和感になってきてるんだな。
東西南北春夏秋冬あるとしたら、皆さん「北向き真冬」で壊れてる。乾燥して冷えてカサカサでガチガチなのね。それはおそらく語り部の「みーくん」がそういう方向に壊れているせいのような気もするけど・・・。夏が恋しい感じです。

この話の

ラストシーン付近では描写の面でかなり追いつめられた表現をしているんだけど、それもスルッと入ってスパッと出て行ってしまったなあ・・・。十分に「想像の範囲内」だったというのがありますかね。
良く考えたら前半部分から痛々しい描写の連続のような気もしますけど、なんででしょう? ちっとも痛くない。ミイラの足がもげても痛そうに見えない、そんな感じでしょうかね。
個人的にはもうちょっと生肉っぽさを出して、せめてみーくんをゾンビくらいまでしっとりとさせて欲しいものです。どうせなら瑞々しい臓腑が狂乱にのたうち、一歩歩く度に粘液が滴り落ち、蠅やら蛆が大量に集り腐っている様を見る方が楽しいじゃないですか・・・って俺の方がなんか変態っぽいな。

総合

星3つ。次は買わないかもしれない星3つです。結構ヤバい。
今回は柚々が可愛らしかったからまあ許せる所もかなりあるのだけど、それでも先を追うのが苦しくなってきたなあ。
元々ミステリーが苦手という事もあるんだけど、個人的にみーくんに興味が湧かなくなってきたし、どうしたって展開そのものにも慣れてくる。壊れている方向が同じなら、そういう方向の風が吹くと分かってしまうので備えも効く。強烈な匂いにだってそのうち鼻も慣れてくる、そんな感じでしょうかね・・・。
ある意味で、自分という読者がこの物語に対して「健全に飽きつつある」という事実に妙な安心感を持ったりしました。いや、危機感を持った方がいいのか? わかんねえけどさ!
そうそう、カバー裏の仕掛けも流石に刺激をうけなくなりました。「そこにある」のが確定しているものにどんな衝撃を受ければいいのやら・・・面白いを通り過ぎて陳腐さすら感じるようになりましたね・・・え、厳し過ぎ?

感想リンク