ANGEL+DIVE

ANGEL+DIVE (1) (一迅社文庫 (し-01-01))
ANGEL+DIVE (1) (一迅社文庫 (し-01-01))十文字 青

一迅社 2008-05-20
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おすすめ平均 star
starエピローグまで分からない展開
starもう書きなれた人なのでファンタジィーとか魔法とかどうかと思う
star裏表紙の作品紹介にだまされてはいけない。

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ストーリー

雪の降る街で彼らは出会った。
13歳の少年・日比野夏彦は廃屋でトワコと名乗る不思議な少女と出会う。それは起こってはいけない運命だったのか、あるいは定められた運命だったのか。いずれにしてもトワコは夏彦と出逢い、そしてその後姿を消した・・・。しかし夏彦は、トワコに惹き付けられ、彼女を探そうとする。
この夏彦の想いが新たな出会いを呼ぶ。学校で有名な美少女の双子・真鳥依慧/織慧(まとりよりえ/おりえ)と縁が生まれ、さらには幼馴染みの相良希有(さがらきょう)も夏彦を心配して付き添った。
しかし、トワコを探そうとする彼らの前に姿を現す二人の異国人。その二人には怪しい魔術の匂いがした・・・。
薔薇のマリア」の作者による新シリーズが堂々の開幕です。

薔薇のマリアを引き合いに出しましたが

前半キャラクターが出そろうまでは同じ作者の話だとは思えない所がありましたね。意識的に文字が暴走するのを抑えながら書いたんじゃないかと思いますが、非常に落ち着いた語り口で話が進みます。
その辺りはキャラクターにも強く現れておりまして、主人公の夏彦が非常に落ち着いた心の動きをする人物として書かれるせいもあるでしょう。

夢の中で、夏彦は穴の底に横たわっていた。
じっとしていると、穴の上から何かが降ってきた。
それは土のようだった。
ああ、ぼくは埋められるんだ、と夏彦は思った。
次第に身体を覆ってゆく土の感触はやさしかった。

彼が繰り返しみる夢、ということでこの描写があるのですが、彼は生きながら死んでいるようなものです。それは生気が無い、という事ではなくて・・・まるで妖精のようにそのままそこに居る少年です。

ただ

この落ち着いた雰囲気も真鳥依慧/織慧姉妹が現れると次第に十文字節とも言えるような怒濤の言葉による波状攻撃が始まります。
この姉妹にはかなり変わったところがありまして、それについては本編で確認してもらった方が良いと思いますが、とにかく変わってます。では姉妹と希有の順でちょっと順番に見ますが・・・。

依慧

登場人物紹介にも端的に表現される通りにS方向に偏ってます。

「オレには大事なものが三つあってな。一番は織慧だ。二番目はオレ自身。それから、三番目はオレや織慧が気に入ったやつだ。他はどうでもいい。クソ喰らえだ」

が・・・その後色々あってかなり可愛いところを見せてくれます。本当は引用したい文章が他にも沢山ある少女なのですが、もったいないので止めておきましょう。強いて言えばツンデレ系? ですが、ちょっと癖のあるツンデレですかね?

織慧

こちらも色々と事情がありますが、

「なつひこ、あたしの、ともだちよ」

こんな感じでかなりの癒し系です。訳ありの癒し系ですが・・・。

希有

ちなみに上の二人と(主に)依慧と衝突する事になる希有は重度の猫マニアであって、「猫占い」という必殺技を現時点でも持っています。将来の夢は、

「わたしも修行するつもり。立派な陰猫師になるために」
「はあ? 何だそのオンビョージってのは」
「世界は陰と猫、相反するふたつの要素でできている」
「それを言うなら陰と陽じゃねえのか」
「猫」

だそうです。・・・つまりはかなりの変人ですけど、憎めません。
というかここで紹介した3人の(美)少女たちは皆変人ですが、いずれも可愛らしいところのある魅力的な少女ですね。

こうして

見ているとまるでコメディですが、基本的に全編を通じてシリアスです。
とにかく主人公の夏彦がボケですが、それでも本人は至って真面目でかつ特殊な人格をしているためコメディ方向にずれていきません。ボケですが真っ直ぐに目的に向かって邁進する夏彦はもの凄く危うい主人公で、彼と親しい(親しくなる)少女たちじゃなくても放っておけない存在です。
そして特筆すべきはその視点の特殊さでしょうか。彼は人と違う物の見方をしています。それは一体どういう素質によるものなのかはっきりとはまだ分かりませんが・・・強いて言えば「求めていないから」でしょうか。

総合

おすすめの星4つ。
トワコとは一体何者なのか? というところを基本にして大人しめの展開で、次の2巻ではどうなるのかな〜なんて思いながら生暖かく読んでいると、ラストシーンでひっくり返されて続きが読みたくて仕方がなくなります。一体、一体何が起こったんですか!? という疑問で頭がいっぱいになって今晩眠れません。早く2巻が読みたいです。
しかし、そうは言っても時々物語の展開とか登場人物の運命に容赦というものをしない十文字青ですから、次の展開次第ではひょっとして放り出したくなる可能性もありますけど・・・多分読んでしまうんだろうなあ・・・という予感が今からひしひしとしますね。うーん、気になる作品がまた一つ出てしまった・・・。

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