黒水村
黒水村 (一迅社文庫 く 1-1) | |
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ストーリー
8人の生徒達と1人の教師がは列車に揺られて山奥のとある村を目指していた。名目は課外授業であり素行の良くない生徒を拾い上げようとする学校行事の一環であるが、そのため連帯感なぞ欠片もなく往路の列車の中から全員の心はバラバラであった。
その中の一人、立花玲佳だけは特に問題児という訳でもないのにこの行事に参加していた。彼女は将来小説家を目指しており、その為の取材旅行とするつもりだったのだ。
やがて一行は山間の人気の無い村へと到着する。その村の名前は庫宇治村と言った。過疎が進んだ結果なのか若者達の姿も無く、少ない老人達が村を守っていた。
不便な山奥の村の中で噴出する生徒達の不満・・・しかし、不便さなどを超えた得体の知れない”何か”がこの村には潜んでいた・・・。
ライトノベルでは比較的珍しいタイプのホラーをテーマにした作品です。
うーむ
ホラー・・・なんですけどちっとも怖くなかった。
ホラーというよりはホラー味にしたミステリと言った方が良いのかな? でもホラーであるからして論理的な解決なぞ望める訳も無く、結果として中途半端なものに仕上がっている感じがします。
ただ、読んでいて「これはホラーな感じ」と思ったのは「刈り取られる者」に心情的なご都合主義が全然ないところでしょうか。コイツはいいヤツっぽいから無事、コイツは悪い奴っぽいからダメ、みたいな予測が成り立ちません。そこは良かったですね。
でも
キャラクターにはあまり魅力が無いかなあ?
どういったら良いのか分からないのだけど、ライトノベルとしてはどこかしら致命的な欠陥がこの話にはあるように思う。でも一般小説としてもやっぱり中途半端かな?
この作者は「夜は一緒に散歩しよ」というハードカバーの本を出している人だけど(表紙の文字が特徴的なので知っている人も多いのでは?)、少なくともそちらを読んでみたいと思わせる程のものは無かったなあ・・・。
何が
足りないって言うかというと「情念」ですね。
別にそれはなんに対するものでも構わない訳ですけど、何かに執着する執念、妄念、怨念、邪念・・・まあなんでもいいですがそう言ったものがかなり欠落している感じがします。
起こっている/起こりつつある出来事は皆不気味で目を逸らしたくなるようなものばかり。でもそれだけではただグロテスクなだけで、恐怖はないんですね。グロければ怖いかというと・・・それが「NO」なのはアメリカ産のB級ホラー映画辺りがしっかりと証明済みだと思うので、これ以上改めて言及する気はありませんが。
総合
ギリギリで星3つ・・・かな。
色々と作り込まれている不気味な舞台装置はとても興味深いと言えるのだけど、舞台の上で演じる俳優達は全て今イチという感じですね。いや・・・俳優じゃなくて演出がヘタなのかな? とにかく装置に凝ったけれど、作品がそれに負けてしまっているという印象が拭えないです。
ただ、装置はとてもいいので次に期待できるところもあるかな〜という事で星が3つになっています。なんとも複雑な心境ですが。
ところで、非常に残念だったのはイラストで、一定の役割を果たしている口絵カラーはまあ許しますけど、本編内のイラストは作品の魅力をスポイルしっぱなしです。これじゃホラーもなにもあったもんじゃありません。もうちょっと絵にするところを考えて欲しいですねぇ・・・。