アスラクライン(10)

ストーリー

世界の秘密に肉薄している存在であると思われる人物・環緒夏目智春の前に遂に姿を現す。そして彼女の口から語られるこの世界の真相。
その真相を知る故か、あるいは他の理由もあるのか・・・何者かに狙われている環緒を守って智春たちは今回も操緒や嵩月と一緒にノンストップとも言えるアクションに身を委ねていく事になる。
そしてその戦いの果てに姿を現した夏目智春の兄である夏目直貴・・・物語は遂に真実へと迫り、そして大きな転換点を迎える。
一つの節目とも言える10巻に到達したシリーズです。

・・・が!

私はこの10巻をもってこの「アスラクライン」シリーズに見切りをつけました・・・。
以前から感じていた

「一度完成させたスープを水増しした結果、巻数が増えてる」

という印象ですが、今作の大きな変化をもってしてもその感覚を拭う事が出来ない事に気がつきました。
というか、今作のラスト近くで語られる物語はほとんど「ちゃぶ台返し」とも言えるような展開です。そこに私は全く楽しさと今後への期待を持つ事が出来ませんでした。
え〜、なんですかねこの感覚は・・・そうですね、「殺×愛」の最終巻で味わったあの感覚に似ています。

そうなると

やっぱり今までの話の筋は8割位は余談だよな〜という事になってしまって(ラストでもう一度くらいどんでん返しがあってもおかしくないですが)、もうやってられねえという気分になりました。
どんでん返しは・・・上手く使ってくれれば「やられた〜! でも超気持ちいい〜!」という感じになりますが、私からすると水増しされたように感じられるこの物語には、このどんでん返しを受け止めるだけの土台が感じられませんでした。うん、全くと言っていい程。
キャラクターとかの作りは良いので今後も読み続ける事は——やろうと思えば出来ると思いますが、読んでも仕方が無さそうだなあという感じです。
そうですねえ・・・例えるなら、

「私が飲みたいのはあくまでしっかりとした物語のスープであって、薄めたスープの中に入った濃い味付けの具じゃないんです」

・・・という感じでしょうか。

総合

星2つ。さようなら。
確かに物語は大きく動く事になりましたが、もう思わせぶりな展開に正直ウンザリしました。正直に物語を追いかけたら、ここの展開に至るのに5〜6冊で行けたんじゃないですかね。
というかもっとぶっちゃけると私はこの三雲岳斗という作家のシリーズ作品にはもう手を付けないと思います。1巻完結とかなら別ですが。作者によるとやっと「折り返し地点」らしいですが・・・これはもう無理だわさ。
つまりこれは、作者のストーリーを語るスピードと、私のストーリーを追いかけるスピードの違いが徐々に徐々に出てきて、遂に10冊目にして私が作者のスピードを抜いてしまったというという感じなんでしょうね、きっと。無理に歩調を合わせてまでして楽しもうとするもんでもないですよね、読書って。
ただ、別に速い方が優れているとかいう話ではないんですけどね。この作者のスピードが心地よい人も沢山いるでしょうし・・・これはもう単に相性なんでしょうね・・・。10年連れ添ったけど離婚、みたいな!?

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