サーベイランスマニュアル(2)

サーベイランスマニュアル 2 (GA文庫 せ 1-2)
サーベイランスマニュアル 2 (GA文庫 せ 1-2)真田 茸人

ソフトバンククリエイティブ 2008-06-14
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ストーリー

山咲亮輔は1年前まではただの大学生だった。
しかし今では違う。通称「センター分室」と呼ばれる政府の施設である意味において重要と思える立場を持って働いている身でもある。それはサーベイランスと呼ばれる仕事。特定のウイルスの感染者たちを監視しつつ世話をするという重要な仕事だった。
そのウイルスは、レックスと呼ばれる特殊なウイルス。感染者たちは一様に異常な細胞の変化を遂げ、遂には人の姿を失ってしまい一匹の獣となってしまうという病。亮輔はその感染者たちの世話をしており、そして迫害されている感染者たちの大事な理解者でもあった。
ある日、彼と、彼をこの世界に導き入れる切っ掛けになった事件に大きく関わっていた年齢不詳の女性・(ねい)が、一匹の獣を見つける。それは彼女はその獣がレックスの感染者だと見切ったからだったが、その獣——(のぞみ)が持っていた二つのアンプルが一つのトラブルを持ち込んでくる・・・。
1巻が面白かった為に期待していた2巻です。

うーむ

表紙とカラーイラストはもうちょっと何とかならんかったか。
この話、実はもの凄く基本シリアスで話が進むんですよね。表紙絵のようななんかプリプリロリロリなノリや、口絵イラストのようなサービスカットなんて数える程・・・というか一瞬しかないという感じなんですね。
何しろ人の命を奪うウイルスとその感染者という、正面から扱えばシリアスにならざるを得ないテーマを取り扱っているからですが・・・口絵だけ見るとなんかお色気ライトノベルみたいですよね。違うんですが。

まあ

愚痴はこの位にして肝心のストーリーの方ですが、1巻の物語の1年後の話となっています。基本的に1巻のラストシーンからそのまま話が繋がっていると考えてもらっていいですね。
1巻は大男であるレックスの感染者・(ともえ)メインの話という事が出来たと思いますが、この話ではまた別の人物の秘密にスポットライトが当てられて話が作られる事になります。
ちなみに1巻で飛び回っていたレックスの感染者である少女・はすっかり亮輔に懐いていて可愛くなっていますが・・・うーん、設定によると16歳らしいですが、性格的にはまだまだ幼さが目立ちますねぇ・・・過酷な生活を送ってきた経験があるので、一端真面目になるととても出来る娘ですが。

また

今回から「センター分室」周り・・・というか政府側のレックスに対する怪しい動きが目立ってくる事になります。
それと一緒に未だに眠り続けている亮輔の姉である朝緋が入院先の病院から消えるという事件も平行して発生し、さらにはマスコミにレックスの存在が嗅ぎ付けられるという事態にまで発展し、センター分室は大騒ぎの様相を呈する事になります。
こうした事件を前にしてまたしても自分の力の無さにうちひしがられる亮輔ですが・・・彼は確かに落ち込んだりもしますけど、本当に良い若者だと思います。

(だけど、本当は俺の方こそ助けられている)

レックスの感染者たちである寧や巴や宝を前にして、彼はそんな風に思います。1年前何もかもを失うような事態に直面しながらも、自分が未だに立っていられるのは明るく強い彼らに助けられているからだと。
また、彼は別の局面である問いにこう答えています。

「この世にいつまでもレックスをのさばらせておくわけにはいかない。どうしてそれがわからないんですか。あなただって、罹患する可能性があるんですよ」
「それは、自分可愛さに、罪もない誰かを見殺しにするってことですよね」

「ひとりを殺してたくさんを助けるっていうこと、……理屈はわかります。でも、俺にそれはできない。ひょっとしたら誰かがやらなきゃいけないことなのかもしれません。けど、サーベイランスの仕事は、レックスで困っている目の前のひとを助ける仕事じゃないかって思う。人の死を……他人の人生を決めつける権限なんて、本当は誰にもありません。それじゃ単なる数の暴力だ」

いかにも青臭くて、袋小路にいつか迷い込んでしまいそうな亮輔の思想ですが・・・それがとてもいいですね。人間的で。この話の魅力は理想主義者とも言える亮輔の魅力でもあります。

総合

星4つですね。1巻と同じ水準で楽しませてもらいました。
どうも本作では色々と伏線が貼られる事になりまして、この後続くであろう3巻に回される部分も多いです。でもそれが逆に妙にホッとしてしまったりして・・・だって3巻が一応出る事が前提になっているって事ですもんね。
また、この話のラストで亮輔は自分の生き方をまた変えていく事になりそうな出来事に遭遇する事になりますが、その辺りが今後どうなっていくかも興味津々ですね。

感想リンク