明るい家族砲計画っ!

明るい家族砲計画っ! (ファミ通文庫)

明るい家族砲計画っ! (ファミ通文庫)

ストーリー

新城拓真(しんじょうたくま:15才)はどこにでもいそうな高校生の一人であったが、ちょっとだけ変わったところもあった。
それは彼に一人の幼なじみがいたためである。幼なじみの名前は神崎美奈(かんざきみな:15才)。家はお隣さんで生まれてこの方ほとんど離れて暮らしたことが無く、家族同然とも言える完璧なる幼なじみであった。
もう昔からのつきあいになるため、学校に持って行くお弁当を交代で作ったり、手を繋いだりする位ではもはや全くと言っていいほど意識しないで済む存在となってしまっていた・・・多分、お互いに。
しかし、そんな拓真の元に一つの大きな宅配便が届けられたことによって事態は急変する。荷物は・・・巨大な卵。
卵についていた何やら怪しげな「インタラクティブ説明書」とやらの指示に従うままに卵を暖めた拓真の前には、今、全裸で彼を「パパ♪」と慕う少女・ヒカリが誕生していた・・・。
卵から始まる恋愛もある・・・のかどうか分かりませんが、とにかく変なSF的な仕組みを元に作られたアヤシゲなラブコメ作品です。

危ないタイトルだ・・・

「砲」の文字が少しずれると大変な事になる作品ですね。
一応タイトルは「明るい家族砲計画っ」なので、文章構造を分解すると、たぶん・・・

  • 「明るい家族砲」+「計画」

であって、家族砲という物があって、それを使った計画となりますが、これは一歩間違って「明るい家族計画砲っ」だった場合、

  • 「明るい家族計画」+「砲」

となって、多分これってチンコの事じゃあるまいか? という感じになってしまう。いやはや、なんとも危なげなタイトルであるね。まあでも、そのタイトルにつられてつい買っちゃったんだけどさ・・・。

内容の方は

タイトルから受ける印象そのままで、明るいラブコメ作品だと思ってくれて間違いありません。
簡単に言えば、お互いに意識しないできてしまった仲良しの幼なじみ同士が、ちょっとした別勢力の介入によって状況を動かされ、お互いを特別な存在として意識し始める・・・というある意味で王道と言えそうな作品です。
そもそも、意識し出す前の彼らは学校の教室で昼休みに、

「あ、いけね」
美奈のほうの弁当を見ていて、拓真は気がついた。
「おまえのほう、唐揚げ、一個多くしちまってた」
「ん?」
口の中をいっぱいにして、美奈が顔を上げてくる。
「んじゃ、はい。——あーん」
美奈が箸で唐揚げを一個差しだしてくる。拓真は口を近づけて、唐揚げを受け取った。

これが高校生の男女が日常で平均的にやっていることだとしたらそれは通常はつきあっていると考えるのが妥当で、しかも相当なイチャつきっぷりということになりそうですが、彼ら自身はそれが全くもって「当たり前」に成りはてているという困った少年少女です。もう老成してますね・・・。

しかし

そんな状況を壊してくれるのが卵から生まれた自称拓真の娘のヒカリで、まあ色々と言ったりやったりと状況をかき混ぜてくれます。

「ぼく〜……、生まれました〜……、愛娘〜……、はじめましたぁ〜……、パパぁ〜」

そんな冷やし中華みたいに始められても。
また、彼女は未来からやってきたらしく、未来から来た人間にしか知らない情報を持っていたりします。

「やだなーもうっ。パパったら、ママの名前忘れるなんてー。決まってるじゃないのー。”美奈”でしょ」

男女関係に目覚めていない青少年にはキッツイ一発ですね、この発言。何しろ基本的人権2.0とかがある世界からやってきていますので、何やら色々倫理観とかも違いますが、まあ悪い子ではありません。

それに加え

もう一人重要なキャラクター(?)と言えそうな存在が今して、それが「インタラクティブ(対話的)説明書」です。
喋ったりこそしませんが、その中に書かれる内容は拓真の思っていることに反応して刻一刻と内容を変えていき、まるで一つの人格を持っているように振る舞います。いえ、ひょっとしたら持っているのかも知れませんが・・・。

『取り扱い方法:ホットプレートに載せてはいけません。家庭用の大鍋で煮てもいけません。風呂に沈めてもいけません。(※注:「風呂に沈める」は本来ヤクザ屋さん用語で意味が違います)』
「な……、なんだ、これ……?」

「なにが言いたい?」
『やっちゃってもOK』
拓真はライターを手に取った。しゅぼっと、火をともす。
『うそうそうそ』

こんなの説明書じゃねえ! ・・・とは言っても「インタラクティブ説明書」なんだから仕方がないのか・・・? とにかく彼(彼女?)はこの物語における重要なキャラクターですね。説明書ですけど。

総合

安心して楽しめるラブコメとしての星3つ。
あまり驚きの展開とかはありませんが、キャラクター達の心情描写がなかなか巧みで楽しませてくれます。ほどよく用意されたなんかの陰謀の匂いも悪くないですね。
果たしてヒカリという闖入者の出現によって万年幼なじみの二人の関係がどう変わっていくのか、その辺りを楽しみながら読み進めるといいんじゃないかな〜なんて思います。
イラストは作風に合っていてなかなか悪くないと思います。個人的にはもう少し・・・その、なんだろ? なんか本編イラストがもう一押し、その、うーん? 動き・・・いや違うな・・・エロ・・・でも無いな・・・。なんかが欲しいところです・・・なんだか分かりませんけど。あ、カラーイラストは良い感じですね。