スクランブル・ウィザード

スクランブル・ウィザード (HJ文庫 す 3-1-1)
スクランブル・ウィザード (HJ文庫 す 3-1-1)かぼちゃ

ホビージャパン 2008-07-01
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ストーリー

世界には、魔法の才能を持った人間が僅かながらに存在した。
魔法を使える人間は政府によって管理され、国の財産として扱われ、重用された。しかし、そんな人間達の才能という先天的な「差」は社会に新たなゆがみを作ることになった。魔法が使えるものと、使えないもの。その差から来る差別——。
さほど表面化しているとまではいかないものの、魔法を使える人間である「魔法士」と「そうではない普通の人間」という違いから来る違いは今や魔法を使える人間に対してのテロリズムという形で社会に存在していた。
そんな中で魔法士として活躍する一人の若者がいた。名を椎葉十郎(しいばじゅうろう)。魔法士として政府に勤める立場だったが、仕事で簡単なミスをしたことをきっかけに田舎の魔法士養成施設の教官として一時的に送り込まれたのだった。同僚の能勢和希(のせかずき)とともに。
彼らの田舎での教官暮らしはつつがなく過ぎ去るかと思われたのだったが、なんの因果か彼らの赴任した養育施設がテロリストによって襲撃される・・・。血なまぐさい気配を強くする地方の学園を舞台に繰り広げられる魔法戦と、若者達の生き方を描いたライトノベル作品です。ノベルジャパン大賞<大賞>作品だそうで・・・。

うーむ

これが<大賞>か〜? という疑問を感じつつも、なるほど<大賞>って感じかもな〜という本ですかね。
正直に言うと、見所というか「ここが凄い!」というポイントは無い、と言ってしまっていいような気がします。魔法に関する設定はどうもまだまだ練り込みが足りない印象がありますし、キャラクターの魅力という意味でもその表現に完全に成功しているようには思えませんし、また話の展開にもまだまだ面白くできる余地があるように思います。
でも、どのポイントも「ちょっと目を瞑ってあげれば」欠点という程ではない。まあ、及第点は上げられるかな? という出来なんですね。結果として「凄く良いところ」は無いけど「凄く悪いところ」も無い・・・ある意味では平均よりちょっと上くらいでバランス良く書かれている感じがします。

そうですね・・・

何か切り込んでこの話の感想を書こうとすると、どうしても批判的な内容になりそうです。
主人公の性格はあのライトノベルから取ってきてちょい厳しめにして(姉を追ってというのがまた)、戦闘スタイルもあのライトノベルから取ってきて(派手さが無いところがまた)、特技については今度アニメ化するあれからとってきて(やっていることは同じかな〜?)、という感じになってしまいますね。
強いて言えば二匹のハムスターに関する所はなかなか面白かったですけどね・・・これも元ネタがあったりして・・・。

でもまあ

暇つぶしに(内容とか設定にケチをつけつつ)読む分には楽しい本でないでしょうか?
いや、上の一文はちょっと酷い書き方になってしまっていますけど、それなりの水準で安定した筆運びで作品が完成されていることは確かです。・・・じゃないと設定とかにケチすらつけられず「途中で読むに耐えずに放り出す」という事になりますからね。
最初読み始めれば同じペース、同じ気持ちの持ち方で最後まで読める「良いライトノベル」と言っても良いかもしれません。うん、少なくとも最後まで読む気にはなりましたからね。

総合

期待をこめて星3つ。
まだまだ甘いと思えるところがあるのは事実ですが、時間と手間と経験を積めば埋め合わせが出来そうな部分ばかりのように思えますので、今後には期待が持てそうです。
この手の新人さんで一番致命的なのが「キャラクターを魅力的にかけない/作れない」だと私は思っているんですが、その部分については平均点をクリアしていると思えましたので、もし続きが出るようなら買ってみようかな〜とは思いましたね。うん。
でも・・・いつも思うんですけどHJ文庫の絵師さんはどーもぱっとしませんねえ・・・一番最初の方のヒロイン(12才!?)・雛咲月子のイラストから始まって、最後までイマイチぱっとしない絵が最後まで続きます。カラーイラストの出来はなかなかなんですけどね・・・。
たまにいますね、カラーは良いけど白黒がダメっていうイラストレーターさん。いや、この絵師さんの場合はカラーとモノクロの絵の出来の差が大きすぎるんですね。白黒になると表現力が8割くらい減ります。うーむ・・・。

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