さくらファミリア！
| さくらファミリア! (一迅社文庫 す 1-2) | |
 | 杉井 光 一迅社 2008-07-19 売り上げランキング : 499 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ストーリー
祐太少年の父親は魔術師だった。
でも借金作って失踪した猛烈ダメ親父だったので、祐太少年はたくましく生きることを決意する。父親の残した債務が自分の肩にのし掛かろうとも、自分には関係ござらんとばかりに借金を踏み倒す気満々だったのだ——！
父親の失踪後も何食わぬ顔でそのまま高校生としての生活を続行しようとしたのだが、そんな彼の元に二人の少女が訪れることで話は複雑さを増す事になる。その少女とは砂漠谷エリ・レマ姉妹。彼女たちは何故か自分たち、そして祐太を「昔の有名人の生まれ変わり」だと言い張り、その結果として命をつけ狙ったりするのだった・・・。
そしてさらに状況を混沌とさせるようにさらに二人の女性が現れる。借金が消えるわけでもないのに混乱の度合いを増す祐太の生活。しかも借金をした相手である「三十銀貨財団」からは日々怪しげな催促が行われることになるのだが・・・？
神も仏も巻き込んで行われる「Life is Money」な新シリーズ・・・これは流石に杉井光ファンの私もついて行くのが大変な物語だ〜！？
いや〜
吹っ切れてますね。いい方向なのか悪い方向なのかさっぱり分かりませんが。
この作品が「神様のメモ帳」と同じ人間によって書かれた作品だと納得するのにちょっと時間がかかってしまいました。その位にはいい加減なコメディ方向に羅針盤が曲がってます。
この話はキリスト教という宗教のネタが色濃く出ていまして、さらにはそれを説明しやすくするために太宰治の「駆け込み訴え」というイスカリオテのユダの告悔をネタにした本まで持ち出して状況をイメージしやすく説明してくれたりします。それはこんな感じのものです。
「ユダがうざい。考えてることがころころ変わって、あと、なんか主のこと愛してるの愛してないのって、そのへんがほんとに気持ち悪い」
「うーん、そうかもしれません、でもね祐太くん」
布団の中に引っ込んだぼくの頭を、父の手がぽんぽんと叩く。
「よく宗教画にあるような、あのひげ面のやせたおっさんなら、たしかに気持ち悪いかも知れません。でも、もし神の御子が可愛い女の子だったどうですか？ ユダの気持ちも少しはわかるんじゃないですか」
なに言ってんだこいつ……。
「お父さんは、もしそうだったら正直かなり興奮します。ああ、いけません、ちょっと血が集まりすぎて気持ちが悪くなってきました」
いい案配で親父のダメ加減（こののち失踪）とこの作品のテイストを説明できる文章があって良かったです。
つまり、祐太のところに訪れた少女二人（こののち来訪）とは神の御子の生まれ変わりの少女であり、祐太はユダの生まれ変わりだったと——そういう設定です。
はい、これだけでもかなりのアレな設定ですが、序の口ですので安心して下さい。そのうち何も感じなくなります。多分、天使ガブリエルがおっぱいばいんばいんのお姉さん姿で登場するくらいで。
あるいはキムチの空き瓶につめられた召喚悪魔が「メシ、メシ」と騒ぎ出す辺りかも知れません。
とにかく
ひたすらおバカです。
『担保に祐太さまが含まれていることは、ご確認されていませんか？』
「い、いや、見ましたけど……人身売買は犯罪ですよ？」
『はっはっはっ、平気ですよ。祐太さまには気持ちよくなるお薬各種を投与し、落札者さまと三週間ほどみっちりたっぷりねっぷり同居していただいて、警察になにか訊かれても「お兄ちゃんは悪くないの！」としか答えないようになっていただきます』
「この本が出版されなくなるかもしれないから、そういうネタはやめてください……」
これが「三十銀貨財団」からの取り立ての電話です。緊迫感はゼロですが、出版的な意味で際どいです。
「よーしそろそろ弱ってきたかなー」
ガブリエルさんは湯煎にかけていた瓶を引っぱり上げる。熱で中の悪魔をじわじわいじめて弱らせてからだと、地獄に追い返すのが楽なのだそうだ。
ちなみにガブリエルは性教育係・・・じゃなかった聖教育係です。この誤字は本編からのものですが、色ボケです。時々真面目ですが、もうひとりやって来ることになるの美幼女でしかも悪魔であるところのるーしーちゃん（本名が何かは大体分かるよね？）の方がなんぼか真人間・・・というか真悪魔です。
「あ、こら、ばかもの、くすぐるな、ずるいぞ、るーの方が腕が短いのに！ 離せ！ 高い高いをするでない！」
ロリ属性の人にはお勧めです。ちなみにガブリエルはるーしーちゃんマニアの変態でもあります。病んでるキャラクターばっかりだ・・・。
まあこんな案配で悪魔やら取り立てやらありますが、緊張感ゼロどころかマイナスなので安心して楽しめます。
「魔王サマァアアアアッ」
「魔王サマァアアアアア愛シテルゥウウウウッ」
「魔王サマァアアアアアアロリィ身体ァアアアア好キィイイイイッ」
もうだめだ、この話・・・。
総合
星３．５だけどまあ・・・３つ？ 次が出たら買うけどね。
物語自体はまあ借金返済と取り立てのためにぐるぐるごーごーと回っている話であって、適当な感じでそこに集中します。
色々と陰謀もあったり無かったりするんですが難しく考えずにキャラクター同士のアホ丸出しの会話やら、ホームラブコメ的なこっぱずかしい会話やトラブルやヌードイベントなどを楽しんだりしていれば気がつくと読み終わる本です。
話的に大事なのは「ユダの死因」なんですが、その死因が大事になってくるのも借金の取り立てをチャラにできるかも・・・？ という腰砕けの理由だったりします。真面目に考えずに読み進めるのが吉ですね。そうですねえ・・・例えば初期の「いぬかみっ！」的な感じで。
イラストはゆでそば氏です。絵柄は個人的に好きですし、白黒もカラーも悪くないですが、キャラの立ち絵とか顔アップしかないのが微妙ですね。次の話が出るのであれば、もうちょっと奥行きのあるイラストを描いて欲しいとか思いました。
