アキカン! 6缶めっ

アキカン! 6缶めっ (6) (集英社スーパーダッシュ文庫 ら 1-7)
アキカン! 6缶めっ (6) (集英社スーパーダッシュ文庫 ら 1-7)藍上 陸

集英社 2008-08
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ストーリー・・・というか。

今回はどう読み返しても短編集の装いなので、この「アキカン!」という頭の炸裂した物語の流れを知りたければ既刊を読んでもらうしかないという感じではある。
とにかく主人公の大地カケルが相も変わらず悪ふざけの果てに脳汁が垂れているようなセリフを吐き散らし、メロンは相変わらずツンデレ気味で、5巻から仲間になったしるこは幼女的な可愛らしさを炸裂させ、エールは天然な魅力を全開にして、なじみは幼い日の思い出について語ったりするという、完膚無きまでの短編集である。
個人的には短編集というと当たり外れが大きいという印象なのですが、結構お買い得感がありますねコレ。つーか本当にこんな話アニメ化するのか・・・? つーかアニメ化、出来るのか・・・?

とにかく

短編集であるからして、それぞれ繋がっているようでいて繋がっていない話が4本程載っています。
なぜ4本「程」という妙な文字が入っているかというと、どう考えても短編未満の話が短編の間に一つだけ喰いカスのように挟まっているからですが・・・って、なんだかその短編の主人公が可愛そうですなあ・・・表紙にまでなったのに、この扱い・・・。ま、正直どうでもいいけど。
まあ細かい事は置いておくとして、各短編の簡単な紹介をば。

エールのお話

なじみのアキカンであるエールの魅力が炸裂している一作です。
その話の中心にはカメが存在している訳ですが、いわゆるそれは男の股間についているものとは一切の関係がないので、エールファンの人も安心です。

「…………」かくっ。とエールが首を傾げる。
『…………』ぬぅう。とカメが首を伸ばす。
「…………」こくこく。エールが頷く。
『…………』くわぁっ。カメが口を開ける。
どうやら心を通わせているようである。

・・・あの、私が言っても何の説得力もないですが、は虫類って可愛いですよね・・・。
個人的にはリクイグアナとかが大好きだったりするんですが、世の中の軟弱な女共は犬やら猫やらといった分かりやすい可愛らしさを持っている生き物にしか大抵興味を示さないので、は虫類好きでも男女交際にはなんら得がないのが悲しいところです。まあ確かに千石先生は絵的にちょっとどうかと思う訳ですが、この話と全く関係のない感想になってしまいました。
とにかくエールが可愛いですよ。うん。

塔堂拳介と舞のお話

3、4巻の中心人物の一人で、カケルのライバルでもあった塔堂拳介が、再び死地に挑む青春巨編ですね。短編なのに巨編とはこれ如何に。

きっと長くは生きられない。こんなことを続けていたら。
しかし俺は行かなければならない。戦わなければならない。

まあどんな死地に赴くのかは本編で確認してもらった方が良いと思います・・・うん、細かく説明するとこの本の購買意欲が下がりそうだし・・・。いや、でもこの話も面白かったんですな。なかなかな良作です。
ちなみに塔堂のアキカンであるの猟奇的な行動(塔堂の見解)などが事細かに描写されたりするサイコホラーっぽい作りになっています。

  • 朝のメイク時間が長くなり、メイク姿を見られたがらなくなった。奇妙な顔で化粧をしていると思われる。
  • プロレスにハマったか関節技に目覚めたか、ベッドでやたらと絡んでくる。
  • 俺(塔堂)に隠れて台所で野菜などの植物を切り刻んで焼却処理などを繰り返している。何かの実験ではないか。

などなどです。恐ろしいですね。こんな少女と一緒に暮らしている塔堂の心境は如何ばかりか・・・塔堂なんて死ねばいいのに

天空寺なじみのお話

あの富豪も富豪で、何故か「へけけっ」と笑う天空寺なじみの幼き日のとある一日を描いた作品です。
ちなみにカケルとなじみの出会いを描いた作品でもあるんですが・・・これは素直に面白いと言える作品ですよ。同作者の「Beurre・Noisette 世界一孤独なボクとキミ」にあった空気をこの「アキカン!」シリーズに持ち込んだような、なんとも言えない優しい雰囲気のある話です。

何故このわたしがこんな庶民の学校にいなければならないのか本当に疑問。お父様のせいだ。あの人が、わたしをこんな庶民の学校に入れるから。昔の偉い人の真似をして、お金持ちのくせに、子供は庶民の子と一緒に勉強させた方がいいだなんて言うから。
考えられない。こんなのと肩を並べて勉強するだなんて。不快も不快。

なじみって昔はこんな感じのお高くとまった少女だったんですなあ・・・。
でも、そんななじみが少し変わる切っ掛けを手に入れる話です。車での送り迎えじゃなくて歩いて家まで帰ったり、突然の雷雨にうたれたり、水たまりで泥だらけになったり、途中で駄菓子を買い食いしたりして・・・。
そして彼女の頭には幸せの「アホ毛がピョコン! と立つのです。

メロンのお話

炭酸成分と同じ位ツンデレ成分を豊富に含んだアキカンであるメロンのお話・・・なのかな? ほとんどオールキャスト出演で話が進みますけど。
まあメロンのお話といいつつもカケルのお話でもありますかね。なんというか二人は切っても切れない関係であるのは事実なんで。結果としてメロンとカケルの変なトークが炸裂し、よく分からない難癖をお互い付けたり付けられたりしています。

「お前はあれか!? 三度のメシより恋バナとかスキャンダルが好きな女痴高生か!?」
『女痴高生ってなによ!?』

進歩がないというか進歩したから今現在はこうなっているんだというか・・・なんとも言えませんねえ・・・。
ところで5巻で登場したしるこも相変わらず元気にしていて、短編の中でしるこは宇宙人による恐怖のキャトルミューティレーションの真相に肉薄したりします。多分。

総合

星4つだな〜。どの話も読み応えがありました。
相変わらず作者は変な方向に暴走していますが、よくもまあこの刊行ペースを守りつつ、変な脳波を出しながら文章を書けるもんだなあ・・・と感心したりします。
確かに温泉卓球でマジになられても困るというその気持ちは痛いほど分かりますし、その事については全面的に同意するものであるのですが、ここでそんな事書いてもまだ読んでいない読者には一体何のことだか分かりません。
しかも下手するといきなり温泉卓球の事について書き始めた私の脳みそが疑われる事になりかねないのでこの位にしておきます。何かが湧いているとしたら私じゃなくてこの本の作者です。うん。

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