緋弾のアリア

緋弾のアリア (MF文庫J)

緋弾のアリア (MF文庫J)

ストーリー

東京武偵高校というどうにも穏やかではない学校があった。
なにしろその名の通り「武偵」という特殊な仕事につくための人材を育成する学校なのだ。その特殊な仕事とは——その名の通り情報を扱う探偵に始まり、火器や刀剣類を使用した強襲や迎撃行ったり、警察顔負けの鑑識を行ったりという「資格さえあれば」超法規的な活躍を可能とする「武偵」が集っているのだった。当然在学中に死者が出たりもする過酷な学校だ。
そして、遠山キンジは、何を間違ったかそんな武偵高校に通う2年生だった。しかし、武偵高校の血なまぐささに嫌気が差して、普通の学校に転校する事を計画している生徒でもある。そもそも、自分の特異体質のことも気になっていたし・・・。
そんな訳でキンジは転校のために着々と日々を送っていたのだが、彼の前に突然一人の少女が降って湧いたのだ。もちろんとんでもないトラブルと一緒に。その少女の名前は・・・神崎・H・アリアと言った・・・。
アストロノト!」シリーズを書いた作者による新シリーズです。

うーむ・・・

キャラの立て方は相変わらず上手いというか、一言二言でそのキャラクターの在り方というか、位置づけを読者に分からせるところは流石な感じはしますね。例えば・・・

「あ、あの。でも私、昨日まで伊勢神宮に合宿に行ってて……キンちゃんのお世話、なんにもできなかったから」

なんて感じですね。
これは登場人物の一人・星伽白雪(ほとぎしらゆき)のセリフですが・・・これで巫女さん衣装という絵面とプラスになってもうどういう人物だか分かりすぎるほど分かります。
まあ、そのさじ加減が行きすぎになると、極端なキャラクター作りという感じになってしまうんですが、ライトノベルとしては十分許容できる感じに作られている感じですかね。

ところで

前のシリーズでは主人公に「恋する共感」という不思議な力を持たせて、それによって物語を大きく動かす事に成功していましたが、今回も同じようにちょっと変わった力を主人公に持たせています。
作中では「ヒステリアモード」と言う風に呼ばれていますが、簡単に言うと普通の高校生が007になってしまう能力ですかね? その切っ掛けがまた美味しく設定されていまして・・・つまりまあその、性的刺激によって変身してしまうのです。
ちょっとエッチな事を切っ掛けに普通の高校生が

「強い子だ。それだけでも上出来だよ」

とか、

「ご褒美に、ちょっとの間だけ——お姫様にしてあげよう」

とか言うようになってしまったりします。

ちなみに

ヒロインのアリアですが・・・一言で言えば気の強いフリをしているか弱い女の子という感じでしょうか。
小柄で一歩間違えると小学生と勘違いされるような少女ですが、行動力と勇気を併せ持っている少女ですね。ただちょっと頑張りすぎている関係で、どうしても危うく見えてしまうところのある・・・強いて言えば「放っておけない感じ」がする少女ですね。
時に銃を振り回しながら、

「風穴あけられたいの?」

とか言ったりしますが、やっぱりか弱い女の子なのは確かでして、

「な……泣いてなんか……」
というアリアは歯を食いしばり、きつく閉じた目から涙を溢れさせ続けていた。

こんな風な一面も見せてくれます。うん、普通に可愛らしい女の子ですね。ちょっと過激なところを除けば「純情可憐」という言葉がそのまま当てはまりそうなウブな女の子です。

ただ

全体の展開でみるとちょっと性急な感じがするかな〜? というのが本音ですね。
なんとなく性急な感じがするのは前シリーズも同じでしたけれど・・・今回の方が急ぎすぎているような気がします。理由ははっきりとは分からないんですが・・・ファンタジー作品ではなく基本的に現代日本が舞台になっている関係で、ムチャがムチャと分かりやすくなってしまっているとか、あるいは1巻時点での登場人物が前より多くなっているとか、そう言った微妙な差が影響していると思います。
まあでも前のシリーズを読んでいて、同作者のリズムを覚えている人ならなんとかついて行けるのではないでしょうか。ただ、今回が初めてという人はちょっと厳しいかも知れませんねえ・・・。
個人的にはもう少し落ち着いて展開を描いている作品の方が好みですね。

総合

星・・・3つかなあ?
作者に「ジェットコースターライトノベル作家」と言う二つ名を付けてもいいくらいのスピード感は健在ですね。そのスピードを心地よく思えるかどうかでこの作品に対する評価は変わるんじゃないでしょうか。
私は上でも書いたとおりもう少しゆっくりした展開が好きな事もありますのでこの評価になっていますが、話の作り方やちょっと読者を引っかけるような展開はなかなか読ませるものがあります。
ただまあ・・・全体でみたらこの一冊は「キャラ紹介を兼ねて、次巻への伏線を張った一冊目」という印象の強い一冊です。この一冊では全く回収されない伏線なんかもあったりしますので、「アストロノト!」を楽しんだ人なら、次の2巻ありきの1巻という感じで読んでみるのはアリじゃないでしょうか。

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