多次元交差点と月の姫さま。

多次元交差点と月の姫さま。 (角川スニーカー文庫 199-4)
多次元交差点と月の姫さま。 (角川スニーカー文庫 199-4)本保 智

角川グループパブリッシング 2008-09-01
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ストーリー

私立時狭間学園に通う少女・宇田川まひる守銭奴・・・というかお金にきっちりしている性格で有名だった。何しろ直接型暴力付き勘定奉行——とにかく金が絡むと細かくて恐ろしいのだった。
そんな性質からクラスメイトには半ば恐れら、半ば憧れられているまひるだったが、どうしても彼女の手に追えない少年が一人だけいた。
その名を夜野原ミサキ。昼行灯・オブ・昼行灯とも言える存在で、授業中というか昼間は100%寝ている。怒鳴っても殴っても目を覚まさない強者。
それを不審に思ったまひるの調査によって判明したのだが、夜野原ミサキにはもう一つの顔があったのだった。それは幾つもの次元が交差する「多次元交差点」上に存在する宿泊施設・時狭間ホテルの支配人というものだった。それは時狭間学園の裏の顔でもあったのだった。
とにかく、ミサキの裏の顔を知ったのを切っ掛けに時狭間ホテルの従業員として働くことになったまひる。今日も今日とて「多次元交差点」のホテルは大忙し! しかも今回は何やら一人のお姫様を客人として迎えることになり・・・?
うおっ!? 2巻が出たよ!? というシリーズです。

しっちゃかめっちゃか

ですかね〜。
最初から最後までこう・・・なんと言うんですか、全く落ち着きがないという一言で説明が出来てしまうくらいのストーリー展開です。
1巻を読んだ人なら分かると思うんですが、

  • 昼間(時狭間学園)の夜野原ミサキ——寝ているか、誤解を招く発言しかできない半死人。

「……姫。……ホテル。一緒に……今夜」

  • 夜間(時狭間ホテル)の夜野原ミサキ——異常なまでにハイテンション、無駄な方向に積極的。

「我が従業員よ! 『外』の昼間ならいざ知らず、営業時間を迎えた今、僕は睡魔から完全に解放された自由の身! フリ——ダム!」

というジキルとハイドが物語のど真ん中に存在している関係で、ひたすらヒロインのまひるがミサキをツッコミ倒しているという感じです。

結果として

まひるは、

ミニスカ一閃、回し蹴り。

という感じです。
とにかく数十ページに一回位の割合で美しい回し蹴りを繰り出し、数ページごとに激しいツッコミを入れるという獅子奮迅の活躍で物語を何とか軌道修正している訳ですね。
・・・というかぶっちゃけ、まひるがいなかったかつての「時狭間ホテル」は、どうやって運営されていたんだろう・・・?

今回は

冒頭でも書いたとおり月世界から「かぐや」を名乗る超VIPが来ることもあって、ホテルでは色々と出費が嵩みます。結果として守銭奴まひるの目もつり上がる一方でして、もうミサキを半殺しくらいまでは平気でやっています。
それに加えてお姫様を狙ったテロなども発生してしまって——もうホテルはメチャクチャです。被害総額を考えたら脳みそが沸騰してしまいそうな状況の中、それでもまひるは頑張ります。

「私はね、無駄が大嫌いなのよ! まだ使える立派なものが意味もなく壊されて、直すのにまた余分な材料と費用をかけるなんて……私の財布が傷まなくても、私の心がささくれだって苛立つのよぉぉぉぉ!」

とかなんとか絶叫しつつも、必要なときには、

「税金泥棒なら、今すぐこの場で腹を切って死ね! そうでないっていうんなら、堂々と胸を張って、生きなさい!」

なんて言ってしまえます。
おお〜、なんて凛々しくて痛々しいヒーローだ・・・? まひるは・・・えーっと、ヒロインだったか?

それから

1巻から引き続き問題になっているミサキが持つ「時の瞳」ですが、コレについてもなにやら怪しげな動きがあります。
ミサキの時を喰らっている謎の存在”ユガ”は、ミサキを何かの完全体にするのが目的のようで、その目的のためにまひるを操ろうとします。素直に従おうとするようなまひるではありませんが、実際の所なんなんでしょうね・・・?

「ミサキ……、あなただったら、きっとなれるわ。”時”を超え、”空”を翔けて、”すべて”をつかむもの——”管理権限者”に」

なんだか意味深な発言ですが・・・。とにかくミサキの「時の瞳」も、今回の騒動もユガが裏で手を引いているのは間違いなさそうですね。管理者権限が一体何のことを指すのか分かりませんが、パスワードをブランクにするのだけは止めましょう。

総合

星、3つかなあ〜。
もの凄く楽しいかと言われると困るんですけど、でもテンポは良いので最後まで読めてしまいますね。
たま〜に顔を見せるシリアスなミサキとまひるのやりとりがスパイスとして良かったりもしますし、異次元人のサブキャラクター達がこれまた賑やかなので楽しませてくれます。
しかし時狭間ホテルの常連って、ろくな奴がいない! ケモノ姿だけど常識的な部類に入るピリカはともかくとして、完全にワニ人間なアーマン大佐(退役軍人)・・・でも一番ダメダメなのは粘液ゲル人ですな・・・だって未だに名前が出てこないんだもん!
でもまあ、相変わらず従業員のココルビィも頑張っていますし、1巻を読まれた方なら、まあ暇つぶし的に読んで見ては?
・・・ところで、今回次元の向こうにある時狭間ホテルどころか、こっちの世界の時狭間学園まで無茶苦茶になってますけど、ほとんど投げっぱなしで放置されてるところがスゲエ。文化祭とかやってる場合か・・・? とか思わなくもないんですけど、まあなんかきっと学生やPTAも慣れっこなんだな・・・とか思って納得することにしよう・・・。

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