薔薇のマリアVer4 hysteric youth

薔薇のマリア Ver4    hysteric youth (角川スニーカー文庫)

薔薇のマリア Ver4 hysteric youth (角川スニーカー文庫)

ストーリー

サンランド無統治王国・首都エルデン。そこにある一つのパーティであるクラン・ZOOに最近一人の冒険者が加わった。その名をマリアローズ。紅の髪に紅の瞳を持った美貌の冒険者
一人での身を削るような、しかし気ままな生き方から、パーティに加わって仲間たちと過ごす日々。しかし、そんな暮らしになってからまだ日の浅いマリアローズのエルデンでの日々は、それまでとは違った刺激に満ちていて・・・。
薔薇のマリア」シリーズの過去の一瞬を切り取った短編集・第四弾です。

いつもご機嫌全開

のように思われている私ですが、まー実際の所は暮らしの重さにすり潰されるような日々を送っているわけです。
上から潰され、下から突っつかれの毎日。振り返れば自分に成したことなど何一つ無いような思いに駆られ、先を見れば何も見えない深い霧の中で迷子のような気持ちになります。石川啄木じゃないですが、

友が皆 我より偉く見ゆる日よ 花を買いきて 妻と親しむ

そんな事をふと思う日々が確かにあるのです。・・・ナニ? 妻がいるだけマシだって?
まあそれはともかく、そういう時でも何故か薔薇のマリアシリーズを読むと、少しだけほっとしたような気持ちになります。

何故かって

それはやっぱり主人公であるマリアローズの在り方に共感する部分が多いからでしょうね。

僕は戦力外で、いなくてもよくて、ようするに、それって——僕がここにいなくてもいいってことは、僕にとっては、ここにいる必然性がないってことで。

組織の中で自分の能力に悩み。

地道、堅実、謹厳が僕のモットーなのに。や、嘘じゃないって。本当だってば。バーン! ドーン! ドカーン! みたいなのは僕の趣味じゃないんだ。趣味じゃないっていうか、そういうのは僕にあわないんだ。できないし。そんな能力ないってことはよく知ってるし。賭け事なんかにも手を出したことがないし。一生やらないと思うし。1ダラーを笑うものは絶対1ダラーに泣くと思うし。時間を無駄にするのがとことん嫌いだし。てゆうか、許せないし。暇があればお金を稼ぎたいし。暇なんてそもそもないし。好きな言葉は「生産性」だ。生産性があることが大好きだ。生産性がないことには興味がない。それから「効率」だ。なけなしの力で、最大限の成果を上げないといけない。だから、効率をよくしないといけないんだ。

今を生きることに汲々とする。
・・・まるでマリアローズは、剣と魔法のファンタジー世界に間違って迷い込んでしまったサラリーマンのようです。
生まれた場所が現代の日本社会だったらもっと気楽に生きられたでしょうに、なんの因果か冒険者稼業。昨日は必死、今日は途方に暮れて、未来は暗闇。
なんというか、他人事とは思えませんねぇ・・・でもこの話は何処まで行ってもやっぱり剣と魔法のファンタジーで・・・なんといいますか、マリアローズの作品内オーパーツっぷりを半笑いで楽しむ感じでしょうかね。

本編の方も

もちろん好きですが、この外伝も同じくらい楽しかったですね。
つーか途中で、

なんでまだゲーム化されてないんだろうか?

なんて思ってしまいました。ウルティマオンラインとかが人気あった(今もあるのかな?)訳ですから、薔薇のマリアの世界観をベースにしてゲームを作ったら、人気でるんじゃないかな〜なんて思ったりして。
というか作者の人がウルティマとかやってたのかな? まあなんでもいいですけど、いつかゲームとかになってくれたら面白そうですよねえ・・・。サンランド無統治王国を舞台にした、「何でもあり」が売りのファンタージオンラインゲーム・・・うーん楽しそう。
でも実際にあったら危険な気もするか・・・ゲーム廃人になっちゃったりして・・・。

総合

星4つ。
とりたてて大事件があるわけではないけど、それでも十分に刺激的な日々を描いたこの短編集は十分に面白いですね。
特に印象に残った短編は・・・どれか一つと言われたら一番最初に載っている短編の「フテクサレデイ」でしょうかね。いかにもマリアローズらしくて、いかにもZOOの面々で、いかにも薔薇のマリアです。や、次の短編の「ELDEN☆SWEET☆ANGELS」も面白かったですけどね。マリアとピンプの初めての一対一トークとか・・・。うん、面白かった。
ところでイラストですが、今回は短編の終わりにちょっとした一コマイラストがついています。こちらは本編の方の印象的なシーンをイラスト化したものなんですが、これが妙に面白い。個人的に一番気に入ったのはトマトクンがメンバー募集の看板を持っている一枚ですね。
うーん、確かに怪しい・・・。

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