SHI-NO 黒き魂の少女

SHINO —シノ— 黒き魂の少女 (富士見ミステリー文庫)
SHINO —シノ— 黒き魂の少女 (富士見ミステリー文庫)上月 雨音

富士見書房 2006-02-10
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おすすめ平均 star
star高校生向けかも

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ストーリー

大学生の僕のところには、一風変わった人物が毎日のように訪れる。
支倉志乃。正真正銘の小学五年生の少女。黒い瞳に底知れない光を湛えた無口な少女は、自分の視点から見れば幼なじみというか、昔世話をしてあげた子供という所なのだろうけど・・・世間の人が見たら、一人暮らしの大学生の男のところに毎日のように通う彼女はどう見えるのだろうか・・・? そんな心配をしたくなるくらいには、志乃ちゃんは美少女だ。
しかし、志乃ちゃんはただの小学生ではない。その目と知性はいつも深淵と言える人の心の奥深くへと向けられていて、今日も彼女が興味を示したのは一つの不可能犯罪を扱った事件の一つだった。
Dead End Complex——目の前にはそんなつい「子供には相応しくない」、そんな風に言いたくなる内容の事件が広がっていたのだった・・・。
ミステリー? いや、単純にそう言う訳にはいかないミステリーの人気作の1巻です。

いや

随分と放置しちゃってたなあ・・・というのが本音なんですが。
多分この本を買ったのは1年は前だと思うんですけど、ついつい積まれてそのまましまわれて、コメント欄で読んでと言われて引っ張り出して読んで、遂に今日のこの日、感想となって出力されたわけです。もーなんというかそれだけで十分私的にはドラマなんですが・・・いや、面白かったですよ?
子供が中心のキャラクターでミステリという事になると、つい「バーロー」が口癖のあのマンガを思い出しそうですが、いやいや、全く別の印象というか、ああこういう切り口もあるんだなあ・・・としみじみ感じたりしました。

とにかく

死、というものに対する見方がライトノベルとしては珍しいんですね。
悪とか運命とか忌避すべきものとか・・・なんとなくそう言うことを言いたくなるのが「死」というものですが、この作品ではそこをさらに一歩踏み込むようなところで物語を作っています。

彼女は矛盾している。その存在自体が矛盾している。
死を志向する自分。死を蒐集する自分。それは生まれた時から、生まれる前から定められた運命。他の誰とも交じり合うことのない、真っ黒な魂。

こんな描写のある本作ですが、それはしかし暗さを伴ったものではありません。
まるで荒野で一人朽ちていくのを待つ獣の死体のように、一種の自然の厳しさと気高さと醜さの入り混じったような印象があります。それがまた不快じゃないんですね。楽しいものではないのかも知れませんが、イヤではない。そういう話です。

しかし

何でしょうねこの読了感。寂寞たるというか粛々とした気分になるというか、背筋を伸ばしたくなるというか、そんな感じ?
だって「死」というものに面と向かった時って、結局は真面目に背筋を正すとか、そんな態度しか取れないものじゃないですか。悪趣味に「死」を笑えるのは映画の中やマンガの中や、あるいはもっと悪趣味になってもニュースの中くらいで、実際の葬式に顔を出したら笑ったりは決して出来ないものですよね。
愉快・・・とは言えないけれども、真面目にならざるを得ない、そんな印象を与えてくれる本です。

総合

でも面白い。星4つだな・・・。
これは1巻ですからまだまだ先があるわけで、続きが楽しみになってきました。でも何故かこの話の続きを楽しみに思うのが不謹慎なような気がするから人間は不思議です。まるで危険なおもちゃで遊んでいるような感じで・・・どうも落ち着きませんね。
そういえば志乃ちゃんは今をときめきそうな美幼女主人公(?)ですが、どーも浮ついた感じのしない作品ですねえ・・・まあテーマがテーマだから仕方がないか・・・。