薔薇色にチェリースカ(4)

薔薇色にチェリースカ 4 (4) (集英社スーパーダッシュ文庫 か 6-15)
薔薇色にチェリースカ 4 (4) (集英社スーパーダッシュ文庫 か 6-15)海原 零

集英社 2008-10-24
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ストーリー

マシュテバリ学園に通う綺羅崎ヒロの、忍耐の日々は続いていた。
上流階級の生徒によって組織される非公式の集団であり、学園内で絶大な力を持つ優生会と、優生会をないがしろにする理事長の間で板挟みに遭っているヒロは、しかし、度重なる外圧にあの手この手と機転を利かせそれを乗りきっているのも確かだった。だからといって彼の学園内での立場が良くなるわけでもないのだが・・・。
しかし今度の試練は彼に直接訪れることなく、搦め手を使ってやってきたのだった。彼の唯一に近い(人間の)同士とも言える乱流真希にがその毒牙にかかる・・・。それを知ったヒロは真希の苦境を救うべく動き出すのだが、やはり今度も一筋縄で行くわけもなく、彼を敵視する優生会のNo.2であるシシリー・アイスヒルと再び衝突することに。もちろんそこには薔薇色の蛇・チェリースカの姿もあった・・・。
シリーズの4巻ですが・・・おや、初めて「続く」なんですね。

いや

この話を読んでいるとしみじみ思うのが、面白い物語の舞台というのは複雑な世界観とかではないんだなあとか思いますね。
確かに隠されたところに色々と設定はあるんでしょうが、読んでいて面白く感じるのはガッチガチにプライドの高い登場人物たちによる、意地のぶつかり合いなんですね。
潰してやる、いいややり返してやる、嵌めてやる、逆手に取ってやる・・・あの手この手で肉体的にも精神的にも上に立とうとする生徒たち。それが面白いんです。そこには難しい理屈なんか無くて、結局の所

負けたら悔しい。

それだけなんですよね。

その結果

死にそうになったり殺されそうになったりしてますが、それは多分彼らにとって二の次なんですよね。
多分一番恐ろしいことは「心を折られること」。結果としての死や権威の失墜が怖いのではなくて、それらは全て「魂の敗北」という原因があっての事なんだなあと。だから彼らは・・・とてもつまらないことにこだわったり、意地になったりする。
それはヒロもそうですが、真希もそうですし、もちろん表だった敵であるアイスヒルにとっても同じ事なんですね。もちろん追う者と追われる者、抑えつける者反発する者、という立場の違いこそありますが心の奥に流れるものが実は同じで。
それが一種のライバル関係となって物語に緊張感を生んでいるんですな。もちろん心情的にはヒロと真希の方に感情移入はしますけどね。

ですが

今回のラストの展開でその辺りの大枠が崩れそうな感じがしています。
それはヒロとアイスヒルの関係に変化が起こりそうだからですが・・・まあいわゆる色恋とかという次元の話では多分無いのでしょうが、今後の物語の展開になんらかの影響を与えるのは間違いなさそうです。

「……おひとりでお行きなさい」

さて、これはアイスヒルにとっての敗北なんでしょうか? いや、単純にそういうものとは言い切れないところが面白い。
個人的にはアイスヒルは好きではありませんが、嫌いにもなりきれないキャラクターですね。高すぎるプライドは間違いなく醜さですが、反対側から見ればきっと美しさでもあるのじゃないかと思うからです。

総合

星4つ。安定して面白い話を書く作者ですね。
今回はアイスヒルの件もそうですが、新たに登場してくる関係者である学園の校長――ダナエ・フラトレの動きが気になる引きです。もちろんそれはただの関係者という訳ではなくて、つまりはきな臭い人間です。
ヒロの両親の死、追われるチェリースカ。彼らをとりまき、利用しようとする裏の顔が少しずつその本体を現し始めたようです。特に今回は次に続く構成になっていますから・・・気になりますねえ。

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