カンピオーネ!(2) 魔王来臨 

カンピオーネ!〈2〉 (集英社スーパーダッシュ文庫 た 9-2)

カンピオーネ!〈2〉 (集英社スーパーダッシュ文庫 た 9-2)

ストーリー

神を殺したものは、その神の持つ力の簒奪者となるという。
神殺しという偉業を達成した者達はいずれにしても強大な力を手に入れ、人として上ることの出来る最大の力を持つに至る。人は彼らの事をカンピオーネと呼んだ。王、魔王、堕天使、混沌王、羅刹——あらゆる剛力を持つものを二つ名とした恐るべき人間の事である。
そして現代の世には6名のカンピオーネがいる。それぞれ東欧の老侯爵、中国南方の武侠王、妖しき洞窟の女王、新大陸の異形の英雄、大英帝国の漆黒の貴公子・・・そして欧州最強の剣士。
しかし、それに連なるもう一人のカンピオーネが東洋の島国に生まれたことを知るものは少ない。その人物の名は草薙護堂。先日までは当たり前の高校生だったのだが、魔術師・エリカ・ブランデッリと関わることで人ならぬカンピオーネとなった者だった。
カンピオーネとしての護堂の実力はまだまだ未熟という所だったのだが、周囲の協力を得てなんとかここまで戦い抜いてきていた彼の元に、魔王とも呼べる最悪の敵が訪れる——それは彼と同じく神から権能を簒奪したもの、つまりカンピオーネが来日したためだ。
そのカンピオーネ魔王ヴォバンは類い希な巫女としての力を持つ万里谷祐理の力を狙うヴォバン。護堂は祐理を守るために避けることの出来ない戦いへと身を投じることになる・・・。
神々の力を持った人間たちの凄まじい超常バトルをメインに据えた、異能アクションファンタジーの2巻です。

むう・・・

なんか、えっちい・・・。
というのが読了後の第一印象だったりします。「え、そんな話だったっけ?」と、この話を読んだことのある人なら思いそうですが、しょうがないじゃないですか! なんかそんな風に感じちゃったんだもん!
いやね、本編の中にとある理由から「凄く濃い」キスシーンがあるんですが、それがなんというか〜淫愛な感じなんですよ。

荒々しく押しつけられる唇をやさしく受け止め、包み込む。口内で動き回る舌を、時に遠慮がちに舐め返し、時に自らの舌で丹念になぞり返す。
さらに護堂の唾を恥ずかしげに吸い、自らの唾液とひとつに溶かしあわせる。

別に・・・別に正直なんてことないシーンなんですけどね!? でもなんだかよく分からないけど、えー、悶々とした
男女の間にある親愛というか・・・その密度の高い空気が醸し出す独特の空気というか、皮膚が密着して体温を伝えあって足に震えが来るような・・・”あの時の空気”が書かれているからってのが理由のような気がしますが。

まあ

それはそれとして、今回もバトルバトルの大バトルという感じですね。
エリカと同じレベルの力を持つ騎士の少女・リリアナ・クラニチャールを加え賑やかになった登場人物も魅力の一つでしょうが、護堂の獲得戦(?)に図らずも大胆に参加することになった祐理の魅力が全開という感じです。よく考えたら今回は表紙を堂々と飾っていますしね。
個人的にはエリカも確かに捨てがたいですが、本気になった姫巫女という「おしとやか+献身的」というポジションのキャラクターに心惹かれる私です・・・ってなんかすっごい贅沢な事書いてますな、私。

ところで

今回もラスト付近の神話の知識をふんだんに盛り込んだバトルシーンは見応え十分ですね。読者の蘊蓄欲というか知識欲を程よく刺激してくれるのと同時に、緊張感もあっていいんじゃないかと思います。
複雑怪奇な神話の成り立ちを丁寧に説明するようなシーンがあるのと同時に、神の力を存分に振るっての巨大な雷撃の撃ち合いというのは読んでいて単純に楽しいですね。
今回の敵であり、カンピオーネであるところのヴォバンの悪役としてのキャラクターの立ち加減も十分ですし、歴史編纂委員会に所属する怪しげなエージェントである甘粕なども良い感じで話を盛り上げるのに協力してくれます。
うん、こう言ったらなんですが、「とある魔術の〜」が楽しんで読める人なら楽しめそう、そんな感じもしますね。

総合

星4つ。
いかにもライトノベルらしいとんでもない展開をしつつも、細かいことはどうでもいいや〜という気分にさせる勢いがありながら、その割には細かく調べ上げたと思える神々の知識を盛り込んだり、丁寧に書かれたりする言葉遣いなんかが魅力に感じますね。
うーん、派手目な作風なんですけど、一通り読み終わった後に見渡してみると、堅実、という印象を与えてくれる本でもあるような気がします。ちゃんと手順を踏んで読者を楽しませようとしているという感じでしょうか。
うんうん、3巻も期待して待ちましょうかね〜。

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