激辛!夏風高校カレー部(いもうと付き)

激辛!夏風高校カレー部(いもうと付) (集英社スーパーダッシュ文庫)
激辛!夏風高校カレー部(いもうと付) (集英社スーパーダッシュ文庫)神楽坂 淳

集英社 2008-11-21
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ストーリー

夏風高校には、一風変わった部活が存在した。その名を「カレー部」である。
カレーを作って楽しみ、食べて楽しみ、競って楽しむというとにかくカレーづくしな部活である。奇天烈極まりない部活動ではあったが、学食の料理までも部活動の一環として賄っている夏風高校としては実に普通の部活動なのであった。
で、その「カレー部」に所属する桐野魁は、普段は幽霊部員としてカレー部でほくほくと食べたり食べることを考えたり食べる準備をしたりしていた。
そんなスパイスの刺激はありつつも全体で見たら刺激のない毎日を送ってた魁だったが、「全国高校カレー選手権」に出場していたカレー部レギュラーが交通事故に遭ったことによって、幼なじみでやはりカレー部所属である御堂紅と一緒に急遽試合のレギュラーに選ばれることになってしまう。
カレー選手権にはなんとしても勝ちたいと願う夏風高校の面々、そしてカレーに対する情熱だけは人一倍な魁・・・。果たして魁は大会を制することが出来るのか!? カレーみなぎる青春の一ページを描いた怪作です。

なんじゃこりゃー

と思いつつ書店で手に取ったのが本音ですが、どこかで見たことある作者だな〜と思って既刊リストを見ると、あらあらあら・・・「征服娘」を書いた人でしたか〜。つまりあちらは打ちきりなんですかね!? それはそれで悲しいですが、まあとにかく・・・。
今回はもー、ネタからして大衆のど真ん中にあるようなものですからね。カレーって・・・学校給食の人気ナンバーワンメニューじゃないでしょうか。いまだに。しかも表紙に巨乳の女の子がいるとなっては買わないとまずかろう! という訳で購入ですよ。
だっておっきいんだもん! そりゃ買うよ、買っちゃうよ!

いや

最初は色物だろうと思って読んでみたんですけどね。いや、面白いですよ。
「全国高校カレー選手権」という意味不明な選手権だけでもアホらしいですが、それに出場することになる主人公の魁が実にいい味を出しています。スパイシーな作品なのに、実にマイルドな主人公です。

昔ながらの正統派レトルトカレーをご飯にかけると、魁は生卵を落とした。魁はレトルトカレーが好きである。
なんといっても、レトルトカレーはえらいやつだ。お湯にいれたり、電子レンジで温めるだけでカレーになるというのは、まさに人類にとって画期的だと思う。

どうです。カレー部に所属しているという位だからよっぽど蘊蓄にうるさいのかと思いきや、いきなりのレトルトカレー賛美です。これがマイルド主人公でなくて一体何をマイルド主人公と言えば良いのでしょう。

この

主人公のマイルドさだけでは話が盛り上がらないので、当然刺激的な登場人物も出てきます。
それが紅な訳ですが・・・胸も大きいですけど、いや、ふつーに魅力的な女の子ですね。カレー部ですけど。

「いいもの食べてるじゃなーい」
「これは俺の朝メシだ」
「魁のものはわたしのもの」
言いながら、紅は有無を言わさず魁の膝の上に座り込んだ。どすん、と勢いよく乗ってきたが、胸以外は華奢な体はそう重くない。
髪からか体からかわからないが、かすかに花の匂いがする。
「こいつ、花の香りがしやがる、っていま思ったでしょ?」
「思ってない」
「これ、ひまわりの香りなんだよ。健気でしょ?」

・・・ライトノベルには幼なじみというのが山ほど出てきますが、久しぶりに羨ましい感じの幼なじみです。うん、紅は健気を絵に描いたような娘で、しかも元気で可愛いのです。
一見積極的に見えますし、一見活動的に見えますし、一見派手に見えますが、それでもやっぱり「健気」が一番形容詞として似合う女の子なのです。うん、読めば分かる。

そんな

登場人物によって彩られるカレー物語は試合に向けて緊張感を増していき、カレーの味を鍛えるために部長(美少女)の国崎李里とデートすることになったり、早朝から(朝練?)カレーを食べに行ったりとか、とにかく試合も恋も忙しいのです。

「コジマ君は、カレーの鍋を眺めているのは好きよね?」
「大好きです」
コジマ君が胸をはる。コジマ君はなんでもぼんやり眺めるのが好きで、回っている洗濯機だろうが、行列を作っている蟻だろうが、とにかくなにかを眺めていることが多い。

・・・こんな所を引用すると本当に緊張感なんてあるのか? と思ったりしますが、大丈夫・・・なんじゃないかと思います。だってライバルも出てきますし、応援には魁の可愛い妹であるまで出て来ますし、しかもカレーですから刺激的に決まってます!

総合

星4つ〜。面白い。
カレーも美味しそうだし、恋は練られたスパイスみたいだし、妹は華やかなトッピングみたいです。読んでいて飽きない、食べて飽きないという一粒で二度くらいは美味しいような気がするカレーライトノベルですな。
とにかく私は登場人物がすっかり気に入ってしまいましたね、ちょっと天然でカレー馬鹿の魁もいいですが、上で書いたように紅も素敵少女ですし、コジマ君もいい味を出していますし、部長の李里も刺激的な人物ですしね。試合の行方なんてどうでもいいくらいに面白いのです。
これであとちょっとしたプラスアルファがあったら5つ星になっていましたね。今回は4つ星ですが、この分ならきっと5つ星が狙えるような気がします。
イラストの君平ユウキ氏もいい仕事をしています。カラーのデフォルメされた可愛らしさも見事ですが、白黒絵の丁寧な仕事も魅力的ですね。試しに99ページとか覗いてみて下さい。ここで乙女の恥じらい絵を持ってくるか〜! という一枚です。うんうん、丁寧な仕事っていいですよね〜。

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