イグドラジルー界梯樹ー

イグドラジル—界梯樹— (GA文庫)
イグドラジル—界梯樹— (GA文庫)椿 春雨

ソフトバンククリエイティブ 2008-12-15
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おすすめ平均 star
star 護樹騎士団物語の外伝

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ストーリー

弓削稜(ゆげりょう)は違和感を抱えながら今を生きていた。何かおかしい、何か足りない。
それは思春期特有の「自分が何者か分からない」から一歩進んだ得体の知れない焦燥感のようなものを伴っていた。その理由のない焦燥感に突き動かされながら毎日体を動かすことで自分を誤魔化し続けていたのだが・・・。
また、弓削と同じ学校に通う藍羽真珠(あいばまじゅ)も居場所のない自分について違和感を感じていた。そのため彼女はオーディションなどを受けて、自分の居場所を探そうとしていたのだが・・・。
しかし、そんな彼ら二人を奇妙な現実が襲う。稜は奇妙な幽霊のような存在と邂逅をし、真珠はあり得ないような悪夢に毎日のようにうなされ続けていた。そして、それらが奇妙な符合を見せ始めるとき、事態は世界を巻き込んだ災厄へと発展していく・・・。
重厚な設定と緻密な描写で語られる、架空ファンタジーの1巻です。

・・・。

なんというかこれ、基本は異世界と現世の接触が生み出す争いの物語なんですが、どうも主人公の稜は騎士で、真珠は姫という役回りのようなんですね。まあその辺りは良しとしましょう。それを納得させるための描写も丁寧で十分だと思うからですが。
が。作者があとがきで言っているコレ、

これを読まれた皆さんはくれぐれも「一冊かかっても主人公が主役メカに搭乗しないじゃないかこのやろう」と言って、怒ったりしないようにしましょう(言い訳)

納得できるか馬鹿。怒るわ馬鹿。
つまりこの本、一冊かかってまるまる「序章」なんですね。そらそこまで文章を割けば描写は丁寧になりますわな。でも読んでいるこっちとしては、中盤過ぎた辺りから冗長過ぎてイライラしてきます。

あの〜

例え話として良いのか悪いのか分かりませんが、最近電撃文庫で出た「機械じかけの竜と偽りの王子」って話があるじゃないですか。この話はアレに出てくる「機巧鎧」に主人公が乗らないまま終わってしまったようなもんです。
災厄とも言える異界からの侵攻に対して右往左往する日本政府や現地の警察や消防、あるいは軍隊まで巻き込んだ描写は本当に丁寧なのですが・・・限度というものがあるんじゃないでしょうかね。
一冊かかってこれじゃあ、いつになったら物語が本格的に動き出すのかさっぱり見当もつきません。ついでに言えば異界の言葉(名詞)が中盤辺りから頻出するようになるんですが、それが一体なんなのか・・・つまり個人の名前なのか、役職なのか、生まれなのか、それとも全く違う何かなのかが分からないので混乱します。その辺りを上手く説明してくれていればまだ読めたような気もするんですが・・・。
あ、ついでに言えばその異界の言葉の「音のセンス」もちょっと独特で、読んでいてつまずくように感じましたね。

総合

うーん、星2つ。
いや、これ以上の星はあげられないでしょうな。これから面白くなる余地は十分にあると思いますけどね・・・。
もしこれが映画とかだったとしたら、十分納得して映画館を出たと思います。映画には映像があって音楽があって、あるいはそれらを盛り上げる特撮技術やCGなどと言った見所が用意されているからですが。
でも残念ながらこれは小説で、やっぱりストーリーをきっちりと進めてくれないと読者としてはイライラするもんです。スタートがこの調子だと・・・一種の大作になる予感がひしひしとする訳ですが、私としてはそんなこと読む前から分かってないもんですから、いくらページを捲っても進まないストーリーになんだか疲れましたね。
2巻はねえ・・・そうだね、他のところで評判が良いようだったら買ってみるけど・・・そうじゃなかったらスルーするかな・・・。あ〜あ、序盤を読み始めたときは

「これは思わぬ拾いものの予感・・・!?」

とかってときめいたのになあ・・・。なんだか期待した分だけ残念感が激しいや・・・。

なんか

これ書き終わってから気がついたんですが、これ関連する話が他に出ているみたいじゃん!?
「護樹騎士団物語」とかっていう・・・そんなもんがあるなら裏のあらすじのどっかに書いておけよ馬鹿! いきなり外伝から読み出しちゃったような気分になるんだぞこの野郎! GA文庫の編集部もちょっと考えろと言いたい。超言いたい。