静野さんとこの蒼緋

静野さんとこの蒼緋(ふたご) (電撃文庫)
静野さんとこの蒼緋(ふたご) (電撃文庫)水鏡 希人

アスキーメディアワークス 2009-01-07
売り上げランキング : 1945

おすすめ平均 star
star少々期待はずれ・・・
star最近ハヤリ(?)の押し掛け同居モノ+α
star本当に書きたいものを書くべきか、売れることが大事か

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ストーリー

静野蒼介は父子家庭で育った一人っ子の少年だった。ある日、父親に

お前に紹介したい人がいる

そう言われるまでは。
父親もまだ若く、別の女性を迎えても少しもおかしくない、常々そう感じていた蒼介は父親のその言葉を多少の驚きこそあれ違和感なく受け入れたのだが・・・彼が連れてきたのは少女だった。もちろん新しい奥さんではない。
彼女・緋美子は蒼介が今まで知らされていなかった双子の妹だというではないか! しかも紹介されて即同居する事になるという展開に全くついて行けず、蒼介の混乱は深まる一方。
しかもこの妹、口もたてば腕もたつ。一方的にやり込められるわ、さらには同じ学校、同じクラスにも通うことになり、彼の周囲を巻き込んで混乱は広がって、蒼介はひたすら迷惑を被っていたりした。
そんな中、学校内で不特定の生徒が昏倒するという事件が発生。「科学部」などという怪しげな部活に所属していた蒼介は、その事件の謎と関わっていくことになるのだが・・・。
「君のための物語」でデビューした新人作家の2作目です・・・が。

実に良く書けているけど

見事に陳腐な物語に仕上がったな〜というのが率直な感想です。
人間描写の見事さは前作と変わらないクオリティを保っていると思える見事さですが、作品を通してみるとこれが実にちぐはぐなんですね。蒼介と緋美子は訳あって別の所に暮らしており、蒼介は訳あってその存在を知らないのですが・・・その辺りの設定が実に陳腐です。
変にそんな設定を付け足さなくても、普通の家族愛ものとして書けばもっと面白くて印象的な作品に仕上がったんじゃないかな・・・そんな感想を持ちました。

あとがきで

作者自身がライトノベルという言葉を知らなくて、「ライトノベルとは何ぞや?」というレクチャーを担当から受けたとかありますが、まあ確かに前作はライトノベルとしては異色作だったとは思います。
そういう意味では確かに今作の方がいかにも「ライトノベル的」ではありますが・・・この方向転換、間違っても上手くいっているとは思えない、そんな感じでしょうかね。
なんと言いますか・・・古式蒼然とした純和風の建築物の上に、近代的洋風建築を継ぎ足したような違和感とでも言いましょうか。細部を見ると和風なのに遠目から見たら洋風建築だったような違和感とでも言いましょうか。そのちぐはぐさは歴然、そんな感じです。

なんなんですかねえ・・・

本当に作者の人はこんな話が書きたかったんですかねえ・・・? 日和ったのと違うか?
そんなこと一読者である私には分かりっこないんですが、ふとそんなことを思ったりもしました。描写の見事さという意味では今作も十分に読ませてくれるんですが、期待はずれという意味では猛烈に期待はずれですね。
無駄がそぎ落とされていた前作から比べると、無駄というか色気を出したと思える部分が多々見受けられますし・・・人間味のないキャラクターも出てきたりするし、なんつーか、実は描写は上手でも物語を作るのは下手な作者なんじゃ? なんて思ったりもしました。
前作は「君のための物語」でした。じゃあ今作は「誰のための物語」なんですか?

総合

星3つあげてもいいですけど、敢えての星2つ。次が出ても買わないだろうなあ・・・。
この双子・・・いや家族が今後一体どういう風になっていくのか興味が湧かないと言ったら嘘になりますが、それだけに注目するには余計なものが多すぎて読む気が多分出ません。決して悪くはありませんけど・・・なんでしょうかこの読了後の不完全燃焼感。
でも、ひょっとしたら売り上げ的には前作よりずっと伸びるかも知れませんね。表紙も可愛い女の子だし。口絵イラストにも可愛い女の子目白押しだし、最近流行のツンデレ妹っぽさも押し出したりしてるしね。
でも前作の方向性で進んでくれた方がずっと良かったなあ・・・なんておじさんは一人思うのでした。

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