原点回帰ウォーカーズ

原点回帰ウォーカーズ (MF文庫J)
原点回帰ウォーカーズ (MF文庫J)森田 季節

メディアファクトリー 2009-01
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ストーリー

私立御伽坂学園には、ちょっと特殊な人材が集まっている。
その最たるものが「十哲」と呼ばれている学園内超人(変人?)の存在であった。「十哲」には特定方面において特異な才能を持った者だけがなることが出来る一種の特殊階級であり、畏れられると同時に不気味がられたり、あるいは可愛がられたり——つまり十人十色な感じで学園の中に存在していたのだった。
ちなみに、主人公の足利アキラは詩人を目指す一見なんの変哲もない少女であったが、実は同時に学園内で「当局」と呼ばれる警察組織のようなものにも参加したりしている利発な少女。顔なじみの同級生には「十哲」の一人でもある山崎章夫がいたりするのだが・・・。
そんな異様な学園生活のなかでは、当然のように異様な事件が起こる。そしてその背後に見え隠れする「彼ら」と呼ばれる謎の存在の影。アキラはトラブル解決のために「彼ら」と対決することになるのだが・・・?
ベネズエラ・ビター」「プリンセス・ビター」を書いた作者による、新しいシリーズのような・・・気がする。

んですけど・・・。

なんというか・・・もの凄く・・・実験作の匂いがします・・・。
最初こそ「普通の学園異能ライトノベル?」だとばかり思って読んでいたのですが、読み進めるにつれてなんだか私の頭の中のイメージと、作品内のイメージのズレがどんどんと大きくなっていきまして、予想を大きく外れてなんだかよく分かりませんけど・・・場外ファールとかそんな感じのところに着地しまして、いまとっても居心地が悪いです。
つまらないと言えばつまらないんですけど、いやそれは私がある種の固定観念に取り付かれているからであって、この作品がつまらない訳ではないのか? 実はとても面白いんじゃないのか? いややっぱりつまらないのか? そんな気分です。

まあ

ベネズエラ」シリーズを読んでいる人なら何となく分かっていると思うんですが、今回も上手い言い回しがちょこちょこと出てきまして、その辺りはこの本の楽しみの一つになっているとは思います。

ちなみに私の上の管領久我原いすみさんという学園始まって以来の問題児で——
ゴジ○の着メロが鳴る。この着メロは久我原さん専用だ。
【件名】しばく。【本文】しばく。
また心を読まれた。あの人の恐ろしさは脳内の思想すら統制してくるところだ……。

「これでいいんですよね……」
「うん。じゃあ、決め台詞の『やめてっ! 許してっ! パンツあげるからっ!』を叫んでくれないかな」

まさか、事件? 不吉な気持ちを抱きながら受話器を取る。
「はあ、はあ、芝蘭よ。ねえ、今、何色のしまぱん、はいてるの?」
「非常事態なのに、いた電するな!」
「じゃあ、はいてないの? 脱いだの? はあ、はあ、それは何のために脱いだの——」

「あ〜あ、汚物踏んだせいで靴下汚れちゃった〜。もう、アタシの靴下、食べなさいよ。ほら、口あけろ。ちゃんと噛むのよ。どうした、お前の大好きな女の子の靴下だぞ!」
「アキラちゃんも傍観者になってないで止めてよ! あっ、今ちょっと気持ちよか……痛い、痛い!」

ヒロインが現役小学生のため漫画の原作を大幅に変えることになり、原作ファンから大不評を買った一方で、年の差とかマジで関係ないと叫ぶ主人公の生き様がコアな層に絶賛された。「制服着たら高三だから」という台詞は流行語大賞にも選ばれた。

・・・。
・・・いや、こんなに沢山引用しているのに、じゃあこの話は一体どんな話なんだい? と聞かれると回答に困ってしまうと言うか、どんなに引用しても作品の重要な要素を引用しきれないというか・・・。
いや、引用した箇所が問題箇所なんであって、本筋はストレートに学園異能をやっているような・・・本当になんなんでしょうねこの話。誰か上手いこと説明してくれ。もうそっちに任せるから。俺にはなんか、説明不可能な感じ。

総合

星・・・2つか4つなんですよ。
では一体どちらなんだろうと思う訳ですが、ここは一つおじさんらしい旧世代なもののとらえ方でもって星2つにしておきましょうか。実験的な作風を「無茶な暴走」として否定的に捉えてみた、ということですね。
でも実際の所、この話を若い人が読んだらどんな印象を持つんだろうか。すんなり違和感なく物語に吸い込まれていってしまうのかな? それとも直球とは全く違うスローカーブなこの作品でやっぱりタイミングを外されちゃうのかな? 正直言って、興味津々です。

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