誰かのリビングデッド(3)

ストーリー

元気で利発で快活なリビングデッドのデルを作ったマスターを捜して、バカがつくほど善人な少年のプラスと、口は悪いけど根は腐ってない少女ナムは、相変わらず旅を続けていた。デルの正体を知っているであろうエスを追っての旅だったのだが・・・。
とにもかくにも彼らの旅はそろそろ終わりに近づいていた。究極とも言えるブラコンの兄貴・オールトの協力もあって、遂にプラスたちはデルのマスターを捜し当てることに成功する。
しかし、事はそう単純には進まない。デルのマスターはそれなりの「訳あり」で、その訳というか状況をなんとかせねばならず、なんの因果かプラスたちはオールトとエスケの師匠であるネクロマンサーである《最果て》に会うことを余儀なくされる。しかし、そこを上手くのりきらなければこの旅には終わりは無いわけで、俄然張り切るプラスとナムだったが?
元気なリビングデッドと快活な少年少女が中心で語られる、元気だけどちょっと変な物語、一応の完結、なのかな?

前のシリーズでもそうですが

相変わらずというか、変わらぬ芸風とでも言いましょうか、軽妙な掛け合い漫才のようなトークが楽しいですね。

「お腹空いたわ空腹よ空腹。今ゲロ吐いたら胃液しか出ないわ絶対。酸っぱい臭いのするサラサラの奴」
「自分が女だってこと、たまにでいいから思い出してくれると嬉しいよ」
「そうですねぇ、ちょっと下品かもしれませんねぇ」
「あのね、品ってのは生き様なのよ生き様。上品な言葉使おうが相手を見下して侮辱したらそりゃ下品でしょ。汚い言葉使ってようが誰かに頑張れって言ってあげれば素敵でしょ? 要は気持ちの持ちようなわけよ正味な話」
「問題摩り替えても無駄だよ。それにね、別にお上品に振舞えって言ってるわけじゃなくて、下品な物言いをしないでくれって言ってるだけなんだからさ」
「煩いプラス。あとで泣かす」
「分かったから、下品な言動は慎んでよね」

下品な方がヒロイン(?)のナムで、普通な方がプラスですね。いやはや、とにかく元気な人たちです。こういうテンポのいい会話シーンは読んでいるだけで楽しいですね。

というような

おマヌケな感じで話自体は進んでいくんですけど、後半になるにつれてピンチ度も上がっていきまして、ことは彼らの生き死にに関わるような所まで大事になっていきます。
でも・・・いや実はハッとした台詞がありましてね。主人公のプラスが口にした台詞なんですが・・・。

「そうまでして死にたいの?」
プラスは表情そのままで、
「僕は歳を取って老衰で死ぬんですよ」
と言った。
「は?」
「奥さんと子供と孫と、近所の友達に看取られて大往生です。葬儀じゃ誰も泣かないで、皆が皆、良い人生だったねって笑って送ってくれるような、そんな死に方です。分かりますか? そこにはナムが居て、デルが居なくちゃ嫌なんですよ」

「人生の最後を軸にして生きているのか?」
「死に方が生き方を決めるんだそうです。受け売りな上に、ふざけた理屈ですけど」

・・・なんというか、以前とは言え自分の死を身近に感じたことがある私にとっては、なんとも言えない気分になる言葉でしたね。
いつか死ぬ、死んでしまう。自分も、他人も。そんなことを泣きながら感じたのは遠い昔の話ですが、じゃあ自分の死に方について、はて、真面目に考えたことがあっただろうか? なんてことです。

誰しも

死に向かって歩いているのだけは確かな事で、それは決して変わらない。
でもいつか必ず至るであろう「死」という一つの到達点を思い描いて、それを目指すように生きたことがあっただろうか、と言うことですね。
かつての自分はこのプラスと比べて「つまらない死」あるいは「かっこいい死」みたいなものに憧れていたりはしなかっただろうか・・・? 私は自分の最後をどういう風に演出したいと考えているんでしょうか。そんなことを考えたのです。
5年先の自分は・・・なんとなく想像しています。10年先になると、かなりあやふやですね。でも人生のいつかの時点で待って居るであろう「死」だけは確実です。

まあ

死ぬってことは大げさなので・・・もっと身近なものに置き換えて考えてみましょうか。例えばこのブログが閉じるときの話です。
読者の人とご近所さんに看取られて、周りの人に笑顔で見送ってもらってブログを閉じる・・・いやあ、なかなか夢のある花道じゃあないですか。そんな風に考えてみたりしました。
人生の終わりについては私はプラスほど明確なビジョンは持っていませんけど・・・プラスの言うように笑顔で見送ってくれる人が沢山いるような終わりもいいですね。あるいは精一杯生きて、私は笑って、看取る人は皆泣いているような人生を送るのも悪くないかも知れません。
さて、どんな風に生きてやろう!?

総合

星4つですね。
なんだか物語のことに全然触れないまま感想を締めくくってしまったような気がしますけど、そもそも感想って物語の解説でもなければ要約でもないのでこれで良いんじゃないかという気がしないでもないです。
とにかく大団円でしたが、出来ればプラスとナムとデルの物語をもう少し・・・というかあと4〜5冊は読んで見たいなあ・・・なんて思ったりしました。でもまあ、これはこれで一つの物語を看取った・・・ということになるのかも知れませんが、この死に様、決して悪くないね、なんてことも思ったのは事実です。
といったところで一段落ついたみたいなので、この感想も「死」を迎えようと思います。ではまた、次の本で。

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