MIB

MIB (電撃文庫)

MIB (電撃文庫)

ストーリー

天川星人は有名なUFO研究家の父を持つ、ちょっと不憫な高校生だった。
名前も何となく普通と違うし、とにかく父親の職業が職業なので色々と気苦労が絶えない生活を送っていた。しかし、そんな暮らしも十数年も続けていれば慣れてくる。突然のように仕事でいなくなる父の奇行にももう慣れてしまったし、愛想を尽かして出て行ってしまった母に想いを馳せることもそう多くない。山奥の一軒家で彼は今日も一人、慣れきった生活を続けていた。
しかし、そんな彼の日常を突然の轟音が粉砕する。何事かと思って家を飛び出してみると・・・我が家に一機の輝く円盤——つまりUFO——が突き刺さっていたのだった。そしてその内部から・・・二体の宇宙人が姿を現したのだ! それはよく言う”グレイ”という奴にそっくりで、大きいのと小さいのがいたりした。
まるで現実味を帯びないその光景に言葉を失う星人だったが・・・その宇宙人(?)達はなにやら大事なものを探しに来たらしい。しかも「大きい方のグレイ」はじつは宇宙服みたいなもので、中から謎の美少女まで飛び出してきた。そして彼女は自分の事をアリアと名乗ってふんぞり返ったのだった・・・。
私が大のお気に入りにさせてもらった「桜田家のヒミツ」の同作者が送る、SF(?)チックなストーリーです。

なんといか

波長が合うのを感じますねえ・・・。
ストーリーが面白いとかつまらないとか以前の問題として、作品の根っこに流れているリズムとでも言うべき何かが丁度私の感覚と良い感じにマッチしてくれるんですよね。この感じ・・・どこかで・・・? と思って思い出してみると「ゼペットの娘たち」とかを書いている作者の人に何となく通じるものを感じます。実は編集者が同じだったりして・・・。
とりたてて凄まじいことが起きたりするわけではないので(いやUFOが家に突き刺さるのは凄まじいですが)、なんというかほのぼの感がほんわりと漂っています。主人公の星人も花も盛りの高校生なのですが、妙に老成したところのある少年なので、何故か安心して読んでいられます。

そうは言っても

SFラブコメな作風になっていますので、可愛い宇宙人と、幼なじみの少女の間に挟まれて星人は色々と苦労することになるのですが、なんというかそれが微妙に添え物的な何かになっているような気がします。
ブコメ方向に進路を取れー! ということで(多分編集の指示)頑張ってみたのかも知れませんが、ある意味に於いて失敗しているというか・・・致命的なまでに萌えないというか・・・。ただ私の場合はそこをこの作者の「味」と思いましたし、同時に好感も持ちましたけどね。
ただ、表紙とあらすじだけを読んで全開ラブコメを期待すると、意表を突かれるというか期待はずれと感じる人もいるかも知れません。でも重ねて言いますが、そこが、いいんですって!

上では

「萌がない」などと書きましたが、いやいやありましたよ萌えが。

やっぱり容姿だけで人を判断するのは良くないといった社会的観点みたいなものがあるし、実際に今は美人でも年を取れば容姿は衰えるし、事故や病気で容姿が急変することもある。容姿が変わったことで愛が冷めるというのは人としてどうかと思うし、自分が逆の立場になればやっぱり嫌だとも思う。ならばこの外見のままミムラを愛すべきではないか。いや、むしろ愛さなくてはならないのではないか。

はい、ミムラという名前が初めて出てきましたが・・・これは、2体現れた宇宙人の美少女じゃない方、つまりアレな感じの宇宙人の方を指しての星人の感想です。アレって愛せるかー!? とか思った貴方、大丈夫です。ミムラは立派な宇宙人で、しかも色々と最先端なので、愛せます。
MIB(Maid In Black)恐るべし・・・! といったとことろでしょうか。いや、萌えるというか、これは・・・愛着とでも言うべき何か・・・? よく分かりませんがミムラ、良い感じです。

総合

サービスも込みで星4つにしちゃおうかな〜。
刺激があるかないかと言われれば刺激的ではない作風ですが(まあ前作もそうでしたっけ?)、私は好きですね。ちょっといわゆるあからさまなラブコメを書き慣れていない感じが作品全体から漂ってきますので、そういうのを期待して読むと肩すかしを食らうというのは上に書いた通りではありますが、それはそれ、これはこれ、といった感じで楽しめてみました。ミムラ姐さん萌え——!
じゃあ多分ヒロインであるはずのツンツン美少女アリアや、幼なじみであるはずの巨乳少女宇佐見美希などの存在価値はどうなってしまうのだ? という事になりそうですが、いやいや、今の時代の最先端の萌えはリトル・グレイであるところのミムラですよ・・・などと思った俺の感性、それでいいのかという気がしないでもないですが、萌えてしまったのだから仕方がない。と言うわけで楽しませてもらいました〜。

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