俺の妹がこんなに可愛いわけがない(3)

ストーリー(あんまり変えてない)

俺の妹は雑誌のモデルなんかをやっていながら成績優秀、スポーツ万能などの機能を兼ね備えた超高めの娘な訳だが、一つだけどうしようもない趣味を(隠し)持っていたのだ。
人はそれを——オタク趣味という。
しかも18禁のエロゲなどを好んでプレイしたりするかなりディープな所まで既に足を踏み込んでいる、一般的にはもう戻れないと思われるところまでドップリとオタクなのだ! しかも最近では兄である俺にエロゲのプレイを強要してきたりもする非常に困った妹だったりする。さらには兄の俺に向かって口を開くときは一言目には罵倒、二言目には暴言というどうしようもなく可愛くない妹でもある。
その問題大ありの妹が、今度は「ケータイ小説」とやらに挑戦するのだという。どこまで本気なんだか分からないが、取材と言ってあっちこっち連れ回される兄としては、堪ったものじゃない。でも、事態は意外な方向に転がっていって・・・?
という「俺の妹がこんなに可愛い訳がない」の3巻です。
ま・・・一ヶ月遅れの感想ではありますけどもな〜。

基本的に

物語を作るのが上手いんじゃないかな〜、なんてのがこの3巻で感じた印象ですね。
ある意味において(特に派手な展開が普通のライトノベルでは)「なんてことない」出来事をきっちりと掘り下げて、見事に物語の中心に据えて来られる辺りに作者の上手さというか——巧みさを感じますね。
ライトノベル的であるところはそのように、そうでないところもそれなりに、上手くまとめ上げているという感じでしょうか。例えば主人公かつ語り手である兄・京介と、その幼なじみの麻奈実との関係がライトノベル的であるなら、後半の展開はリアルに近い生々しさを感じさせます。
でも、このギャップが楽しさの源泉なんじゃないかな、なんて思ったりもするのです。50%のフィクション、50%のノンフィクション、どちらが不足してもきっと読者はついてこないんじゃないか、そんな風に思うのですね。
面白い作品はその辺りのバランス感覚に優れている作品が多いと思っています。

今回のネタは「ケータイ小説」なんですが、そのケータイ小説について、作者が登場人物の口を借りてなかなか面白いことを語っています。

「先人たちが延々と研磨してきたご大層な作法だとか、最新の流行物だとか、人気を獲得するためのあざとい戦略だとか、そういったものは確かにあるし、それらを取り入れることは、それはそれで『正解』の一つ。間違ってない。でも、だからといって、それ以外のやり方を全否定してしまうのは違うでしょう。作法作法と上から目線でのたまうのは、玄人面した口だけ莫迦の言い草よ。」

・・・なかなかに際どい台詞ですね。特に、ある意味Webを巻き込むことによってブームを起こしたこの作品がこれを言うのは本当に際どいですね。でも、正しい、んじゃないかと思います。
私個人の話で言えば、創作物なんて「面白ければそれでいい」と思っている節があるので、全面的にとまでは言わないまでも賛成してしまうところがありますね。

さて

本編の方ですが、今回も色々な所を巻き込んで妹の「人生相談」は展開します。
特に後半はある種の人種に取ってはシビアな展開かも知れませんねぇ・・・いわゆる「ワナビ」と言われる人種にとってですが。そーいや一時期私も何故かワナビな人だと勘違いされたことがありますが、あれ、なんだったんでしょうねえ・・・。
まあとにかく今回は、妹のケータイ小説と某編集部のリアルを結構際どいところまで使って話の方が展開していきます。何しろ登場する編集者に、

底意地悪くニヤリと笑んで、
『——せいぜい頑張って下さい』

こんな言葉を言わせてますしね。色々と深読みできる台詞なので、辛い人には辛い、痛快な人には痛快な台詞ではないでしょうか。
え? 私はどうだったかって? 一言で言うと「へー」という感じでしょうかね。創作で身を立てようなどとは夢にも思ったことがないので、興味津々だったと言うべきかも知れませんねえ・・・。

総合

星4つですね。
今回もあの手この手で楽しませてくれたのは確かですし、話の持っていき方も上手い、高いレベルで安定して作品を作っているなという印象が終始つきまといました。おお、これはなかなか、というヤツですね。
ただ、1、2巻と比べると妹のかわいさはちょっと減ってしまったかな? という感じはしました。その辺りはほんわかヒロインの麻奈実成分でなんとか可愛らしさ補充と言ったところでしょうか。
あとがきによると次は短編集になるという話ですが、はてさて・・・この「妹」で一体この作者はどこまで話を作っていけるんでしょうかね? 期待半分で待ちましょうか・・・というか、ここは皮肉っぽく「——せいぜい頑張って下さい」と締めくくるのが良いのかも知れませんね。

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