BLACK BLOOD BROTHERS(11)

ストーリー

終わらない物語は存在しない。
それはこの物語においても例外ではない。あらゆるものがそこに向かって駆け抜けていく――それぞれの終わりへと。願い、祈り、想い、怒り、愛、そして憎しみの全てを包含して、彼らは戦い抜けていく・・・そして、それぞれが求めたそれぞれの答えを得る時が、遂にやって来た。
一体誰が何を得て、一体誰が何を失ったのか。全ての答えがここにある――。
BLACK BLOOD BROTHERS」という、二人の吸血鬼の兄弟と一人の少女の物語の答えが、ここにある。

「もしも」

という言葉が許されるのであれば、なんども唱えたくなる程の「もしも」が言いたくなる物語の終局でした。
もしも、あの時。もしも、この時――ひょっとしたら別の未来が、あるいは別の運命が――なんて、どうしようもないことを読みながら何度も考えました。
誰もが必死に走った。必死に走り抜けた物語。でも、ああ、終わってしまった――彼らの物語は終わってしまった!
私は、後悔とも満足感とも言えない不思議な感覚に包まれるラストシーンに胸を打たれて、しばらく身動きが出来ませんでした。

予想していた通り

と言える展開だったかも知れません。

いつも脳天気な弟が、そのときばかりは真顔で言った。
自分は、太陽の下でも平気だし、十字架も怖くないし、ニンニクもへっちゃらな上、お風呂が大好きだ。彼とは何もかも正反対だ、と不思議そうに。不安そうに。
兄弟なのになんで、と尋ねるので。
兄弟だからですよ、と彼は答えた。
兄弟だからこそ互いの欠点を庇い合えるように、互いに助け合って生きていけるように、二人の闇の母が知恵を絞ってくれたのだ、と。
頼りにしてますよ――
彼はそう言って弟の頭を撫でた。
弟は彼の答えに満足そうに笑ってくれた。
おそらくはもう長くない、残りわずかな時間。
最後まで嘘を吐き通そうと、その時に決めた。



怒るのだろうな。
そう思うと、少し、おかしかった。

ありとあらゆる伏線の収斂した先にこの物語の展開はありましたが、やはり、どうしても不思議なしこりが残りました。
人そして吸血鬼、その誰も彼もが満足していたとしても、読者である私の心の中にはどうしようもないしこりがわだかまりました。それは不満ではありません。「もしも」を許して欲しいのに、物語がそれを許してくれないという、どうしようもないやるせなさとでも言うべきものでした。

誰もが

全力で走った最終巻でした。
必死でないものは一人としていませんでした。後悔など残しようがないと言うほどに全霊の力を出し切って物語を通り過ぎていきました。それは不平不満を許すようなものではありませんでした。
だからきっと私も満足なのでしょう。・・・もし一つだけどうしようもない不満があるとすれば――この素晴らしい物語がここで終わってしまったというその一点に尽きるのかも知れません。もっと、見ていたかった。彼らの生き足掻く姿を見続けていたかった。そして自分の生きる糧にしたかった。そんな不満とも言えないような不満だけが残っています。

総合

多く語る必要はないでしょう。星5つ。
ジロー、コタロウ、ミミコ、カーサ・・・いえ、どの登場人物についても言っておきたいことがあるような気がしますが、それを言葉にするのはきっと野暮ということになるような気がしています。
みんながみんな、自分の出来るだけの事を全て出し切った結果がこの結果なのですから、読者としては何も言わずに飲み込むべきなのでしょう。それは決して不味いものではないどころか、最高の美味である料理みたいなものなのですから。だから私も、今この時の満腹な読了感に包まれたまま、感想を締めくくりたいと思います。
・・・でもあざのさん、あのあとがきだけは卑怯ですよ・・・彼らの物語が読みたくなってしまうじゃないですか! ・・・ねえ? どう思います?

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