純愛を探せ!

純愛を探せ! (GA文庫)

純愛を探せ! (GA文庫)

ストーリー

魔神として魔界に君臨する一人の悪魔がいた。虚言と姦淫を司るその恐るべき魔神の名前は・カルマ。今まで幾多の人間、天使、あるいは女神を陵辱し尽くしてきた恐るべき悪魔である。実力、悪名ともに名高い彼であったが、実は微妙に悩んでいた。

真実の愛が欲しい。

虚言と姦淫の魔神としてあるまじき悩みであったが、彼はなんとなく疲れていた。この世に生まれ出でて幾星霜。魔神としての本能に縛られるまま暴虐の限りを行ってきたが、心にポッカリと開いた穴は塞がってはくれなかった。
そんな空しさを埋めるべく、カルマは召使いのリビエラ一人を従えて、人間の世界にやって来たのだった。魔力を使わずに心だけを通わせて手に入れるべき女性と出会うために! ・・・が。

「この社会には贋物の愛がはびこりすぎだ。合コン、お見合い、出会い系サイト、疑似恋愛用風俗店…………真の純愛は夢、幻なのか?」

魔神にこうまで言われてしまう日本社会がどうなのかという部分については置いておくとして、カルマはとにかく人間界で美しき純愛の出会いを求めていたのだが・・・そんな彼にある時、転機が訪れる。それは”一目惚れ”という奇跡。
ちょっと珍道中めいた言葉の掛け合いが楽しい掘り出し物作品ですね。

ご近所さんの

ところでなにやら評判が良かったものですから、ついつい手にとって読んで見たんですが、こりゃ確かに面白い。

『真実の愛を探しに人間界へ旅立ちます。探さないで下さい。――カルマより』
「何でしょう? この頭の悪い中学生並の文章は? 実に不快です。ビリビリ」
「うわああああああ! 俺が一晩かけて書き上げた書き置きを八つ裂きにするなあッ!」

主人公の魔神・カルマですが、実力者なのに何故か召使いのリビエラに妙に飼い慣らされておりまして、その辺りが妙に憎めません――というか、

  • カルマ:虚言と姦淫と戦いに関しては超実力者だけれども、それ以外は無能力だったり馬鹿だったりずれていたり。
  • リビエラ:カルマの召使いなのだけれどもカルマより日常的な部分で2、3歩上回っているねじくれいたぶり美女。

という構図・・・というか関係がなかなか心地よくて、読み進めるのに全く苦痛を感じませんでしたねえ・・・軽妙ですが馬鹿すぎない絶妙な味付けと言っていいかも知れません。

「……それではここで問題です。街中を歩いていると貴方好みのうら若い乙女と出会いました。さて最初にとるべき行動は?」
「ハハハ、簡単すぎるぞ。問答無用でその場で押し倒すだ」
「赤点、落第、留年です」
「ええッ? 何故だ? ああ、人目につかぬように路地裏やアジトに引きずり込むのが先か?」
「そういう考えは早急に焼却炉にでも放り込んでください」

こんな塩梅です。この二人のやりとりがとりあえず楽しいので、それだけでも結構読んでいられるという感じですね。

そんな

カルマが地上で出会うことになる一人の少女・・・つまり”一目惚れ”の相手ですが、絵に描いたような善良無垢&絶対可憐である所の光楼院カナデという少女だったりします。
いやこの少女のキャラクター設定もなかなか悪くないんですわ。素直で健気、そして純真という昨今のライトノベルでは逆に珍しくなってしまったヒロイン像で、何気に地味ながらも目立っています。

それに加えて

悪魔たちとは正反対の天使たちの思惑なども色々と重なり、さらには魔界でニョロニョロとコミカルにも恐ろしく蠢く陰謀なんかもあったりするんですが、全体を通してとにかくそれらの織り交ぜ方が上手く、テンポがいいですね。
魔神やら天使といった要素を詰め込んでいるのに妙に格好つけたところが無く、コミカル路線で最後まで引っ張ったのも正解だったと思います。カルマ、最悪な魔神なんですけど、何故か憎めません。この「何故か憎めない」という所が何気にポイント高いですね。

総合

星4つですわ〜。
あまりにあんまりなタイトルに、本屋で見かけたとき咄嗟にスルーしてしまったんですが、いや、読んで見て良かったです。ラストシーンも何気に綺麗にまとめられてますんで、こりゃ続編が期待できそうですね。でもなんとかならなかったんかなあ・・・「純愛を探せ!」ってそのまんまやんけ!
ところでイラストは玲衣氏ですが、作品のノリにもあっていると思いますし、仕事ぶりも丁寧で好感の持てる絵でした。本全体を通してもなかなか綺麗に仕上がっていますし・・・ポリフォニカ以外でも結構GA文庫、良い仕事してるじゃない〜。という気にさせてくれる一冊でした。

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