疾走れ、撃て!(2)

疾走(はし)れ、撃て!〈2〉 (MF文庫J)
疾走(はし)れ、撃て!〈2〉 (MF文庫J)神野 オキナ

メディアファクトリー 2009-05
売り上げランキング : 556

おすすめ平均 star
star合い言葉は『隣り合わせの』

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ストーリー

中学を卒業すると同時に軍隊に招集されるようになっている日本。
何故ならば、この日本は異様な存在からの侵攻をを受けているからだった。それも異次元からの正体不明の巨大生物から。それは「龍」や「単眼嵐巨人(サイキス)または(ダイダラ)」と呼ばれる存在だった。
奴らは「導柱(ペナント)」と呼ばれる物体を出入り口として出現し、日本の各地で散発的な戦闘行動を起こしている。結果として歴史は大きく我々の知る歴史からねじ曲がり、彼らに対抗するべく日本も軍を組織。さらにそれだけでは全て捌ききれないことから、学生を兵士として徴兵することが義務づけられる世界と化していた。
主人公の田神理宇(たがみりう)も今年中学を卒業して軍に徴兵された一人だったが、その素質から「護衛士官」という特殊な兵士として戦う事を強いられることとなった。
「護衛士官」は「敵」との戦いにおいて重要な役割を果たし、強大な魔法で敵を打ち倒す「魔導士官」を護衛する役割を負った兵士である。彼は同じ部隊に所属することになった幼なじみや友人に支えられるようにして、その任務をこなしていくことになるが・・・という現代日本の歴史をちょいとねじ曲げた形で作られた軍事ファンタジー作品の2巻です。

あいやー

作者もあとがきで言ってましたが、2巻が出版されるまでの時間が空きすぎですね〜。細かい設定を随分忘れてしまいましたよ。まあそれでも作品の面白さそのものは大きく削がれていないですね。うん、楽しんで読めました。
今回は実戦が一回もないので、「魔道士官」でヒロインでもあるところの紫神虎紅が戦いで活躍するシーンが少なくなっている関係から、ファンタジックな要素が1巻と比べて減じています。その分ストレートな軍隊物として楽しむことが出来たというのが大きいかも知れません。
・・・実戦より訓練や演習の方が違和感なく楽しめるというのもライトノベル読みとして不思議な気分ですが・・・。

ただし

恋愛模様の実戦は1巻の時よりも遥かに激化しておりまして、理宇を間に挟んでのトライアングルは緊張感が増加する一方です。もちろんもう一人の少女とは華社ミヅキな訳ですが。
身分の上下関係なども絡んだり、実際に戦地で接する時間の長さなどの違いがあったりと、恋の鞘当てを盛り上げるための条件には事欠きません。さらに今回は大事な大事な「休暇」という要素からの色々な陰謀(?)もあって、理宇とミヅキが喧嘩をすることになってしまったりして、目が離せないというか・・・いやあ、若いっていいなあ・・・。
個人的にはライトノベルでは何かと割を食うことが多い「幼なじみ」であるミヅキを応援している私です。派手な外見(2巻表紙)の割りには不器用で相変わらず一人で、

「…………ばぁか」

とか言っているからですが。うーんやっぱりいじらしいですね。

今作は

上でも書きましたが、訓練、演習、軍隊での日常と言ったところが物語の中心になっています。
派手な描写はありませんが、その分質実剛健といった戦場の描写が光りますね。主人公の理宇以外の所の描写にもページ数がきっちりと割かれて、彼のはるか上官である軍の上層部、今後活躍の機会があるかどうか分からない部下にまでスポットライトが当たります。これが”地味”と呼べる部分なんですが、地味でもそれが作品を楽しくしているのは間違いないですね。
ある意味でこの本がMF文庫から出ているのが不思議な気もします。堅実というか、固いというか・・・まあいずれにしても高いレベルで落ち着いてまとめられているのは間違いないですね。

総合

面白かったので順調に星4つですね。
目立って「ここが面白い!」というところがあった訳ではないのですが、最後までテンション高く読み進めることが出来ました。以下次号という展開なのですが、次も楽しみなのは間違いないです。
まだまだ謎だらけなところもありますし、登場する人物の多さの割りにはちゃんとイラストにされている人物が少なかったりしてその辺りは残念なのですが・・・次巻以降でもう一度その辺りは期待したい所ですね。これもMF文庫では珍しく登場人物一覧を付けて欲しいなんて思ったりしました。
とりあえず楽しみなシリーズがまた一つ増えたことになりますかね。

感想リンク