アクセル・ワールド(2)紅の暴風姫
- 作者: 川原礫,HIMA
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2009/06/10
- メディア: 文庫
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ストーリー
閉塞感に満ちた未来社会からハルユキを解き放つことになった一つのプログラム――「ブレイン・バースト」。
そのプログラムによって日常生活を多少なりとも変化させ、しかも他に持つもののいない「飛行アビリティ」を手にした彼だったが、仮想世界での対戦成績は実際の所伸び悩んでいた。
いかに仮想世界で特殊な能力を身につけたとはいえ、その存在が明らかになった瞬間から攻略法は練られはじめる。そして、今や彼は精密射撃による遠距離からの攻撃に一方的に倒されるという事態に陥っており、苦しんでいた。そして繰り返される敗戦は彼のコンプレックスを嫌が応にも刺激する・・・つまり、「あの気高き黒雪姫から見捨てられるのではないか」という疑念。
そんななか、彼のリアルに突然の来訪者が現れる。それは彼のハトコの「サイトウトモコ」と名乗る小さな少女。親の都合から数日間一緒に過ごすことになったこの少女の出現によって、ハルユキの周囲は新たな事件の匂いがし始める・・・。
という導入で始まる加速世界の第二弾、前作から間をおかずに登場です。
ほほお
という感じで妙に感心したりして。いつから準備していたのか知りませんが、前作から本当に短い時間でこの2巻の出版にこぎ着けてますね。
それからソードアート・オンラインと同じ――もうこれは作者の芸風という感じですかね?――相変わらずのサイバー世界を舞台にした物語ですが・・・うん、同じような世界観でもこの卑屈な主人公のハルユキの方がやっぱり私にはしっくり来ますね。
彼のヒネクレ感・・・というかつまり劣等感ですが・・・それは昔の私も感じた事のあるようなもので、それのお陰で物語にすんなり入りこんでいくことが出来ましたね。主人公に共感できるか出来ないか、というのは大きいですよね、やっぱり。
話の方は
上手く2巻目に流れたなあという印象がありますね。違和感が無いというか。
こうしてこの作者の本を読むのは3冊目な訳ですが、とにかく構成が上手いという印象がありますね。こうきて、ああして、こうなって、そして締める、という起承転結がメリハリをつけて語られているという感じがあります。
構成が上手いと作品そのものに安定感を感じるから不思議です。変な言い方ですが、キャラクターの魅力がそれ程無かったとしても恐らく最後までそれなりに楽しんで読めてしまうんじゃないでしょうか。この「物語を作る能力」は恐らく天性のものでしょうね。真似しようとしても出来ないような類の能力だと思います。うん。
ただちょっと
1巻に比べて刺激は少なくなったかな? という感じはしなくもないですね。
私が1巻に感じた魅力は、リアルとバーチャルの絶妙とも言える配合加減だったのですが、今回はちょっと作品全体がバーチャル寄りになっていて、リアル側の軋轢というか衝突が少なくなっているので、その分個人的に見所が減ってしまっている感じはあります。
・・・これは気のせいかも知れませんけど、この作者の人、油断すると作品世界を仮想世界で埋め尽くしがちな傾向とかあるのかも知れませんね。ソードアート・オンラインとかは丸々仮想世界ですし・・・。
まあ仮想も良いけど現実の生々しさも捨てがたいものがあるんじゃないかと思う私としては、これ以上この物語で「仮想」――「現実」の配合バランスを変えて欲しくないなあ、なんて思ったりしました。