偽物語(下)

偽物語(下) (講談社BOX)

偽物語(下) (講談社BOX)

はっはっは!

読むだけ読んですっかり感想を書いたつもりになっていたよ! これだから読みやすい作品は困ったもんだよね!
という訳ですっかり忘れていた偽物語(下)の感想をしこしこと書き始めた訳ですが、うーん、なんといいますか、感想そのものが何気に書きづらい作品ですねコレ。
完成度が高いとか低いとか面白いとかつまらないとかって次元ではなくて、それこそ趣味っぽく書かれた作品なので一冊丸ごとホリデー感覚満載なんですよね。そういうものには文句やら褒め言葉やらを紡ぎにくいというか、いや、ホリデー感覚って何のことだかよく分かりませんけどね。なんとなくでその辺りは察して欲しいですが。

ところで

妹、好きですか。妹萌とかそういう属性を持ってたりしますか。それだったら安心して楽しめるというか。
・・・いや、そんなこと言わなくても最近やっているアニメをそこそこ見ていれば、そのアニメ作品の中に主人公である阿良々木暦の二人の妹が出てきているのを知っていると思いますが、そのうちの大人しそうな方の妹が今回のメイン怪異です。つまり阿良々木月火が問題になるわけですね。
上の妹である火憐の方は前巻で問題解決しているので今回はにぎやかし要員ですが、何気に阿良々木ハーレムの一人になってしまっています。え、実の妹がハーレム要員!? という気がしないでもないですが、暦くんは妹にまで毒牙を伸ばします。物語の序盤から火憐ちゃんをベッドに優しく押し倒して、

「にいひゃん……いいよ」

とか言わせてます。「……いいよ」とか言わせてます! 何やってんだお前は! な、な、な、何やってんだお前は!

物語の展開的には

何気に怪異全開という感じで、ノリとしては怪人の出まくった「傷物語」に近いですね。殴ったり殴られたり変人が出まくって大暴れという力ずく感が似ています。
というか訳の分からないキャラクターを作り出すのが得意ですねえ西尾維新は。戯言シリーズとかでもそうですが、本当に特殊な変人を書かせたら一級品じゃないでしょうか。登場してほんの少しだけで新しいキャラクターをしっかりと立ててしまう変態的なキャラ造形は見事ですね。
・・・というか、極めつけの変人を物語に登場させているのに、物語自体がその存在をしっかりと包み込んでいるので、いわゆるキャラクターが「浮いた」感じがしないというのが本当に凄いところなのかも知れません。調和のとれた料理のように安心して味わうことが出来ます。
西尾維新って人は本当に希有な才能を持った作家のうちの一人だと思いますよ。こういう才能豊かな人はあまり制約とかを課さないで自由にやらせた方が面白い作品を生み出すのかも知れませんね。

総合

特にケチをつける必要がなく面白い。星5つ。
この作品をもってして「化物語」から続くこのシリーズも完結・・・かと思いきや、あと2冊ほど書くようです。ファンとしては嬉しい限りですね。普通の作家の場合露骨な引き延ばしみたいな事になって大抵残念な事になるんですが、そこは西尾維新ですから無難に面白い作品を仕上げてくれるに違いありませんしね。読者は安心して涎を垂らして待っていればいいという親切設計です。
ところで、私にしては珍しくこの作品のアニメを全話見ていたりするんですが、アニメの方も原作の魅力を引き出すべく色々頑張ってくれている感じで嬉しいです。ヒロインごとにオープニングテーマを変えたりとか・・・なかなか奇抜で手間のかかることをやっているなあ・・・なんて思いました。

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