ソードアート・オンライン(2)アインクラッド
ソードアート・オンライン〈2〉アインクラッド (電撃文庫) | |
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ストーリー
時は2022年。ゲームの世界は新しい領域に突入していた。
自らの感覚や行動を全てインタラプトして、ゲームの中での行動に置き換えることを可能にする《ナーヴギア》という端末が現れたことにより、ゲームプレイヤー達はまさに実体験のようにゲーム世界を味わい、そして行動することが出来るようになったためだ。
そしてその《ナーヴギア》を利用した一つのオンラインゲームが満を持してリリースされた。
その名を「ソードアート・オンライン」。
重層的、かつ複雑精緻に形作られた世界に多くのネットゲーマー達は狂喜乱舞し、ベータテスト段階から申し込みが殺到する異例の事態を呼び起こした。そしてキリトはたった千人という数少ないβテスターの一人だった。
そんな経緯の後、遂にサービスの正式開始がされた。サービス開始時に「ソードアート・オンライン」にダイブすることが出来たのは、幸運な1万人のゲーマー達。しかし、彼らが幸運と思えたのはゲーム開始からしばらくの間だけだった。
「これは、ゲームであっても、遊びではない」
強制ログアウト不能、ゲーム内での死が現実の死を意味する——。まさに生と死の仮想/現実世界に放り出されてしまった1万人のゲーマーの中に、やはりキリトも存在していた。生き残るにはゲームをクリアする他ないという状態の中で、過酷なオンラインゲーム世界での生存競争が始まる!
しかし・・・ゲーム世界に取り込まれた全ての人間が全てゲーム世界でのサバイバルに終始していたわけではない。過酷な環境の中で自分の居場所を見いだし、ゲーム内での生活を組み立て始めた者達もいた。そんな「決してトップには立たない」者達を取り上げた短編集です。
面白いです
メインストーリーが一巻で綺麗に完結してしまっている関係で、この二巻は一巻の出来事よりも過去の話という事になるのですが、それでも読ませますね。
短編一本につき新しいキャラクターを一人登場させるという王道的な作りなのですが、バランス感覚に優れているためかどの話もストレス無く読み進めることが出来る「ライトノベルのお手本」のような作品集に仕上がっています。上手い!と手を叩きたくなるような所は余りないのですが、ハズレがありませんね。
世界観がかなり個性的でありながら、登場するキャラクターをその世界に埋もれることないように生き生きと躍動させるその文章センスは、希有な能力を持っていることを予感させます。
しかしですが
敢えて苦言を呈するとすれば・・・それが弱点でもあるような気がしますね。
良くも悪くもアクが無いのです。ライトノベルとして「誰でもすんなり読める作品に仕上がっている」事は賞賛されるべき魅力であると思うのですが、それ故に強い個性も感じない・・・という気がしますね。なんというかキャラクター達に「執念」や「こだわり」のようなものを余り感じないのですね。
キャラクター達の割り切りが「ちょっと」良かったり、物わかりが「ちょっと」良かったり、都合が「ちょっと」良かったり、運が「ちょっと」良かったり・・・という要素が重なっている結果として、ストレスが無いのは確かですが、その分「全体の魅力」という部分にもう一つ難があるように思います。
そのアクの無さは
主人公のキリトに代表されるように思います。
キリトが一人の人間としての葛藤や苦悩を抱えていることなどはちゃんと描かれるのですが、その結末は決してキリト本人にとって「耐え難い程救いのないもの」ではありません。どの話も彼にとって「都合の良い」結末を用意しています。
結果としてこの短編集はちょっとした「キリト無双」の様相を呈していますかね・・・。もちろんそれがこの作品の心地良い部分でもあるのですが、私が「非常に楽しむ」にはもう一つ何と言いますか・・・「苦み」とか「渋み」というものに欠けるような気がしますね。
でも上で書いた通り、面白いことには違いないんですけどね。個人的にはもう一つアクが強い方が好みなのですが、これはこれで良いような気がします。
総合
安定の星4つ、でしょうか。
物語的なストレスを少なくしつつもちゃんとカタルシスを得られる良作と言えるのではないでしょうか。
何となく感じた事といえば・・・この作者の能力を表現する場合、「才能」という場合によっては脆そうな印象を与える言葉で飾るのは不適切なような気がするという事でしょうか。なんというか・・・弛まぬ努力の結果身につけた「技術」という言葉の方が適切なような気がします。才能と違って技術には積み重ねがある分隙がありませんね。そうした「隙の無さ」を物語全体から感じます。
一巻で話を決着させてしまっていますので、この「ソードアート・オンライン」シリーズが今後どうなっていくのかかなり興味津々なのですが、なんだかんだと上手いことやって話を作り出してしまいそうな気がしますね。今後にも期待です。