Le;0 ー灰とリヴァイアサンー

Le;O-灰とリヴァイアサン- (一迅社文庫)

Le;O-灰とリヴァイアサン- (一迅社文庫)

ストーリー

地殻変動により極地の氷が溶け出し、多くの大陸が海の底へと沈んでしまった世界。
もちろん日本も例外ではなく、殆どの土地は海面下に沈み、数こそ多いものの小さな島々を残すのみとなっていた。しかもその海からは大海獣リヴァイアサン)と呼ばれる「人間を捕食する海洋生命体」が現れるようになり、人間の暮らしをさらに脅かした。
しかし、そのような世界でも人間はしぶとく生き残っていた。大海獣に対抗するために、人間達は奇妙とも言える方法を編み出したのである。それは、吸血鬼となった人間を戦力としてリヴァイアサンと戦わせるというもの。
リヴァイアサンたちの登場と時を同じくして人間達の中に現れるようになった吸血鬼は、伝承にある通りの能力を持っていた。怪力、吸血本能、そして太陽に弱く、ニンニクを嫌う・・・。そんな吸血鬼たちは、人間から突然変異することで出現するのだった。
しかし吸血鬼は数が少なく、伝説のように血を吸った相手を下僕にすることは出来ない。異能の力を持ちながらも人間の優位に立ちきれない吸血鬼たちは、人間たちと自然に共生関係を築くことになったのだった。
物語の舞台となるのは数多くある島の一つ・大蒜島。そこに奇妙な二人連れが漂着したところから始まる。一人の人間の若者と、それに従う吸血鬼の女性。彼らはそれぞれ名を椚顕九朗(くぬぎけんくろう)、月姫といい、顕九朗は吸血鬼を扱う転生士(サイクラー)であり、姫乃は吸血鬼であった・・・。
というちょっと変わった世界観で描かれるファンタジーテイストのアクションものです。

おお〜

何気に面白いですね。世界観が変な所もなかなか面白いのですが、人間、大海獣、吸血鬼の関係が上手くできています。

  • 人間は吸血鬼に対して数の優位を持つが大海獣には脆く
  • 吸血鬼は大海獣を倒す力を持つが人間の補佐が必要で
  • 海獣は人間を蹂躙するが吸血鬼には狩られてしまう

というちょっとした「三すくみ」状態になっています。で、結果として人間と吸血鬼の共生関係が出来上がっているのですが、普通の作品であれば恐れられる吸血鬼が「人類の協力者」という位置づけで出てくるところがなかなかユニークではないでしょうか。
そして吸血鬼の人間の間で働く職業についているものが転生士(サイクラー)と呼ばれる人間という訳です。

主人公の顕九朗はその転生士で、姫乃という吸血鬼を連れています。
彼らが偶然流れ着いた大蒜島では、大海獣に立ち向かうための大事な戦力である吸血鬼の数が3人しかおらず、海に対しての護りが不安な状況になっていた・・・というのが話の導入になります。そして顕九朗たちは流れ着いた島の状況を聞くや、転生士として協力することになる・・・という形で話が進みます。
ところで顕九朗ですが・・・なんというか主人公なのにおっさん臭い感じがしますね・・・。が、それが味と言えば味ですかね。姫乃の方はお淑やかで礼儀正しい吸血鬼という・・・メインキャラ二人が定石から微妙に外している所が良い感じです。

それに加え

小さな島々となった日本には幾つかの組織が存在して、その勢力が大蒜島を脅かしているという状況にあります。
こうした幾つかの要素が組み合わさって話に妙な緊張感を生み出しつつ、太陽きらめく砂浜に吸血鬼がいるという状態で変な脱力感を醸しつつ、話は進んでいくことになります。
設定にちょっとしたズレ? というか違和感? あるいは練り込みの足り無さ? のようなものを感じる部分はあるのが難と言えば難ですが、全体として良くまとまっているんじゃないかと思います。これでもう一つプラスアルファがあればもっと楽しかったような気がしますが、それは贅沢の言い過ぎでしょうかね。

総合

サービスというか応援の意味も込めて星4つかな?
展開にご都合主義的なところを感じたりもしましたが、盛り上げるところは盛り上げてくれましたし、ライトノベルとして普通に楽しませてもらいました。強烈に面白いという印象ではありませんが良い線行っている良作ではないかな〜なんて思います。普通に続編を期待したいですね。
イラストも作風にあっている感じで好感触です。目力があっていいですね。本編の方の白黒イラストもなかなかでした。

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