パパのいうことを聞きなさい!

パパのいうことを聞きなさい!  1 (スーパーダッシュ文庫)

パパのいうことを聞きなさい! 1 (スーパーダッシュ文庫)

ストーリー

瀬川祐太は大学に合格したばかりの若者で、楽しいこともまだまだこれから。
祐太は奨学金などもとっている真面目な大学生で、早くに親と死に別れてたった一人の姉に育てられたという過去を持つ。なので未だに姉には頭が上がらないというちょっとシスコン気味な所がある若者だった。そのたった一人の姉がバツ2の子持ちの男の所へ嫁に行ったことについては複雑な心境でいる祐太だったが、度々姉には「早く自分の家族を持ちなさい」と言われていた。
ある時姉に用事を頼まれて、姉の旦那の連れ子である二人の少女・小鳥遊空(14)に小鳥遊美羽(10)に、姉の子供である小鳥遊ひな(3)と会った祐太は、その女の子たちがとても良い子ぞろいだという事を知ることになる。それを切っ掛けに祐太は姉の結婚についてのわだかまりが溶けていくのを感じ、この子たちとも仲良くやっていけるような気がした。
そんな矢先、姉夫婦を悲劇が襲う。二人の乗った飛行機が海外で行方不明になったというのだ。姉の死という余りにも大きな喪失に呆然としてしまった祐太だったが、それ以上の問題は残された姉夫婦の三人の娘たちだった。三人を引き取れる先が無いということを知った祐太は、大学生の身でありながらこの三人の女の子を引き取ることにする・・・。
ライトノベルでは珍しい家族を中心に置いたストーリーです。

この作者の

別のシリーズ「迷い猫オーバーラン!」になんとなく縁が無かったので、この本も手に取るつもりは無かったんですが、うーん、周囲の評判などを見ていて購入を決めました。読んでみると・・・こちらの方が肌に合いますね。
まあネタとしては年下の女の子三人とのハチャメチャ系同居生活という事になるのでしょうが、事情が事情でしかも特殊能力持ちとかがいないリアル系ストレートなストーリー構成なので、根っこの部分では完全にシリアスです。
特に時間が無い、お金がない、経験がない、という辺りは結構丁寧に書かれていますね。・・・まあ正直それでもかなりライトノベル補正がかかっているのであり得ないほど楽していますが・・・一介の大学生が背負うにはかなり重たい荷物であることは間違いないですね。
とにかく単純に面白おかしいホームコメディでは無いことは確かです。ある意味主人公である祐太の苦労を楽しむ話と言えなくもないですね。

まあ一応

同居する事になる三人の女の子がそれぞれ良くできた娘(外見と内面の両方において)たちなので、読んでいて華やかな事は確かです。
祐太を異性として意識してしまっている関係で素直になりきれないけれども良い子の長女・空。しっかりしていて対人関係能力や調整力といったところに非常に優れていてしかも可愛い次女・美羽。素直で人なつっこく元気で真っ直ぐな三女・ひな。それぞれがなかなかに魅力的で嫌みがないので読んでいて華があります。
もちろんそれは主人公の祐太にも言えます。浮ついたところの少ない真面目な若者として書かれる祐太はやはり嫌みがありません。もちろん大学生ですので頼りがいという意味ではありませんが、足りない部分をなんとかして補おうと努力する様は読んでいて悪い気分のするものではないと思います。
・・・まあ真面目に言えばもうちょっと大人になれとかもっと後先考えろとか色々ありますけれどもまだ大学1年生の19歳ですし、それになによりライトノベルだという事を考えると、まあ珍しく普通の苦労人だよな・・・とか思います。

もちろん

祐太が大学生だという部分が無駄になるわけでもありません。
祐太は大学で一人の女性(美人でスタイルも抜群だが極めて変人)に惚れ込んでしまいますし、さらには家にしょっちゅう押しかけてくる同級生(家事その他万能なイケメン)がいたりします。祐太は彼らの手も借りて、三人の女の子と同居していくことになります。・・・まあそれでもあっちこっちでひずみが出るんですが。
結局の所この話は寄る辺を失った4人の子供たちが集まって一つの家族になるに到る物語という事になると思います。ライトノベルで「何かに苦労する主人公」というのは別に珍しくもなんともないですが、この主人公ほど「食費」やら「光熱費」やら「学費」といったものに生々しく苦労している主人公は割と少ないんじゃないかと思います。
いかな貧乏でもそれが自分一人の問題だったらどうとでもしてしまえますし、まあ二三回メシを抜いたところで死ぬわけでもないと割り切れますが、彼の場合は女の子三人の健康やら文化やら教育やらを背負っているのでそう簡単にQuality of Lifeを切り捨てるわけにはいかない・・・というあたりが一般ライトノベル的貧乏と違うところですね。

総合

星・・・4つにしておこうかな・・・。
正直、4人の子供たちが苦労する意外にはとりたててなにごとも起こらない刺激のない話ではあります。でもまあ普通に近い生活を普通に近い形でライトノベルにすればこうなるのが当たり前で、そして当然突然都合の良い特殊能力に目覚めたりもしないわけです。
そういう意味ではライトノベルとしては珍しい位に「当たり前に起こりうること」をベースにした物語であるということが出来ます。まあ多少友人関係がチート気味の性能の持ち主だったりはしますし、そんなムチャは普通通らないだろという出来事があったりもしますが、その程度はご愛敬といったところじゃないですかね。なんてったってライトノベルなんですから。
とにかく、魔法も超能力もないアットホームなライトノベルを読んでみたいという場合には手に取ってみても悪くないんじゃないでしょうかね。濃いライトノベルを読み過ぎてちょっと脳みそがもたれ気味になっているような場合には特にオススメな作品という気がします。
イラストはなかじまゆか氏です。個人的にはとりたてて優れているとかは思いませんでしたが、可愛らしい女の子を描く絵師さんだなあとは思いましたね。あと主人公の祐太をちゃんと絵の中に入れているのが良かったですね。野郎は絵にならない事が多いからなあ・・・。

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