機巧少女は傷つかない(2)

機巧少女は傷つかない〈2〉 Facing

機巧少女は傷つかない〈2〉 Facing "Sword Angel" (MF文庫J)

ストーリー

ロンドンにある世界の機巧魔術の最高学府であるヴァルプルギス王立機巧学院に一組の男女がいた。人形使い赤羽雷真と彼に使役される自動人形の夜々である。雷真はこの学院内で行われる人形使い同士での決闘である「夜会」を勝ち抜き、「魔王」と呼ばれる頂点を極めて脱法的な特殊な権力を持ちたいと願っていた。
「魔王」を目指す雷真の心の中には一つの願いがあったのである。それは復讐という願いであり、それを実現するためには「魔王」となることが必要だったからである。人形使いとしての経験が少なく、学院内で<下から二番目>(セカンドラスト)という結構不本意な二つ名を付けられていた雷真だったが、禁忌に関わる事件を解決した事によって学院内での彼に対する注目は高まっていた。
有能だが対人関係に問題のある少女人形使いであるシャルシグムントとの出会いや幾つかの戦いを経て「夜会」への参加へとこぎ着けた雷真だったが、早速彼をつけ狙う者が現れる。それはやはり人形使いの少女である奇妙な少女・フレイとラビのコンビである。
怪しげで冗談のような攻撃? を繰り返すフレイに対しての距離を測りかねていた雷真だったが、このフレイが新たに血生臭い事件を引き連れてくるのだった。
ん〜大体こんな感じでしょうか。シリーズ2冊目となるファンタジックバトルノベルです。

それなりの

キャリアを持つライトノベル作家であるだけあって、キャラ立ては慣れたものですね。
個人的には「ちょい役」のキャラクターを大したエピソードもなしに本編に放り込んで来る(その代わりにちょこちょこと繰り返して登場する)のは、後々誰だか分からなくなって微妙に混乱するので余り好きな手法ではないのですが、キャラクターの見せ方が結構派手なのでまあ読めてしまいますね。
雷真と夜々の半エロと言えるような掛け合いは1巻から変わらずに健在ですので、読むのに苦労するという事はあまりなさそうですね。

「どういうプレイですか、雷真。女を部屋に連れ込んで……吊して……!」
「妙な誤解をするな! 俺はおまえと一緒だったろ!」
「更衣室で0.3秒ほど目を離しました!」
「0.3秒じゃ口説けもしないからな? あと、窃視は犯罪だからな?」

軽妙というかライトノベルの王道的なやりとりでページを積み重ねていくので、不安感のない展開で始まる感じです。

でも

なんというか一通り読んで感じたのは・・・何かこう・・・妙な欲求不満な感じが残るってことでしょうかね・・・。
ページ数が足りないというか、文字数が足りないというか、そんな感じです。起承転結は綺麗に付いているんですが、何やらもう一歩踏み込みが足りない関係で致死の一撃にならないという印象でしょうか。
話はあっちこっちに飛びつつもしっかりとしたペースで進んでいくので、正直読む前からケチをつけようと思わない限り充分に安定して楽しめるのですが、読み終わっても心に響くところが殆ど無いような気がします。だからって別に大層なテーマとかを話に盛り込めって言いたいわけではなくて、なんというかこう・・・二日目のカレーのようなコクが欲しいというか、もう一つ裏も表も欲しいというか、そんな気分です。
今のままだと本当に読んで終わりという感じの作品になってしまいそうなので、そこだけが気になりますね。

話の方は

本格的に「夜会」が始まって、それに伴ってのトラブルが色々と襲いかかってきて、またしても雷真が血まみれになったり熱血したり、夜々は慌てたりやらしいことを考えたり、シャルが正当派ツンデレとしての本領を発揮したりという感じですね。
実は本編内にはグログロしい展開なんかもあったりするんですが「MF文庫的にはこの位のところで限界なのかな〜?」という事を想像させてしまうような書き込みの制限(?)がされているような感じで、いわゆるマジ凹みをしそうなエグい描写は一切ありませんね。そういう意味では本当に安心な作品です。
・・・まあそれが理由かどうかは分かりませんが、最近(いや前からか?)のMF文庫から出ているライトノベルって微妙に「食い足りない」感じなんですよね・・・中学生、というか下手したら小学生あたりまでを読者層として視野に入れている感じとでも言いましょうが。
まあ出版社がこの欲求不満の原因かどうかは分かりませんので、もう少しじっくりと様子見をしたいところではありますね。

総合

もう一つすっきりしないなあ・・・という星3つ、でしょうか。
話自体はライトノベルのお手本のような出来ですので、読んでいて不満を感じることはないんじゃないかと思いますが、多数出版されている他のライトノベルと明確な差別化に成功しているか? と言えば「そうとは言い難い」というのが本音です。
1巻でも消化不良というような感想を持った記憶がありますが、この2巻でも似たような印象を持ってしまいましたね。つまらなくはないけど面白くもない、暇つぶしにはいいけどどうしても読みたいかというとそうでもない、というところです。個人的にはもう少し大人もターゲットに入れた作品を書いて欲しいとか思うのですが(実際にこの作者の人はそういう話を今までも書いてきていますしね)、そんな希望通りに上手くはいかないものですね。
イラストはるろお氏です。線の細い絵柄ですがカラーイラストは非常に良い出来だと思います。白黒イラストの方も何気に好きですね。カラーイラストとは違った味わいがあるので、イラストで言えば一冊で二度美味しい本に仕上がっているんじゃないかと思います。