カンピオーネ!(7)斉天大聖

カンピオーネ! 7 斉天大聖 (カンピオーネ! シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

カンピオーネ! 7 斉天大聖 (カンピオーネ! シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

ストーリー

神を殺めた者は、その神の持つ権能を奪い取る簒奪者となるという――。
そして極東に一人の「神殺し」が存在した。名を草薙護堂といい、超越者である「カンピオーネ」となるまでは比較的普通の高校生男子の一人だったが、闘神ウルスラグナを結果的に殺した彼は今や世界に7名しかいないというカンピオーネの一人であり「王」と呼ばれる存在になっていた。本人は迷惑そうであったが。
しかし、本人の気持ちをよそに王者としての力を備えた護堂の周囲はいつでも騒がしいことになる。先だっては大陸から7人のカンピオーネの一人として強大な力を持った羅翠蓮が訪日し、結果として護堂と大激突をすることになったばかりだった。辛くもカンピオーネ同士の戦いで勝利(事実上は引き分け)を拾った護堂だったが、その戦いの背後でさらに恐るべき敵が現れる事になってしまう。斉天大聖の出現である。
万里谷ひかりの身体を乗っ取って現世に出現した斉天大聖はその荒ぶる神力を縦横無尽に使い、日光を蹂躙したのだった。周辺住人は猿に変化させられ、斉天大聖の走狗となってしまった。まつろわぬ神の出現――まさにカンピオーネの「神殺し」の力が必要とされる時である。
だが肝心の護堂は羅翠蓮との戦いのダメージがまだ抜けていない状態であり、すぐに神と戦う訳にはいかない。危機的状況に陥った護堂たちだったが・・・という感じで始まる7巻です。

萌えますが

燃えますね!
今までの話でも神々と天地を揺るがすような激闘を重ねてきたこのシリーズですが、この7巻はまさに大戦争という感じです。全編を通じて戦い、戦い、戦い、という印象になってます。もちろん息抜きが無いわけではないですが、あっちでバトり、こっちでバトる・・・という展開の連続です。
カンピオーネの護堂はもちろんですが、彼に付き従っている少女達である、エリカ、祐理、リリアナ、恵那の4人も、その全身全霊を傾けて稀代の大神と正面衝突を繰り広げることになります。完全に総力戦ですね。それぞれが持つ力を最大限に繰り出して、時に護堂を助け、時には助けられて手の届くはずもない強敵である「まつろわぬ神」にぶつかっていきます。
こう書くとなんだか死亡フラグの2、3本も立ちそうな悲壮感でいっぱいの特攻という感じですが、そこは神殺しである「カンピオーネ」に付き従う少女達、どれだけ打ちのめされても絶望するような心は持っていません。神との戦いは「王者に侍る者に与えられる当然の勤めである」と受け止めて、まさに勇猛果敢に立ち向かいます。

それにつけても

面白い話ですよねえ。何気にお堅い内容が羅列されている話なんですが、読みにくさが殆どありません。あまり見かけない言葉が多数出現したりもしますが、それが面白さを損なうという事がありません。もちろん予め神話や呪法などに詳しければもっと楽しめるのかも知れませんが、そんな楽しみ方が出来る人の方が絶対に少数派だと思いますので、そうした楽しみ方が出来た場合は人の2倍は楽しんでるとか思った方が良いんじゃないかと思います。
それに加えて妙に人間くさくて傲慢、尊大な神々の描写もまた魅力の一つでしょうか。本来なら「超越者」として泰然自若とした描写がされるであろう「神」という役所ですが、元々八百万の神々を仰いでいた日本人の心の根っこに響いてくるのか、人間的な神々の姿が不思議なほどスッと受け入れられるんですよね。日本が一神教が当たり前の国民性を持っていたら絶対にこの話は生まれていなかったに違いありません。

でもそれ以上に

個人的に気に入っているのがこの話の主人公である草薙護堂その人なんですよね。彼を取り巻く少女達の可憐な花々のような魅力はもちろんこの話を彩る大きな要素ですが、それ以上にやっぱり中心に存在する護堂の魅力が光っています。

「おまえが生きている間も死んだあとも、どんな神様より俺を優先させるなら、神にも悪魔にも運命にも、決してお前を渡しはしない。おまえを俺のために生きさせてやる。もしそうするなら、そのために必要な力をくれてやる。俺の仲間にしてやる。どうだ?」
一生大切にすると誓う。必ず幸福にすると約束する。
そんな真似は、やさしいだけしか能がないヤツらがすればいい。俺はちがう。王のために生き、王のために死す。呪いのような生を押しつける。
神を殺める者のそばにいるべきは、そういう生き方を受容できる人間だけなのだ。

これは作中で護堂の心の内に閃く考えですが、まさに「王者」としての振る舞いと言えるでしょうね。まあこの時は精神的にも肉体的にもちょっとしたブーストがかかっていた時なので普段とは少し違いますが、本気の護堂はこんな少年です。折れず、曲がらず、不屈の闘志をもって荒ぶる神々に対峙しうる者だけが持つ気概の持ち主であるという事をこれでもか! という感じで示してくれます。
・・・結果として護堂の周囲の少女達は・・・まあ大変な事になっちゃうわけですが・・・。
まーぶっちゃけ恒例のアレのシーンはもうほとんどナニしちゃってるのと変わらないですな! 「私」を「王様」の「女」にして! 最初の「痛い」のは「我慢」するから、どうか「王様」の「お情け」を「体の奥」に「欲しい」の! ・・・とかそんな感じです。エリカ、祐理、リリアナ、恵那の四者四様ですが、彼女たちをいっぺんに相手してしまうので、まーなんというかライトノベル初の5Pと言って良いんじゃないかという展開が待ってたりします。
王様ってすげーよな・・・。

総合

大満足の星5つですね。
萌えられればそれでいいんじゃないか〜? みたいな作品が増えつつある中で、こういう一本芯の通った物語を展開してくれる作品と出会い、そして戯れるのは私にとって最高に楽しい時間の一つですね。正直日常系グダグダラブコメディとかに食傷気味だったので、実に刺激的に感じました。このシリーズはライトノベルで今一番面白いシリーズの一つなんじゃないかと思ってます。
ラストでは次の話に進む伏線なんかも張られたりして、ますます目が離せないですね。
惜しむらくはイラストのシコルスキー氏が可愛い女の子しか描けないというところですが、まあその分女の子達が魅力的なので勘弁してやるか・・・? という気分ではあります。作中にはバトルシーンが満載なのに、動きを感じさせる戦いの絵が一枚も無いという悲しい事態ですが、これはもう諦めるしかないんでしょうねえ・・・。

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