やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(2)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。2 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。2 (ガガガ文庫)

ストーリー

比企谷八幡の高校生活は平塚先生に無理矢理「奉仕部」に入部させられたことによって劇的な改善を見せたりする程ヤワではなかった。

彼はまさに生え抜きかつ古参とも呼べる年期入りのぼっちなので、ちょっとやそっとの事では揺らがないのである。というかそもそもぼっちが悪いとかダメだとかいけないとか思ってない(と本人は強く主張している)ので、改善の余地などないのだ。それは同じ奉仕部に所属している雪ノ下雪乃にしても同じ事であり、二人は本人達にも良く分からない接点だけを持ちつつ今日も高校生であった。

しばらく前に関わった出来事から奉仕部には由比ヶ浜結衣というビッチ(と八幡はカテゴライズしている)がたむろするようになったし、中二病臭がキツ過ぎるのでもう光学迷彩を着ているから見えないという事にしたい男である材木座義輝や、どうして男なのかいや本当に男なのかどっちにしたって俺がお前を守ると言ってあげたい戸塚彩加などが顔を出すようになっていた。

しかし奉仕部として特にやることがないという状況が変わるわけでもない。何事もなければそのまま毎日が地味に過ぎていくわけだが、時々トラブル解決の依頼らしきものが飛び込んでくることもある。それを連れてくるのはある時は八幡の妹の同級生であったり、ある時はリア充で有名な葉山という少年だったりするのだが、奉仕部はなんだか良く分からないが彼らの問題解決に力を貸したり貸さなかったりという感じだった。

という感じで2巻は展開するのですが。楽しい作品はあっという間に読み終わってしまうのが悲しいですね。

主人公の

八幡の全くブレのない腐敗っぷりと言いますか、あるいは磨き抜かれたぼっちスタイルがいっそ清々しいシリーズ2巻ですね。

まあ主人公が簡単に作品のメインテーマ(ぼっち)から離れるような行動を取るとも思えないので既定路線と言えばその通りなんですが、八幡による安定したロンリー思考&アローン行動が作中に前作と同様にタップリと盛り込まれているので寂しいときも安心です。

なんか敢えて横文字使って表現してみるとシームレスに1巻からこの2巻へと読み進めることが出来るという事です。早い話が1巻と同じように楽しいと言うことなんですが、無駄な横文字とか使うって行動はぼっちへの第一歩って感じがしませんか。本人だけまるっと納得して使っている割には、知らない人からするとうざったいだけだという辺りが特に。

なんか難しい概念とかビジネス用語とか覚えてこれはしたりとばかりに使いまくり、周囲を置き去りにしていたつもりが気がついたら自分の周りに誰もいないので、その段階でやっと「自分こそ青春五里霧中?」という事実に気がつくも時既に遅く、遠くからキャッキャウフフと声がするのをお地蔵さんのように聞いているだけになってしまうという展開がよくあります。・・・ありますよね?

・・・いやいや、私じゃなくてですね、友達がそんな話をしてたんですよねあれは中学の時のクラスメイトが知り合いで、知人と称するに至る経緯というのがまた複雑ですのでとりあえず以下略。

お話の方ですが

よくもまあこれだけなんてことない出来事だけで二冊も仕立て上げられるなあという気分になりまして、素直に感心したりしました。

いやだってねえ・・・私とかでも流石にそこまで高校時代のぼっちライフの事とか覚えてないですもん。まあ私の場合は遠く過ぎ去った過去になったからという事もあるんでしょうが、他のまだ若いラノベ作家が必ずしも成功していない物語の作り方を軽々とやってのけている所は本当に見事じゃないでしょうか。どんだけ怨念抱えてるんだか想像するだに恐ろしい気がします。

まあ作者もあとがきで自分の青春を肯定的に振り返ったりしていましたが、もの凄い否定が積み重なった地層も、活用の仕方によっては肯定になるという典型的な形じゃないですかね。作者の人がドンドロドロな青春を送ったお陰で我々がこの物語を楽しむことが出来ているのだ、作者のねじ曲がった青春こそこのラノベの楽しさの原動力だとか思うと、いっちょタイムマシンとかで遡って当時の作者をもうちょっと痛めつけたろか? とか思いつく私はちょっと鬼ですか?

ちなみに

相変わらずキャラクター達は無駄にぼっちで生き生きしてます。

八幡はいうに及ばずですが、彼を今風に残念キャラとか言ったら負けだと思っている私です。なんだか分かりませんがそんなのよりもっと病気が根深いって意味でですけどね。

そう、それは中学二年生になったばかりのころ、俺がくじ引きで学級委員になっちまったとき、可愛い女子が立候補して、その女子が『これから一年間よろしくね』とはにかみながら言い……。
っぁあっ! あっぶねぇ! またあの意味が全っ然わかんねぇ思わせぶりな台詞に騙されて大怪我するところだったぜ!
既にそのパターンは一度味わっている。訓練されたぼっちは二度も同じ手に引っかかったりしない。じゃんけんで負けた罰ゲームの告白も、女子が代筆した男子からの偽ラブレターも俺には通じない。百戦錬磨の強者なのだ。負けることに関しては俺が最強。

・・・見て下さいよこの安定感。どんだけ土台が固いんだって感じですよね。ブレないですね! 彼はブレない! いや〜持ってますよ彼は!

まあ八幡に限った話じゃないんですが、やはり彼と雪ノ下の二人がツートップという感じではありますよね。雪ノ下はおそらくヒロインのはずなんですが、デレとか一切関係ないと思わせる鋼のようなぼっち魂が凡百のヒロインと違うところです。

「初めまして。雪ノ下雪乃です。比企谷くんの……。比企谷くんの何かしら……クラスメイトではないし、友達でもないし……誠に遺憾ながら、知り合い?」
「何その遺憾の意と疑問形……」
「いえ、知り合いでいいのかしら。私、比企谷くんのこと名前くらいしか知らないのだけれど。より正確に言うのならば、それ以上のことを知りたくもないだけれど。それでも知り合いと呼ぶのかしら」

まあ八幡はオワコンなので仕方がないとしても、由比ヶ浜に誘われた勉強会でも全くぶれずにさっさとヘッドホンをはめて個人の世界に引きこもってから勉強を始めるという「高校生の言うところの勉強会」を真っ向否定するスタイルを自然ととれる女です。雪ノ下さんマジぱないですね。

まあこんな感じで主人公級二人が重度のツン(デレ期不明)なので、ラブコメ的には由比ヶ浜(ビッチ)に頑張ってもらうしかないという惨憺たる状況です。いっそ戸塚彩加さん(♂♀?)に頑張ってもらう方がお色気シーンの描写までの道のりが近い気がするのは私だけではないはずです。

総合

いや面白かった! 星5つですね!

今作ではリア充まっしぐらのクラスメイトである葉山くんの悩みを解決するにあたって、スクールカーストとかあるいはクラスメイトとよばれるグループの微妙すぎる人間関係をあぶり出してみたり、姉の行動がすっかり変わってしまったという弟の訴えに応じて、新キャラの川崎沙希の秘密に迫ったりするというちょっと王道っぽい展開なんかも交えて、飽きさせません。

八幡の妹の小町のキャラを掘り下げたり、由比ヶ浜の微妙な心境やらを描き出してみたりとか、さらには雪ノ下のプライベートの秘密やら抱えている傷、はては過去のアレとかも見え隠れしてきていて、ますます目が離せません。気がついたらぼっち的青春ど真ん中な燃えラノベになる可能性なんかも残している感じが侮れません。という訳でさっさと3巻出せやコラ。

イラストは変わらずぽんかん⑧氏です。よく見てみると普通に女の子過多のイラストがほとんどなんですが、漫画的な表現を上手く配置しているせいか、飽きさせません。もうちょっと絵の幅を広げてくれれば(女の子ナシで一枚仕上げるとか)もっと楽しめると思うんですけどね。可愛いイラストが嫌いなラノベ読者ってそういないと思いますが、やっぱり一冊通してメリハリがあった方が美味しく頂けると思うのですよ。そういう意味で1巻の材木座の一枚はいいアクセントでした。

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