ゴールデンタイム(2)答えはYES

3巻の感想? 明日にはアップしたいですよ!?

ストーリー

大学入学直後から幾つかの人生の岐路(選択ミスでデッドエンドあり)に直面しはしたものの、なんとか生還することに成功した何の変哲もない若者であるところの多田万里(ただばんり)は、今まさに女性におつきあいを申し込んだ挙げ句の果てに断られていた。
その相手は何を隠そうあの加賀香子(かがこうこ)。ゴージャスで完璧な外見を持ちながらもあれこれと大変な性格のお陰で長年懸想していた相手の柳澤光央に絶縁状を叩きつけられた程の女性である。
万里が一体何を思って香子に告白するに至ったのかはまあ色々あるのだが、告白に失敗したからと言って人生が終わるわけではなかったし、自分の人生から香子が消え去ってしまうわけでもなかったので、万里は大学で今日も香子と会っていた。いわゆる一つの――お友達として。
万里のそんな行動には少しばかりの期待も混じっていたかも知れない。友達とはいえこうして時間を積み重ねて行けば、いつか何かが生まれてもおかしくないんじゃないか――そんな気持ち。でも、それをぐちゃぐちゃにかき混ぜるような気持ちが無いわけでもない。サークルの先輩でリンダこと林田奈々と万里の間には、記憶を失ってしまう前には大切だったと思える繋がりがあったことを知ってしまったからだ。でも今は――ない。消えてしまった。自分の失った過去と一緒に。リンダもそうなのだろうか? 分からない。
そうして香子に振られながらも答えの出ないあれやこれが頭から離れない万里。でも大学生としての暮らしは続く。過去を失ったままの万里の暮らしも続く。この先もずっと? ――答えはYES。
コメディの皮を被った猛烈シリアスで読者の心をちょい抉る、ライトノベルとしてはちょっと大人びた青春ストーリーの2巻です。

これを書かないと

必然的に3巻の感想が書けないので、今の私はちょっと必死です。
いや別に2巻をキングクリムゾンばりにすっ飛ばしても平気なんですけど、はっきりとケツの座りの悪さを感じてしまったのでこうしてたしたしとキーボードを叩いているという訳ですよキミ。嫌々という訳じゃないのになんだか苦しい作業ってあるんだなって事を今しみじみと感じている最中です。なんなんですかねこの妙に煮詰まる気持ちというか、締め切りに追われているという感じ。プロでもないのになんなんだ。多分その辺りの何もかもがたけゆゆのせいだと思うので、痩せる呪いとかかけておこうと思ってます。
いやそれほど分厚い本でもないんですけど、もの凄い中身が動いているんですよ2巻は。だから最新の3巻の感想を書くつもりなら2巻の再読が避けて通れない(クソ忙しいのに)訳でして、だったら感想だって書いちゃえばいいじゃんかさという結論になるのは当たり前の花品分けです。まあ少なくとそう思える程度にはこのシリーズが好きってことでもあります。

うん

とらドラ!」とは全然違いますけどね。好きなモノは好きですよね。
変な言い方ですけどたけゆゆと同じ時期に同じ大学とか行ってたんじゃないかと思うくらいに、自分が過去に体験していた出来事をなぞるような出来事が作中で連発されるので、本当にもう万里が他人って気がしません。いや万里みたいに女の子とのイベントは多くなかったですけど、それでもまあ色々と盛り上がったり盛り下がったり、馬鹿騒ぎやら乱痴気騒ぎに興じた時期もありましたわな、という事な訳です。
胃がねじ切れるような辛い思いをしたのも大学生の時でしたが、世の中がピンクに見えるほど素敵な出来事があったのも大学の時でしたしね・・・さようならと、こんにちわの、両方が満遍なくあの時代にはあったのですよ。だからとても優しかったし、とても残酷でした。明暗のはっきりした時間は年輪のように自分の中に残り、今の自分を支えています。

まあ

自分語りを繰り返してもうっとうしいだけなのでこのくらいにしますが、とにかく読ませますよ。
実は作品としては何気に大人っぽいので、ちょっとえぐさを感じる瞬間が多々あります。傷つけたり傷つけられたり、必ずしも好きになれそうにないような行動を取ってしまうキャラクターが出てきたりと、アクという意味では前シリーズよりずっと強くなっていると思います。
主人公の万里だって間違っても聖人君子ではないし、後ろ暗いと思う過去が無いわけでもない。特に記憶を失ったという事実はこれから先も彼の前に暗い影を落とし続ける事は確実だと思うのです。もちろんそうした秘密は香子も持っているでしょうし、リンダもそうに違いありません。
でも何でしょうか、それでも好きなんですよね。いや、それだから好きなのかも。どうしたら良いのか分からないことだらけで、自分の殻だって簡単には壊せなくて七転八倒する主人公たちの姿は、本当に今までのどこかで自分も出会った事のある瞬間を見事なまでに切り取っていて、目が離せないのです。美しい被写体だけを写真にしたものが評価されるわけではないように、青春のやりきれなさを少しの笑いと一緒に切り取ったこの作品には、他にない美しさがあると感じてしまうのですね。

総合

星5つですよ。たけゆゆが好きなのは確かですけど、それだけじゃないんですよ。
彼や彼女は私なんです。そう思えてしまったらもう悪い星は付けることが出来ません。それは身びいきというものではなくて、何というか・・・いつだって思い出は美しく見えてしまうものでしょう? 苦しい悲しい辛い、そんな言葉無しで語れない時間が沢山あったことも確かです。でも、遠く過ぎ去った所からそこを見てみると、あちらこちらに小さな宝石が転がっていることに今気がつく――そんな気分なのです。
だから彼らを否定することは、今始めて見つけた宝物をただのゴミに戻してしまうことのように感じるんです。なんかこんな事書いていると「何言ってんだこの野郎?」とか思われる可能性大だと思いますが、まあいつも通りのほどよい電波が出てしまったのだとか思ってご容赦下さいね。まあなんですか、この悪文をここまで読んでくれたキミなら許してくれると信じております。
イラストは「なんでお前が絵を描いているんだ」駒都えーじ氏です。悪くないなと思えたのは白黒で一枚くらいで、あとは作品との乖離の激しいつまらない絵ばかりでしたね。この人一体何が評価されている絵師なんですかね?