侵略する少女と嘘の庭

侵略する少女と嘘の庭 (MF文庫J)
侵略する少女と嘘の庭 (MF文庫J)清水マリコ  toi8

メディアファクトリー 2006-02-24
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おすすめ平均 star
starやわらかい
star薄暗い雰囲気が特徴です
star嘘シリーズ三部作、三作目。

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正直読み始めた時は、幼馴染という曖昧な男女のグループに一人の女の子が加わることで、それぞれが持つ欺瞞が暴かれていき、少年少女達は苦い思いを抱えながら離れ離れになって行く・・・といった展開を予想していたが、良い意味で期待を裏切られたという印象。侵略する少女は残酷な天使ではないし、ましてや裏切りを行う魔女でもなかった。仄かな優しさと思いやりに満ちた良作。
少年少女達の微妙な心の動きを良く描いていると思う。特に主人公の中山りあ早川牧生が「嘘の庭」で行うやり取りは良い。中山りあのアンバランスな精神を反映した危うい魅力も良く表現できていると思う。これはtoi8の書く挿絵にも多分に助けられているのではないか。この小説のイラストはイメージを膨らませる良い材料になっていて、とても秀逸。 実に魅力的。
しかし個人的にはいまいち描写の掘り下げが足りないような感じがしたし、若さの持つ瑞々しさをもっと文章の端々から表現して欲しかったところがあるのだが、清水マリコは叙情的な表現より叙事的な表現を積み重ねて描写するタイプの作家のように感じたので(違うかも)、まあそのあたりは好みの問題と言ってしまっていいと思う。
普通の現実世界を題材にした青春小説なのだが、大人からみればもうこれはファンタジーと言って良いのではないか。少年少女達の過ごす世界は大人たちからすれば十分に幻想的だから。
こんな青春時代を送ってみたかったと思わせる良作。おすすめ。
しかし・・・作中に出て来る「月刊ふしぎ」誰が読むんだコレ。シュール過ぎる・・・。