やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(4)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。4 イラスト集付き限定特装版 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。4 イラスト集付き限定特装版 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。4 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。4 (ガガガ文庫)

ストーリー

自称《積極的ぼっちだからキングオブぼっちでOK》比企谷八幡の高校生活は”アラサーシングル寂しくて(曲名でありそう)”平塚先生に「奉仕部」に入部させられたことによって新たな局面を迎えているような気もしたが、夏休みにもなると全力で海へ山へ……行くはずもなく、完全なる引きこもり(完全体ヒッキー)となって浪費されていた。いや、本人曰くこれが正しい夏休みの過ごし方であるので、ぼっちライフを積極的に生きる彼に後悔は無いのだった。……うん、多分無いと思う。
客観的に見て、対人スキルが無い訳でもないと思われる八幡の場合、ぼっちはぼっちでも積極的ぼっちとも言えるある種の主体性のあるぼっちであり、排斥されているからこその結果としてのぼっちでは無くなっている(多分長年の悲しい経験が彼を一流のぼっちとして鍛え上げた)所がミソであり、無駄に鍛えられた観察眼と無駄に発揮される一人でも生きられますパワーが、よく分からない魅力となっている妙な主人公である。このまま行くと将来の死因は心筋梗塞とかで、いわゆる孤独死まっしぐらである。まさに一人社会問題の縮図野郎である。
とにもかくにも夏休みなので八幡的引きこもり夏休みを満喫していた訳だが、溺愛する妹の《千葉方面にはシスコンが多いから世界一可愛いに決まってんだろ》小町に騙されるような形でまたしても奉仕部の活動に付き合わされることになってしまった。そうなると当然その現場には例の《容赦というものを知らないので氷の女王》である雪ノ下雪乃や、なんか優しい少女なのに脳が残念なお陰で複数のキャラから哀れみの視線を送られてしまうという《それでいいのか》由比ヶ浜結衣というビッチ(と八幡はカテゴライズしている)がいるのだった。
だが彼女らと一緒に《正ヒロインの座は八幡的に揺るがない》戸塚彩加(男?)も現場にいたので、もうゴールしてもいいよね? という気持ちになったとかならなかったとか。他にもざ、ざい……ざい……座薬? みたいな名前の人間がいたような気もするが、この4巻で登場しないところを見ると、まさしく《見苦しいので視界に入れないで欲しい》という読者からの無言の圧力怖えー!! とか思わずにいられないのであり、ライトノベルビジネスの中にすら厳然たる欺瞞に充ち満ちた暗黙の了解があるのだなあと思う訳だったりする。
とにかく山でキャンプである。まあボランティアの一環として小学生のキャンプを手伝うだけではあったが、なにやら《リア充全開》のクラスメイトの葉山やら、《クイーン・ビー》(アメリカの学校内ヒエラルキーにはこう呼ばれる女生徒が実在する)も一緒にいたりしたので波乱含みの展開に。さらには引率する小学生の一段の中にちょっと問題を抱えた女の子の姿なども発見してしまったりして、奉仕部の活動はここでも展開されることになるのだった。
更新する気があるんだかないんだか分からないブログの主にこんなこと言われるのも不本意かも知れませんがね、もうちょっと刊行スピード上がるとイイですね。という4巻です。……あ? 3巻の感想がねえって? 3巻はバカ以外読めない感想になってるから、読めなくて正解なんだよ! ヨカッタネ!?

という感じですが

八幡ってなんかこーーー、作者の過去を想像せずにはいられないキャラクターですよね……。
なんというか、異常なまでに冴え渡る、学校という特殊な集団に対しての観察眼と思考の冴えが、「ああ、実際のその年齢の時に、そんなことばっかり考えてる時間が沢山あったんだね……」と読者に思わせるじゃないですか。いや、私も人の事言えないから別にだからどうしたって訳でもないんですけどね。
……そんでまあまたこんな理屈っぽいラノベ仕入れた中途半端なロンリー思想とか脳内に植え付けちゃったりして、より一層ぼっちを悪化させるリアル十代中高生の行く末を案じちゃったりする訳ですが、まあ実際はこんな本読んだとか読まないとかでキミの人生は大きく変わったりしないので心配はしてない。うん、なるようにしかならんよ!
そんな風に思えるのも当方が立派なオッサンだからですけどね。実際の十代の少年少女からすれば切実な問題以外の何物でもないので軽く見ようとかは思わないんですけど、ぼっちはぼっちなりにぼっちの楽園を見つけてさまようことなるだけで、よくよくヒアリングをしてみるとリア充の人たちとそう変わらないというか。いや変わるんだけど変わらないというか。なんなんですかね。
ああそう、作中で八幡もちょっと言っていたような気もするけど、いわゆる十代学生生活前半戦の人間関係と、十代後半以降学生から社会人という辺りで、対人関係能力として要求される部分がかなり大きく変わることになるんですよね。利害関係もあるけど強いて言えば仲がよいとか悪いとかを優先して繋がっていられる世界と、利害関係の繋がりの方が好き嫌いよりも大きくなる世界とで二分されているというか……うん、まあ、学生のうちに対人関係に絶望するのは早いってことですね。
……え? 社会人になった辺りで自分の対人関係能力の無さに「絶望した!」場合はどうするのかって? ………………そんな子はまさしくこのラノベとか読んで自分を慰めると、イイんじゃないかな……!? そう、私のようにな! ハハハハハハハ! は? このラノベ、そういう意味では大人向けの作品なのかッ!?

泥沼

のような後悔とも失望ともとれない一人語りはこのくらいにして、話の中身ですけどね……。
今回も面白いですよ。今まで読んできて好きな人なら全く何の問題も感じないほどの出来です。良く作り込まれたキャラクターたちに加えて、読んでて興味深い社会に対する考察なども交えて一冊まとめ上げてます。やはりこれは残念ながら八幡(あるいは過去の作者か?)の魅力によるところが大きいですよね。作中のほとんど全てが八幡の一人称語りで進められる関係上、彼がつまらないと作品が自動的につまらなくなる訳です。でもそれは今回も無いと断言できそうです。
シリアスなのかコメディなのかよく分からない中庸的なキャラクターやイベントの配置の仕方も見事です。トラブルの種を自分たちの学校生活の中から持ってこないで引率した小学生の方から持ってくるとか、いや上手いですよね。対人的な悩みという意味では高学年の小学生と高校生とかって基本的に変わらないですもんね。既に経験しているか対処方法を知っているか位の違いしかない訳ですから。
そんな状況を「ヒッキー&氷の女&おバカで良い子&ヒロイン&リア充男&リア充女&その他」とかのそれぞれの視点から解決策を模索させて、仕舞いにはパイルドライバー的な方法で解決に持っていく訳ですから、面白くない訳がないとでも言いますかね。
うーん、それに登場人物の全員が嫌いになれないしなあ。リア充の葉山とかは秘孔でも突いて女共の目の前でウンコとか漏らさせてやりたいとか思ってもおかしくないキャラなんですけど、何気にキャラの背景を匂わせるような描写があったりするので憎みきれないんですよ。なんか雪乃とも過去に色々ありそうだし……まあ痴情のもつれとかじゃあなさそうですが。

そうそう

恋バナとしてはこの話、どうなんですかね?
八幡はダンゴムシのような奴ですが決して悪い奴ではない(駄目な奴ですが駄目じゃないという絶妙のさじ加減のキャラですね)ので、一部のキャラに好かれたりする理由も分からないではないですよね。ぶっちゃければ由比ヶ浜とかですが。雪乃は全く分かりませんが、今後どうなるのかは興味深いですね。八幡を好きになるとかは無さそうですけど、何気に気を許しているのだけは間違いないところがまた小憎らしくも可愛いところです。
まあそうは言っても八幡の大本命である彩加が本気出すまでのつなぎかも知れませんがネ! いやいや文章だけ(あとイラストもか)の情報というのはオソロオドロオドロシイものでして、私ちょっとっつーか結構っつーか、彩加にトキメキますもの! 男性ホルモン全開のこのワタクシがですよ!?
……そういえば比較的最近別のラノベで主人公に「あにき」と慕ってきていた後輩の少年に「ついているはずのものがついてなかった」なんという展開がありましたしね。それ少年じゃないじゃんという事になる訳ですが、そういう事がガガガ文庫でも起こらないとも言えませんから――まあないだろうけど――あったらいいな――あったらどうしようかな――なんて考えたりするのは私だけじゃあないはずだ。
日々の妄想の中で、どうやったら由比ヶ浜を押さえつつ、メインルートに彩加を選べないかと模索する人生に充実感を覚えたりするようになると、仕事が手につかずに大変な事になったりするので、現実逃避は用法用量を守って正しくお使い下さい。

総合

いや面白いでしょ。★5つでも問題なしでしょ。
ラストの方では新たなボス(?)っぽい連中も出てきたり出てこなかったりで、次の展開も目が離せません。そうは言っても別にそれ程大したことが起こる訳ではないんでしょうけど(あくまでラノベ的にはですが)、まあ期待させるには十分な感じです。あと誰か先生を嫁にもらってやってくれ。っていうか何で男がいないのか理解に苦しむな……。
浮かれているキャラがいそうな感じですが、その実「てへぺろっ♥」とか言う即斬首の刑に処したくなる致命的なキャラは出てこないという、何気に心に優しいこのシリーズが一体どこまで行けるポテンシャルを秘めているのかは分かりませんが、生々暖かく八幡の行く末を追いかけていきたいような気がします。
そうそう、なんか八幡の理屈を読んでいると八幡がハードボイルドな格好いい奴に見えてくるから不思議ですよね……明らかに孔明の罠なんですけど。あれはダンゴムシ。みんな!ダマされてあんな感じになりたいとか思ったらいかんですよ!
イラストは変わらずのぽんかん⑧氏です。私この人の絵好きですね。背景とかをきっちり書き込んでいたりするタイプじゃないですが、イラスト本体の手抜きじみたユルユル感が好きなんでしょうかね。よく分かりませんけどガガガ文庫の絵師は全体的にハズレが少ないような気がしてます。